小説:雑食女子が走るP3「脱出47」
痛た、たた…
脚が攣った。
当然だ。
日頃滅多にしない全力疾走を行ったからだ。
身体のあちこちが悲鳴を上げている。
でも、心は爽やかだった。
そうだ。
風を呼んだ。
否、
風と共に走った。
その一体感、
たまらなかった。
快楽。
そうだ。
あの夢に近い。
*
あれを茜に話してから、数日後、茜は急に私の席にやってきた。
「夕、あれは夢精だ」
そういきなりそう切り出した。
わっ…
私は顔を真っ赤にさせた。
いきなり、そう来るか?
そう感じた。
否、
同感だ。
あんな夢を共有化しようとした方が恥知らず。
そう自覚した。
「裸の男が居ただろ?」
茜はそう強調した。
「居た、てか、前を走ってた」
私は息を吞み込んだ。
「だな、息遣いが耳にまで届いていた…」
茜も顔が紅い。
綺麗。
そう思ってしまった。
時たま、生じる、この気持ち。
でも、自分に嘘は付けない。
「あれって、軽いエクスタシー?」
私は度を越えた質問を返した。
「ん?」
「だって、気持ち良かったし」
「それ、私に聞く?」
茜はそう笑うと、すっと向こうへと立ち去って行った。
*
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いいたします。取材活動に使わせていただきます。