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描いた絵本を先生にダメ出しされた少女が大人になって絵本を出版した話


けっこう凹んだ先生のダメ出し


「冒険物の絵本はダメです。それ以外のお話を描いた人は合格!」

小学生一年生の頃、絵本を作る授業がありました。
そのとき、私が作った絵本を見て先生に言われた一言です。

私は当時飼っていたビーグル犬のチャンプを相棒に、自分が冒険する物語を描きました。
いかにも子供が作りそうで、憧れるような、ありきたりな内容の展開です。
それでも私としては自信満々で提出したので、わりとショックでした。太陽を主人公にした友達の絵本や、お花の世界の話を描いた友達を羨ましくも思ったくらい。
褒められるために描いたわけではなかったのに、せっかく作ったものが急にしぼんで見えるほど胸がザワザワしたのを、二十年以上経った今でも覚えています。

だけど、私は先生が思う以上に負けず嫌いでした。
先生に否定されても別にいいや、私は私の好きなものを作る!と、どんどん創作の世界にのめり込んでいきました。自宅でも続編の絵本を量産したりして。

6歳のときから、さほど画力は変わってませんが……笑
この文章量!
当時から絵より、書く方が好きだったかもしれません


友達が絵本の授業のことなんて忘れた頃になっても、私は家で趣味として絵本を作り続けました。凝り性なので。

その後、大学で芸術学部の文芸学科にまで入って、創作の勉強(絵本ではなく小説という形になっていたけれど)を本格的にはじめたのも、
もしかしたら原体験として幼い頃の絵本作りがあったのかもしれません。

絵本制作意欲、数十年越しの復活

絵の勉強なんてしてこなかった私が、久々に絵本を作ろうと思い立ったのがコロナがはじまった二年前。
外出もできず、毎日が先の見えない不安と恐怖で覆われている中、悶々と自分の内側を考える時間が増えたのがきっかけでした。

「1年間で絵本を出版する!!」

今までミステリー小説を書いていた私でしたが、決してただの息抜きのような軽い気持ちではありませんでした。たった1年間でも本気で向き合えばなにかを変えることができると信じ、この時間だけは小説のことも忘れ、ひたすら絵本に集中することにしたんです。

SNSを毎日更新し、絵本制作や絵の練習などを地道に続けていたところ、
「新しい出版社を立ち上げるので絵本作家を募集している」という情報が流れてきました。
見た瞬間、これだ!と飛びつき、連絡したのがラフコネクトという絵本の出版社です。
絵本作家募集なのに、そもそも絵本作家ではない、絵の大学にも、絵画教室にすら通った経験のない私が「絵本作りたいです!」と連絡したのは、わりと無謀だったかもしれません。
でも、なんとこの出版社から、ほんとうに絵本出版に向けて絵本を作ることになりました。(詳しくはまた)

あのとき、先生にダメだと言われた冒険絵本を

絵本を制作する段階になって、どんな絵本を作るべきかかなり迷いました。
まず、私には子供はいません。
兄弟もいないので姪っ子甥っ子もおらず、子供と遊んだ経験も少ない。

そこで、自分が小さかった頃のことを考えました。
自分は小さい頃、どんなことにワクワクした?
何が好きだった? 

それをひとつひとつ考えていくと……
夜のお出かけがたまらなく好きだったことを思い出したんです。
まだほんの小さい頃、夜中にふと思い立った両親が
「これからラーメン食べにいくか!」
と車に乗せてくれた、小さな日常が心に残っていました。

いつもなら寝ているはずの時間です。
自分が寝ている時間、外の世界も同じように眠っているものとばかり思っていました。
でもその日、車の窓にへばりついて街並みや車の通りを眺めていると、家の外にはまだいくつもの光が灯っていて、三日月が空のてっぺんにあって、自分の知らないところで夜の世界が動いていることを知りました。

「あの時のワクワクを、絵本にしたい」

そう思い、舞台は夜に決定。夜のお出かけをする物語にしようと考えます。

そして……私は今回の絵本を、
小学生の時先生からダメだと言われた冒険物にしました。
当てつけではありません(笑)

子供の頃、なにか特別なものを探す旅というのはとても神秘的なことのように思えました。
先生にいくらダメだと言われても(なんでダメなのかは教えてくれなかったけど)
やっぱり自分が心躍るのは、知らない世界を旅する話だったんです。

こうしてできた絵本が「くだものベッド」です。

眠れないふたりが、くだもののベッドを探すというストーリー。
いかにも子供が作りそうで、憧れるような、ありきたりな内容。
でも、私自身がワクワクしながら作った、ワクワクする絵本です。

夜のお出かけは星空の下で

しかし今はせっかく大人になったので
あの頃の自分とは違う面も入れてみたかった。
そこで私はこの絵本に、親も楽しめる仕掛けを入れてみました。

親の目線でも共感できるストーリーを

絵本に登場する二人組も、眠れない男の子とうさぎです。
よく見てもらうと、男の子は元気いっぱい、目をらんらんに輝かせていますが……

ランタン片手に、やる気満々な様子
あくびするうさぎ……

うさぎは眠そうにしている。手を引っ張られ、あくまで男の子に付き合っている雰囲気です(笑)
このうさぎは終始眠たそうですが、それでも一生懸命男の子に寄り添ってベッド探しをしている。
そんな姿って何かに似ていませんか?

……そう、育児を頑張るお父さんお母さんです。

眠たそうにくだものを眺めるうさぎと、テンション上がっている男の子


私の友達は今まさに出産ラッシュで、小さな子供のお父さんお母さんがとても多くって。みんなに悩みを聞いていくと、わりと高確率で
「寝ない」とか「眠い」とか「寝かしつけ大変」とか、そういう話がでてきました。

そんなわけで今回はこの絵本のうさぎさんの姿を、育児をがんばるお父さんお母さんに当てはめて描いてみたんです。
「あぁ、うさぎさんも大変そうだなぁ(笑」とこっそり共感しながら、寝る前に読み聞かせをしてあげてください。
親子みんなで楽しめる、そんな絵本を目指したので、喜んでもらえると嬉しいです。

(ちなみに、この子たちのLINEスタンプも作りました。
子供が寝たよ!とか、寝ないよ!などの親同士のやりとりにこっそりお使いください(笑)

結構使い勝手はいいと思ってます。眠れないあなたへ

https://store.line.me/stickershop/product/19642582

絵本は親子をつなぐ

小さい頃、絵本を読んでもらった記憶は私のなかに今も残っています。
絵本を通じて感じたことを共有する、お話しをする、物語の世界に入っていく……。今考えると、その時間は親からもらった宝物でした。
絵本はあくまで、親子を繋ぐツールにすぎません。読むだけで頭がよくなるとか好奇心が育つとか、そんな高度なものではなく、絵本は親子の話のきっかけとなり、ほんのり残る思い出になるものかなと思っています。

絵本「くだものベッド」には「これなんだろう?」「このくだものはどうかなぁ?」「こんなところに動物がいるよ!」
なんて、子供たちと考えたり、会話をする余白をたくさん用意しました。

慌ただしい一日の終わりに、親子揃ってあまいあまい夢を見られますように。
くだものベッドを手に取ってくれるみなさんに、感謝を込めて。

昨日発売されたばかりです!
多くのみなさまに届きますように……!



稲葉野々

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