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映画「ヤクザと家族 The Family」ヤクザというモチーフを通した社会への問い

どうしてこの映画を観ようと思ったのか

そもそも、ヤクザ映画を観に劇場に足を運ぶことは初めてでした。お仕事で音楽の新しい可能性を探っている音楽家をウォッチする必要があり、そのひとつであるmillennium paradeが主題歌を担当していたことがきっかけでこの映画の存在を知りました。映画を観たあとに、これはヤクザ映画だけど、これまでのヤクザ映画とはちがうと感じられると思います。監督が伝えたいメッセージが、ヤクザ映画というアウトプットを通して伝わってきました。

▼映画「ヤクザと家族 The Family」

社会システムって?ルールって?

ネタバレになってしまうので、映画の詳細は言えないけれど、義理とは?人情とは?が主人公を中心に描かれながらも、社会システムやルールのあり方や矛盾について考えさせられるストーリーでした。わたしは、学生時代に社会学を専攻していたのですが、社会学には「その人がいま置かれている状況をその人個人のせいにしない」という考え方があります。それは、世の中で起こっている問題の傾向を捉え、ひとつの現象として分析し、社会構造の中でこぼれおちてしまった人を、システムを変えることで救い出そうとするものです。はじめから、そういう視点で社会が回っていれば、主人公が出生したところから、全く違う未来があったかもしれないのかな、などと考えさせられました。また、ルールが大きく変わるとき、その渦中にいる人たちには大きな痛みが伴い、大きな矛盾も押しつけてしまうことになるのだとも感じました。

主題歌「FAMILIA」by millennium parade

主題歌「FAMILIA」(作詞・作曲:常田大希)は、鎮魂歌でありながら、ある人を慰めるように子守歌のようにはじまり、賛美歌のように終わるとても美しい曲です。エンドロールの最後までがこの映像作品の幕引きになっています。


クリエイターと一緒にお仕事をさせていただくことが多いため、この映像作品を完成させることは、どれだけ大変なことだっただろうかと想像してしまいました。綾野さんのお芝居はもちろんのこと、関わられたすべての方が、藤井道人監督のもとこの作品を全身全霊で作られたことが伝わってきました。特に、わたしは藤井監督は同世代ということもあり、こんなすばらしい作品を同じ年の人が作っているのかと。その才能と努力で映像作品を通して社会への問いを続けられている姿に感嘆。すばらしい物語をありがとうございました。

▼『ヤクザと家族 The Family』に詰め込んだ信念と美意識。そして、A24挑戦の夢――藤井道人監督が語る、過去・現在・未来【Director's Interview Vol.104】

執筆者: 谷 綾花/Ayaka Tani (ライター)
PR会社などで多岐にわたるブランドマネジメント業務を経験。会社員として企業のブランドマネジメントに携わりながら、ライター・編集としても活動中。書くことを通して、書籍・映像・音楽など形に残る作品製作に携われたらと思いnoteをはじめました。[Instagram]atnf428

※公開後、一部再編集した内容が含まれています

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