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《聖書-12》ユーディトとスザンナ
こんにちは。
今日は前回までの投稿で取り上げられなかったユーディトとスザンヌについてとりあげます。
ユーディト
ユーディトは聖書外典に登場する人物で、時代がはっきりしません。記述からイスラエル人がアッシリアと戦っていたころと推測されます。
ユーディトは裕福な未亡人で、その上美貌だったので、人々の敬愛を受けていました。
アッシリアとの戦いで、イスラエル軍は苦戦していました。その上、司令官ホルフェルネスが何万もの大軍を率いてくるという情報が入ってきます。大敗が予想され、さらにイスラエル軍の士気はさがりそうでした。ユーディトはこの様子を見て、大胆な行動に出ます。
ユーディトは美々しく着飾り、侍女とともにホルフェルネスの陣に下ります。『自分は投降したい。なんならエルサレムに道案内する』というのです。この投降にホルフェルネスは喜びました。
ユーディトが投降してから何日か経った後、宴が開かれます。まだエルサレムは陥落しついませんが、ユーディトの投降によってもう勝利は収めたようなものです。ホリフェルネスは泥酔し、ユーディトを自分の天幕に引き込んで眠ってしまいました。
今だ!とばかりにユーディトは侍女と協力して、ホルフェルネスの首を落としました。
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『ホルフェルネスの首を切るユーディト』
ユーディトの美貌を引き立てるために、侍女は老婆に描かれることが多いが、この作品では若く、同志のような関係に見える。
ジェンティスキはバロック期の女流画家。自身も師から性的な関係を持たされ訴えたが、拷問を受けた。結局父の弟子と結婚、結婚後も画家として活躍した。
ホルフェルネスの首を持って、ユーディトと侍女は逃亡。イスラエル側にたどり着くと、兵士を鼓舞する演説を行いました。イスラエル軍は活気ずき、司令官を失ったアッシリア軍は大混乱に陥ります。こうしてイスラエル軍は大勝利を収めたのでした。
ユーディトは『救国の女傑』となったわけですが、時代がくだるにつれ、色香で男を破滅させる『ファム・ファタール』として描かれるようになります。その最たる例が、クリムトの『ユーディトⅠ』でしょう。
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『ホルフェルネスの首を持つユーディト』
自身がいであげて捨てられた娼婦をユーディトのモデルに、ホルフェルネスの首は自画像を描いている。
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『ユーディトⅠ』
クリムトはユーディトを2作品描いている。恍惚とした表情で描くことで、『ファム・ファタール』のイメージを確立した。
洗礼者ヨハネを斬首刑に処したサロメと同じく、現在では『ファム・ファタール』の代表例とされています。
スザンナ
もう一人、旧約聖書に登場する女性を取り上げます。
バビロン捕囚のころ、ダニエルという優れた預言者がいました。このエピソードは彼の活躍のひとつです。
スザンナという美貌の人妻がいました。彼女が人払いをして水浴をしていたところを2人の長老たちが覗き見、欲情します。スザンナが水浴から上がろうとすると、長老たちは『自分たちと関係をしなければ、青年と不倫していたと告発するぞ』と脅迫し、スザンナを乱暴しようとします。スザンナはきっぱりと拒否し、頭にきた長老たちはスザンナを冤罪の姦通で告発します。
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姦通は死刑に相当します。冤罪によって絶体絶命の危機に陥ったスザンナでしたが、ダニエルによって救われます。
ダニエルは長老たちを別々に呼び出し、それぞれの証言の矛盾をついたのです。長老たちはシドロモドロになり、ついには嘘であったことを認めました。スザンナは晴れて無罪放免となり、長老たちは逆に死罪となりました。
スザンナの貞淑さとダニエルの機転があらわされたエピソードですが、次第に『視姦』という男性の欲望を煽るような作品が増えていきます。
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『ユーディトとスザンナ』、以上です。
ユーディトとサロメどちらも恐ろしいですが、サロメは首切り役人に処刑を命じただけ、一方のユーディトは侍女と女2人でホルフェルネスの首を落としたので、怖さではユーディトのほうが勝る気がします(・・;)
スザンナはバトシェバのエピソードを参考にしていると考えられます。きっと貞淑の大切さのために書かれたのでしょうが、結局視姦の格好の標的となってしまってますね。
旧約聖書のエピソードは今回で最後となります。
1.アダムの誕生
2.ノアの方舟
3.天使とは
4.バベルの塔
5.アブラハム
6.イスラエルの誕生
7.ヨセフ
8.モーセの出エジプト
9.サムソンとデリラ、ルツ
10.ダヴィデ
11.ソロモン
12.ユーディトとスザンナ
と長くに渡り、お付き合いいただきありがとうございます。
次回からは新約聖書になります。新約聖書は有名なエピソードが多いのでまとめるのも大変ですが、頑張ります。
今までの投稿では出先で書くことが多く、聖書の言葉をとりげることができませんでした。この反省を活かしていきたいと思います。