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07:Noblesse Oblige
悲しみとともに…
この辺のエピソード、私はいまだに平静でもって正視できないのです…というのも、この回で連載していたレーベルが閉鎖することが決まり、「あと〇回で閉めて、原稿料払えないからページは1話24ページまで」という、そ、それはねぇだろ~~~!というような打ち切り通達が突如突き付けられたんですよね…。
そんなわけでストーリーもかなり駆け足で心苦しい限りなんですが、作画的にはスウィンギン☆な60年代とは異なる、戦前の英国が出るよう頑張ってたりと、これまた思い入れのある話です。
富めるものは奉仕せよ
で、タイトルの「Noblesse Oblige(ノブレス・オブリュージュ)」というのはフランス語なんですが、有名なので聞いたことのある方も多いかもしれないですね。
直訳すると「高貴さは(義務を)強制する」というらしいんですが、こちら戦前のイギリスの上流階級の人たちのスローガン的なものだったそうなのです。
イギリスの上流階級っていうのは、伝統的には「働かないで稼ぐ」っていうのがイケてるスタイルでした。
要は地主で、先祖代々の土地代で稼いで文化に触れつつ悠々自適生活…というのが彼らの生活様式なのです。
1870年代半ばの全国土地調査でも、全土地所有者のたった0.4%であるジェントリ(支配階級)が、イングランドとウェールズ全土の53.7%を所有していたことが明らかになってるそうです。か、偏り~~~!!
彼らにとって、手を動かす労働は忌むべきものであり、商人などは蔑視されたりもしたのです。
のちに解釈が広がり、シティの銀行員など「金利で稼ぐ」人たちもジェントルマンと呼ばれるようになりますが、基本は「自分で稼がない」ということが紳士・淑女の条件だったのです。
で、稼ぐ必要のないリッチな人たちが何をしているかというと、慈善活動なわけです。
イギリス議会の一つであった貴族院も、その名の通り貴族が世襲で政治家になるという民主主義なにそれおいしいの?的独特の文化なわけですが、要は稼ぐ必要ない人たちは、お金のためでなく世のため人のために働こうね!というのが英国上流階級の理想だったのです。
第一次世界大戦中はこのスローガンがしきりに持ち出されて、多くの上流階級の若者が戦地で命を落としたという逸話がありますが、第二次世界大戦はまた世相が異なり、当時のようにはいかなかったそうです。
そして大戦後は、政治家のスキャンダルなどの影響もあって、王室や貴族に対する世間の信頼が揺らいでいきます。
苦しい財政の中、政府が地代を大幅に上げたことなどで、貴族の称号を持っていても家計は火の車で、マナーハウス(屋敷)を手放す人も多数いたのだそうです。
このあたりの話の、時代の変化についていけなくなったクリス父の話を描きたかったんだよな~。
力をつけて、またチャレンジしてみたいテーマです。
余談ですが、クリスが言ってた「グランドツアー」って言うのは、19世紀の貴族のお坊ちゃんたちが「見聞を広めるため」っていう名目で欧州留学してブイブイするブームが起きたやつです。(いや、ちゃんと見聞を広めていた人もいるだろうけど…)
先日、ナショナルギャラリー展を見に行ってきたんですが、そこにも当時のお坊ちゃんたちが留学先で買いあさった美術品なんかが展示されていました。
クリスは、現状からの逃げにこれを利用してます。
さらに余談の余談ですが、本文に出てくる「a skeleton in the closet」というのは直訳すると「クローゼットの中の骸骨」って意味なんですが、これで「家庭内の秘密、一家の恥」という意味になります。
絵的に想像できて、面白い英語だよね~。
最近のおたより
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