大丈夫、絶対音楽は、歌はあなたから離れないから
Joni MitchellのBoth Sides Nowオケバージョン。
音楽は不思議。
あの時聴いていた音を耳にすれば
あの時の自分の匂いや熱量を
思い出すことができる。
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11年前
私は今住んでいる地域に引越しをした。
場所が変わったのを同時に
色んなことが変わった。
3年半、OLフルタイム勤務の後に
休まず月金で通ってた銀座のクラブの修行を卒業した。
通勤ルートも変わり最低の満員ラッシュの日々となった。
待ちに待った平日の夜に
仕事帰り、ピアノや理論や英語のレッスンに通った。
何より練習した。
ボイトレの研究をした。
色んなものを聴いたし聴きに行った。
長く習った先生のもとを離れた。
学生時代からお付き合いしていた彼と別れた。
それまで毎日銀座に行っていたから、会社員らしい付き合いが一切なかった私が、職場の飲み会にもたまーに顔を出すようになった。
平日夜が自由になったからと、練習や勉強に打ち込む一方で
銀座の修行で歌わせていただくことがなくなった為、ステージがなくなり
OLごっこもより濃く味わうこととなり
中途半端まっしぐらだった。
私は何者?
私のプライドって何に使ってんの?
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今でこそ
ボーカルの講師業をさせて頂くようになり。
皆様に
音楽する時間を作ること、練習すること
また、その積極性がいかに大切か、
オープンマインドが大事か
音楽を通じてコミュニケーションを!
なんて。
エラそーに言わせて頂く機会が増えているが。
私は知ってる。
みんなにそう言いながら、実は
いつもあの時の私を、投影してる。
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ボーカリストになる!
絶対歌やりたい!
って、思い続けてても
世間様から見たら
26歳実家暮らし非正規雇用OL。
OLごっこ、ってつもりで生きてるのに
OLじゃん。
歌ってなかったらそれ以上もそれ以下でもないのが私じゃん。
って、
毎日、自問自答していた。
何にもまだ出来てないけど早くライブ活動すればいい、とか
いやいや、英語や理論や、ボイトレ出来てからじゃないと、そもそも綺麗になんないと
活動なんかできないし、とか。
誰かを聴いて、観て、嫌になって、感動して、泣いて悩んで、やっぱり諦めて、新たに得て、喜んで、出来なくて、練習して。
内向的な自分を抱えたまま、ちいちゃいプライドばっかり隠して握りしめて生きていた。
辛いこととか、練習出来ないこととか、勉強のお金と時間に限りがあることとか
友人たちの音楽での活躍を聞いたり見たりしたときとか
悲しくて、悔しくて、情けなくて
自分が何者だって言えなくて、落ち込んだ。
でも、そんな気持ちになったときは
いつも
心の中で、祈るようにして呪文みたいにこの言葉を唱えた。
「音楽が、歌が私から離れませんように」
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大きな防音室を借りて、一人大の字になって音楽を浴びせる時間、と言うのを設けてて。
その時は、ジャズ、ポップス、クラッシック、ハウスにテクノにロックまで!!
ガンガン大音量でかけて跳ねまくってぶっ飛んで寝落ちなんだか行っちゃったんだかで何度も守衛さんに起こされる、を繰り返していた。笑
(アレはやばかった。一人遊びが万歳しすぎ)
その時、この曲を聴いていたら
もう涙が溢れて溢れて止まらなくなった。
iPodを握りしめてエンドレスリピートして。
何度も呪文みたいなその言葉が私の頭と心と体にぐるんぐるんまわるんだ。
離れない。絶対離れない。
私から絶対音楽は、歌は、離れない。
その日も泣き疲れて寝てしまって
いつものように守衛さんの電話で起こされた、はず。
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あの時iPodを握りしめながら大泣きして
大の字で寝てた状況とデジャブか??
今、手にしてるのはiPhoneで、そっから結構良い音質で流れてくる同じ曲をベットの上で大の字で聴いている。
切なくて涙が出る!と思ったのに
一切出なかった。大人になったらしい。いやいや、後で泣いとく、搾り出す、多分。出る出る。多分。
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私はボーカリストです。
今は胸張って言えます。