#2 おばあちゃん
【#2 おばあちゃん】
中学1年の秋。早朝。
『‥コツン』
何かが私の部屋の窓に当たりました。
その音で目を覚ましましたが
特に部屋に変わった様子も無く
時計が4時半を示していたので
『後2時間は眠れる‥』
再び寝ようと体を横にした数分後
『‥‥‥コツン』
はっきりと聞こえました。
確かに、窓に何か当たる音が聞こえます。
私の部屋は通常の一軒家で考えると
3階部分にありました。
音が聞こえる窓は外に出れるベランダがあり
道路にも面していました。
『‥こんな時間に何だろう?』
恐る恐るカーテンを開けてみましたが
特に何もありません。
『空耳かな‥』
でも、はっきりと聞こえた音が
私の耳に残っていました。
少し気味の悪さを感じ
急いでカーテンを閉めてベッドに潜り込むと
『‥コンッ』
少し大きめの物がぶつかるか
ノックを一回するかのような音が聞こえ
あまりの怖さに布団を頭から被り
羊を数え始めました。
『羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹、羊が‥』
『‥ピピピ、ピピピ、ピピピ』
はっ!と気がつくと
目覚まし時計が鳴っていました。
時計はいつも起きる時間を示しています。
『いつの間にか寝ちゃったんだ‥』
空も少し明るくなっていました。
体を起こし例の窓を開けると
少し肌寒い風を感じました。その時‥
『プルルルル‥プルルルル‥』
電話が鳴っています。
『はい、もしもし‥』
お母さんの声が聞こえました。
『支度しよう』
階段を降りてリビングに向かうと‥
母が小さな声で泣いていました。
父は今までに見たことが無い顔で
電話と向かい合っています。
『どうしたの?』
自然と声が震えました。
『おばあちゃんが危篤なんだ』
『きとく?』
『‥死んじゃうかもしれないってことだよ』
父の声がいつもより優しく聞こえました。
私は急いで部屋に戻り例の窓を開けました。
『もしかして、会いに来てくれたの?』
あの音はおばあちゃんだと
直感的に感じました。
昔から
おばあちゃんが泊まりに来ると
私の部屋に布団を敷いて一緒に寝ました。
電気を消してからも
『おばあちゃん、起きてる?』
『‥起きてるよ。眠れないの?』
おばあちゃんの優しい声が
今も私の中に残っています。
危篤になる前日
私だけ部活の試合でお見舞いに行けず
最後に会うことが出来ませんでした。
だからこそ
あの音はおばあちゃんだったのだと
直感しました。
大好きなおばあちゃんが
会いに来てくれた。
私はそう思っています。
次の話(#3白いネコ)は
私しか見えないもので
喜んでくれた人の話です。
最後までお付き合い
ありがとうございました。
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