#5 私らしさ
【#5 私らしさ】
大学生の時。
私はレストランのホールで働いていました。
アルバイトです。
そして、アルバイトなのに全力でした。
時間内をきっちり働き
どうしたらまた来てくれるか。
どうしたらより美味しく感じられるか。
そんな事ばかりを考えていました。
自分がされた接客でいいなと思ったものは
すぐ真似をするくらい
あの頃は熱心に働いていました。
ある日。
スーツを着た男性が1人お店に来ました。
ランチの時間が終わる頃だったので
14時くらいでした。
席に通し、注文を伺うと
その男性はすぐにパソコンを開きました。
『‥大人ってすごいな‥』
まだ学生だった私は
なるべく仕事の邪魔をしないようにと思い
あまりその席には近づきませんでした。
料理と飲み物を提供し
遠くからその席を眺めていると
男性が急にソワソワし始めました。
『どうしたんだろう?』
と注意深く観察していると‥
パスタのソースが白いワイシャツに
飛んでしまったみたいでした。
男性は必死に拭いていました。
私は急いで
炭酸水とキッチンペーパーを男性の元に
持って行きました。
すると男性は不思議な顔をしましたが
『炭酸水の方が、汚れが浮くので落ちやすくなります。使ってください。』
小声でそう伝えると
男性は一瞬驚いた顔をしましたが
『ありがとう、助かるよ。』
恥ずかしそうに笑い受け取ってくれました。
それから数週間後。
お店に一本の電話がありました。
レストランの本社からでした。
その電話の内容は‥‥
レストランの株主の方があるレストランで気持ちのいい接客を受けたから、株を大幅に購入してくれた。
とのことでした。
そしてその接客が‥
私が持って行った炭酸水だったそうです。
つまり
白いワイシャツにソースを飛ばし
私が小声で炭酸水をもって行った男性が
本社の株主の方だったんです。
その後、本社の方からも店長からも
かなり褒められました。
そして、炭酸水とキッチンペーパーは
私が働いていたお店の
マニュアルに組み込まれました。
そしてそして
私は時給が20円上がりました。
アルバイトだから
そんなに頑張らなくても良いって
良く言われましたが
私らしく頑張れば
見ていてくれる人はいる。
今も私はその思いで毎日過ごしています。
次の話(#6悲しい背中)は
背中を見れば心境がわかると教えてくれた
女性の心理学教授の話です。
最後までお付き合い
ありがとうございました。
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