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《神話-8》伝令神ヘルメス

こんにちは。
Ayapです。
なんどかサブキャラとして登場していますが、伝令神ヘルメスについて取り上げます。

伝令神ヘルメス

ヘルメスはゼウスとマイヤという女神の間に生まれました。生まれてすぐ悪事を働きます。異母兄のアポロンの牛を盗んたのです。アポロンはヘルメスを捕らえ、ゼウスに裁くように要請しますが、まだ幼いからと断られます。そのため2人の仲は険悪になりますが、ヘルメスはアポロンのご機嫌をとるために竪琴を贈りました。アポロンはこの竪琴を気に入り、自分の牛たちの世話をヘルメスに任せることにしました。この二人は無二の友人となりました。
ヘルメスは成長すると、ゼウスたちの命令を世界各地に届ける伝令に任命されます。ゼウスから与えられた翼のついたヘルメットとサンダルで、各地を飛び回ることとなります。
これらのエピソードから、ヘルメスは旅の神、商業の神、泥棒の神とされています。

ボッティチェリ『プリマヴェーラ』の一部


しかし、ギリシア神話のエピソードでは、ゼウスの浮気の後始末などに奔走する話ばかりなので、我々サラリーマンに一番近い神といえるかもしれません笑。

アルゴス

第1話の『ゼウスの愛人たち』に取り上げたイオーですが、書き忘れたエピソードがありました汗(第1話はこちらをご覧ください)

へーラーによって牛に変えられてしまったイオー。しかもへーラーはイオーが逃げられないように、百の目を持つ巨人・アルゴスを見張りにつけます。
父ゼウスからイオーを助けるように命じられたヘルメスは牧童のふりをしてアルゴスに近づき、籠絡します。アルゴスと仲良くなったヘルメスは音楽をきいてほしいと笛を吹き始めました。この曲は催眠の効果があり、アルゴスは眠ってしまいます。眠ったのを確認したヘルメスはアルゴスを剣で殺してしまいました。

ルーベンス『ヘルメスとアルゴス』
百の目を持つ巨人はビジュアル的によくなかったのか描かれない作品が多い。

結局へーラーに見つかってしまい、イオー解放は失敗してしまうのですが、ヘルメスはこのエピソードから『アルゲイポンテース(アルゴス殺し)』と言われるようになります。

テューポーン

さて、ゼウスたちの支配に怒っている女神がいました。彼女は太古からの大地の女神ガイアで、ゼウスたちの祖母にあたります。クロノスとゼウスの戦いではゼウスを支援していましたが、時間が経つにつれ、ゼウスの横暴に対する不満が溜まっていきます。ガイアは同じく太古からの奈落の神タルタロスと交わり、テューポーンを生み出します。このテューポーンは星に届くほどの巨体で、炎を吐きながら叫ぶ怪物でした。
テューポーンはオリュンポス山に突進、神々は応戦しますが敵わず、エジプトに逃亡します。しかし、ゼウスが捕まってしまい、脚の腱を切られ、幽閉されてしまいました。
ヘルメスは息子パーンを連れて、ゼウス救出に向かいます。ヘルメスは門番を騙して腱を盗み出し、ゼウスを救出しました。
救出されたゼウスは力を取り戻し、眠っていたテューポーンの上にエトナ山を落とし、押し潰しました。エトナ山からときどき上がる噴煙は、テューポーンの唸り声だと言われています。

ピレーモンとバウキス

最後にほっこりエピソードを取り上げようと思います。
ゼウスとヘルメスは人間に扮して、プリュギア(現在のトルコ付近)を旅していました。やがて日が暮れ、一晩泊めてくれる家を探します。しかし、どこも見ず知らずの彼らを泊めてくれません。
町外れのあばら家に住むピレーモンとバウキスという老夫婦がやっと泊めてくれてました。二人は貧しいながらも精一杯のおもてなしをします。

ルーベンス『ピレーモンとバウキスの家のゼウスとヘルメス』


やがて夫婦は客人がただものではないと気が付きます。客人に出したワインが全く減らないのです。二人は神であると確信し、ペットとして可愛がっていたダチョウを捧げようとします。
ゼウスは二人を止めて、
『私たちは神である。この地の無愛想な住民どもは、すぐさまその報いをうけねばならない。されどそなたたちは、罰を受けずともよい。私たちに従い、丘の上に上れ』
と命じ、丘の上に連れて行きます。振り返ると街は水没しており、二人のあばら家は神殿に変わっていました。
驚く二人に、ゼウスとヘルメスは『のぞみはなにか』と問います。二人は相談して、
『ここで神官としてお仕えします。いつも一緒に生きてきたので、夫婦揃って息をひきとらせてください。どちらかが先立って悲しまないようにしてください』
と願い出ました。ゼウスとヘルメスは二人の願いを聞き届け、満足して立ち去りました。
何年か後、老夫婦は神殿の入り口で語らっていました。すると、お互いの体から木の芽が吹き出していることに気がつきます。二人は最期の時が来たと悟り、口が聞けなくなるまで感謝と別れの言葉を交わしました。そしてピレーモンは菩提樹、バウキスはオークの大樹となり、いまでも神殿を見守っています。

アーサー・ラッカム『ピレーモンとバウキス』

『伝令神ヘルメス』、これで終わりです。最初とりあげるエピソードないのではないかと焦りましたが、準主役で活躍しているエピソードが結構ありました。ゼウスの浮気の後始末とか本当に苦労が絶えなそう笑
次回は《無駄話》を更新する予定です!

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