物置と祖母
小3ぐらいだったと思う。
祖母と夕飯前に物置に何かを取りに行った。
夕方、雲空の雨の日だった。
案の定、ギシギシ開く扉の物置は、独特の埃くさいこもった匂いがしていて
嫌いだった。
だが、その日は違っていた。
引っかかる引き戸をギギギとあけた
瞬間から、なんとも言えない
フルティーな甘い匂いがただよってきた
なんだこのいい匂い?
とても、不思議でびっくりした。
すると祖母が、あーいい匂い
おばあちゃんこの匂い好きやわぁ。
あーちゃん、キュウイ食べよう。と
いって、扉近くに置いてある、箱買いしているキュウイを段ボールからとりだした。
これはなんだ?と生まれて初めてのみるキュウイの塊をみた。
少し産毛がはえてる、へんな色した丸いやつ。
祖母は内緒やでって 笑
いいながら
ひとつ手にとり、二つに割って、私に差し出した。
食べごろのウレゴロ
みんなに内緒のツマミグイ。
美味しいねぇっていった
祖母の悪戯っ子のような顔が忘れられない
もう一個たべようーと、結局2人で
一個ずつ。
食べ終わったら、何事もなかったように、
台所へもどり、夕飯までお行儀よく
静かに過ごした、あの日
私がキュウイを好きな理由はこの思いでだったんだよ。
おばあちゃん
天国で元気にしてますか?
キュウイを見るたびに祖母を思い出す。
あまずっぱくて、すこしぬるかったキュウイ
あんなに美味しいキュウイには
なかなかお目にかかれない。
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