まぶたが恋しい
眼内コンタクト手術(ICL)を受けた。
まぶたが恋しい、は手術中の感想。
画像のように、レンズ越し顔の輪郭が大きく歪むほどには視力が弱い。
裸眼ではおそらく0.03ほど。
小学生低学年のころに眼鏡を作った記憶があるので後天的な視力低下でもあるが、両親とも目が悪いので遺伝的な要因もありそうだ。
高校生のころにコンタクトレンズを着用し始めた。
20年以上眼鏡とコンタクトレンズにより視力を矯正していた。
数年前に知人がレーシック手術を受けて、快適だという話をしていて、ふーんとあまり興味もなく聞いていたわたしが、
眼内コンタクトを決意したふたつのきっかけ
【多発する地震】
正月に起きた能登半島地震。
そう、地震は日時を選ばないのだ。
枕元に眼鏡を置いているが、砕け散ったらわたしは視力を失う。
いくら防災グッズを備えたとしても、普段は眼鏡やコンタクトレンズにより健常の視力のもと生活しているわたしは視力がなければ避難することはできない。
そのために他人の手を煩わせるのも避けたい。
【コンタクトのケアグッズの多さや行程が煩わしい】
じゃあ眼鏡にすればいい、とも言われたがそこは乙女心。厚いレンズにより目が縮尺されて見えるのが嫌なのだ。
大きくそのふたつの理由により、
眼内コンタクトの手術を受ける決意をした。
レーシックと眼内コンタクトの大きな違いは可逆性があるか否か。
眼内コンタクトは更なる視力の低下や異常があった場合は注入したレンズを取り出すことができる。
手術は両目を1日で済ますことができる。
見えにくい状態で帰宅することを考え、一駅ほどあるが行き慣れた商業ビルの中の眼科を選んだ。
適応検査で老眼になる
手術の前に適応検査を受ける。
その4日前からコンタクトレンズは使用不可とのこと。
わたしの目は少し乱視を含んでいて、この乱視を矯正するか目の機能による自力の補正にするか検討され、そのために目のピント調節の筋肉を解除して確認する必要があった。
これが少しやっかいだった。
筋肉解除は薬液を使うのだが、検査後も残留する。
つまり、いわゆる老眼だ。
iPhoneの画面がいつもの位置では見えない。
近いものがぼやけるのだ。近視のわたしには今までと違う、見えない感覚だった。
業務連絡などは返すにも一苦労。
信頼しているひとに読み上げてもらい、急を要するかどうかだけ確認した。
また、瞳孔も調整できないため常に開きっぱなしで眩しい。
帰り道、薄曇りにも関わらず道路の白線に目が潰れるかと思った。
サングラスは必須だった。
適応検査の結果は眼内コンタクトは問題なく受けられるとのこと。
乱視は自力の補正機能の範囲だった。
乱視矯正は+5万円ほどかかるのでないに越したことはない。
ちなみにかかった費用は63万円。
5万円がかすむ。
手術は適応検査の2週間後に設定された。
手術直前までコンタクトはしてもいいが、
注意事項として目の周りが2.3日は濡らせないので化粧はできない。
手術直前、コンタクトを外して捨てましょうねと指示があり、目から外してそのままゴミ箱へ捨てた。
煩わしいものであったが、最後の動作かと思うと、感慨深かった。
以下手術感想は当日に走り書きをしたので、とても鮮明な記憶であり記録。
眼内コンタクト手術感想
【痛みの種類】
・目に異物が入る
・光が実態を伴い目に刺さる
・眼球を指の腹で触られ押し込まれている
・海の中でただひたすらに目を開け続けることを強要されているかのように沁みる
・しかし無抵抗のほかなし
【対処方法】
・光は映像として処理する(よく観察して色付けをする、白のまわりに赤い縁、のように)
・呼吸を止めない、笑気麻酔の効きが悪くなるから
【キャッチコピー】
まぶたが恋しい
光の暴力
【術後の感覚】
・泣き腫らしたあとの鼻の付け根の熱さと重み
・水槽の中から外の世界を見ているようなぼやけ方
・ぼやけが和らぐと普段コンタクトをしているときの見え方
・玉ねぎ切るのちょう痛い
(仕込みがあったのでやらざるを得なかった)
痛くない、という体験レポートも見たが、わたしは予想以上に痛かった。
痛みに弱い人は途中で止めるのでは…?止めたところで困るけど。
また、予想以上に見えているのだ。
目の間を通り過ぎる鋏や、向かってくるメスが。
映画好きの友だちに自慢をした。
映画のシーンであるでしょ?わたしはそれを見たんだよ!いいでしょう、と。
当日は目に違和感と痛みがあるので、視力は向上しているはずだがあまり目を開けていたくなく、実感はなかった。
歯が痛いのと同じ理由で、身体は動くけどなにもしたくない気持ちになるので仕事は入れないほうがいいと思う。
翌朝、起きた瞬間から世界が見えている
この感覚を久しく忘れていた、そう、そうだった。感動した。
手術翌日も検査に行く。
経過は良好で、視力検査の結果は1.5。
0.03から1.5。
50倍見えているだと…?
たしかに部屋の埃とかがよく見えるようになって掃除しなきゃなと思う瞬間が多くなった。
いまこの記事を書いているのは術後11日目。
とくに問題もなく快適に過ごしている。
ひとつだけあるとすれば。
世界が煌めいて見える
心理的な意味ではない、物理的に。
どういうことかというと、術後の後遺症で光を見るとフレアが視界に広がるのだ。
フレアは光の輪。
アニメや漫画で描かれる、恋に落ちたとか、輝やきの描写によく似ている。
フレアが邪魔で物が見えにくいとかもないし、夜景も一層綺麗に見えるのでなんならこのままでずっといいとすら感じる。
結果的に、眼内コンタクト手術はやってよかったと思える。
地震が起きてもがばっと起きて走り出せるし、コンタクト用品も全て捨てた。
愛用の眼鏡はサングラスにレンズを替える予定た。