「新年挨拶合戦」に挑む内向的人間とその葛藤。
年明け初出勤、突如始まる「新年挨拶合戦」
9連休のちの年明け出勤第一日目。仕事に行っても良い感じな自分でいられるだろうなぁ、とグッドバイブスでいたら突然目の前に降ってきたのは人間関係の波…。
挨拶が苦手な人間には厳しい文化で…
9連休の後の職場(現実)に始まるのは他部署の方々への年始挨拶合戦。普通の企業に勤めている人なら当たり前のことなのだろうが、40才にもなって「ちゃんとした職場」に勤めだした私にとっては、職場のあらゆる人たちに「ことよろ」を言わなきゃいけないなんて、初めての文化だった。(今までは同じ職場の人3,4人に適当に挨拶すればよかっただけだった。他部署にまで挨拶しにいかない。)
当日は「長期休み明けの出勤一日目なんて、ただ行けば御の字なくらいのゆるさで行けばオッケーだな。」
と本当に軽く思って家を出たので、あちこちで年始挨拶合戦が行われている職場の雰囲気を目の前にして、私は急に重い気持ちになった。そもそもこの職場に就いて1年目なこともあり、要領がわからない。
「え、やっぱりこういうのやるの?」と出勤早々どぎまぎする私。
まずタイミング。私は他の人達より出勤時間が遅いので、私の出勤のタイミングだと相手のド勤務真っ最中に割入ってしなければならない。皆が一斉に出勤する時間なら、お互い挨拶を言い合っていて簡単にタイミングが計り易すそうなのだが。皆が休憩を取るのを見計らうしかない。
そして人見知りな私の性格が他人を退きがちだ。職場がオープンな性格の人達ばかりで苦手なので、普段から仕事以外の話は話しかけていないのだが、その話慣れていない私が新年だからとわざわざ声をかけるのがすごく嫌だった。
職場の人が嫌な性格とか私がその方々を嫌いな訳では決してないが、「別によろしくって言わなくてもよくね?」と、遠い関係の人の前に出て挨拶しにいくのが必要なことに思えないのだ。私にとっての礼儀とはいわんや…な世界だ。(すみません、何様だって感じですが。)
呂律が回らない言葉の壁
あと私はやや吃音気味なので、「今年もよろしくお願いします。」という言葉がどうしても呂律が回らない時がある。以前言ったときは「ころしもやうろろし…お願いしやす!」と謎の平安調と江戸弁(?)で言ってしまう時もあった。大した意味もないのに、「今年もよろしくお願いします」という言葉は上手く発せられない率が高く、吃音に悩まされる身としてはハードルは高いのだ。(昨年の年末の挨拶でも苦戦した。)
挨拶のタイミングと相手別の難易度は…
職場の言いづらい人に声をかけたはいいが、タイミングが難しい。そして言った時に緊張して呂律が回らない、ちゃんと言えなくて恥ずかしい、せっかく行動したのに失敗だ、と思ってしまう悪循環。ただの当たり前の挨拶でさえ、私の心中はは「しっかり言いたいのに上手くいえない難しさと恥ずかしさ」で葛藤の渦が巻き起こる。
ま、それでもなんとか言えるタイミングの人には言う。
「一番良く話す人達」とは、私が出勤したら向こうから挨拶しに来てくれた。さすがに普段から話しているので私もすんなりと言えた。
「あまり話さないけれど、自分より若い人」にはそこまで緊張せず。向こうから言ってくれることもあり、「礼儀正しくて偉いな。」と自分の20代のの時と比べて感心したり。
「普段それほど話さないけれど、私と同じ雇用形態の人達」もわざわざ頭を下げて丁寧に挨拶されたので、「ああ、社会人てこういう礼儀必要だよな。」と仕草を学ぶ。(私がどれだけ丁寧にやろうとしていないか丸分かり文章。)挨拶する相手のタイミング、自分の呂律チェックまで気にしていると、私は体の動きまで気が回らないのだ。
最大の難関、上司への挨拶は…
そして「職場で一番上の上司」に挨拶することに。それまで順調だったものの、自分から言いに言って緊張したのか、一番出て欲しくない「あの謎平安江戸調」で挨拶してしまった。自分がすごく嫌になったが、とりあえずは自分から言えたので良しと切り替えた。
後の人はなんとなく通りざまに言ったり、言われたり。こっちがなかなかタイミングが計れないでいると、向こうから「挨拶していなかったと思うので…。」と午後になって言いに来てくれることもあった。(めちゃ有難い。)
挨拶しそびれた人たちへの後悔もあり…
最後1,2名に言えずやきもきしたが、時間が経ってしまったので私も挨拶をしないで別の件をうっかり話しだしたりしてしまう。その1,2名は普段からあまり話さない人だったので「改めて挨拶を…」なんて話も切り出しもできず、私の新年挨拶合戦は幕を閉じた。
内向的人見知り人間には気が疲れる大変な一日だった。通常業務しながらだったので。
友人に救われた一言
この苦労を後日友人に話したら、「そこまで大変な事か?」と全く共感を呼べなかったが、友人の「挨拶できない人がいても、向こうはしょうがないって気にしてないよ。」の言葉に救われた。そう、私が勝手に「新年挨拶合戦」として挨拶を戦(いくさ)化してしまったが、自分のいる職場では「しなかったら無礼者!」と罵られて後ろから切られるほどの厳しさは無いのだった。しかしされど挨拶。「絶対とは言わないが、人間社会では当たり前なこと。」の「礼儀」としては当たり前なのだが、その当たり前にここまで苦悩してやっている大人がいることだけはここに残しておきたい。
まるで言葉を覚えたての、体はギクシャクしまくる原始人が、なんとか人間社会に出ましたよ記念に…。
葛藤のちの発見は…
その日はちゃんと言葉が言えるようにどんな人にも気合を入れて言っていたら、「今年も」の「こ」を強めに言うと、なんとなく「よろしく」の呂律が回りやすいことは発見できた。来年もこの職場にいるとしたら活用したい。英語圏だったら「ハッピーニューイヤー!」で済むのにな…なんて思いながら。