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小説:雑食女子が走るP3「脱出41」


其処は原色の草木が無限に拡がる草原だった。
気が付くと、私はその中で走っていた。
全力で。
その先には、逞しい男の背中が見えた。
手を伸ばせば、届きそうで届かない。
それが誰かは分からない。
否、
名前を知らないだけ。
でも、知っている。
そうだ。
何度も目撃していた。
そして、何時も、この手が届かないことも…

待って…

何時も、そう叫ぶ。
でも、
ダメだ、未だ、先だ!
その答えが即座に返ってくる。

もう、走れないよ…

泣き言を混ぜる。
でも、
ダメだ、騙されないぞ!
男は、あんなに速く走っても、息一つ乱さない。


冷ややかな雫が頬に当たった。
雨?
違う。
汗。
男の汗だ。
隆々と盛り上がる背中の筋肉は、吹き出る汗で輝いている。
その一滴が背後の私に零れ出た…

頑張れ…
それは強いメッセージだ。
逃げ切る。
敵から逃げ切る。
その強い決意から生じる、信じられないほどのパワー。

分かった…
頑張る!
私はそう必死で、答えて、ピッチを上げる。
限界は超えている。
だが、未だ、終わりではない。
そう強く、自分に言い聞かせて…

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毎日小説(彩陽)
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