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お前のみみたぶすきとおって

帰省した時、
小さい頃によく連れていってもらった
公園に一人で行ってきた。

そこの公園には大きな岩があって
今なら上れる!と、ふと思い付いたからだ。

マーマレード色のおてんとさまの下
車で送ってもらっていた道を
とぼとぼ歩いてむかう。

幼い私には遠かった公園が
大人の私にはあっという間だった。

むやみやたらに増えた太陽光発電のパネル
つぶれちゃった定食屋
慰問演奏をした老人ホーム。

駆け出したい田舎道は知らないものが増えて
異世界に片足を踏み込んだような冒険道だった。

公園につくと、そこもまた異世界で
あんなに広かった公園は存在しなかった。

遊び回ることを拒むような雑草に
渇れてしまった池に川
新しくなった遊具。

でも、あの岩はかわらずそこにあった。

岩と呼ぶには優しすぎる
角のとれたフォルムは巨大な石ころ。

買ってきたチョコミントアイスを
石ころの上に置いてよじのぼる。

さっきより少しだけ近くなった空を仰いで
アイスをかじる。

昔もここで、こうやってアイスをたべた。
そんなことをふと思い出す。

嬉しいことも悲しいこともあったけど
ここにまた戻ってこられたことが
なんだかこしょばしかった。

小さい頃の自分がおかえりと
言ってくれているようで。

『田舎道(はっぴぃえんど)』を耳にためながら
石ころに寝そべる。

太陽ざあざあ降り注いで
日焼け止めを塗ってこなかったことに後悔した。

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坂井彩花♬MusicWorder
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