"イマドキ"世代に響くガールズロック。雨音コンプレックス「夜空に煌めく1等星」発売【後編】
左から、流石さやちん(Gt.)、水島サンチュ(Dr.)、きゅあかりたん(Ba.&Sup.)、エミリーンゴ(Vo.&Gt.)
【前編はこちら】
次世代90’系POP ROCK。その曲と歌詞の背景とは
――雨音のサウンドってGO!GO!7188っぽいとか、相対性理論っぽいとか言われるけど、実際は何の影響が強いの?
エミ:もともとスピッツがすごい好きで。めっちゃ好きで。スピッツとかユニコーンが入っている90年代のコンピレーションアルバムが家にあって、それをよく聞いてたんですよ。あとは、斉藤和義とか。実は、お母さんがフィリピン人なんです。それで洋楽とかも、ちょっと聞いてたんです。でもバンドマンが好きな洋楽は聞いてなくて。ニルヴァーナとか、そこらへんは聞いてないんですけどビートルズとかカーペンターズとか。
―わりとそれが曲にも直結してきてるんだ?
エミ:スピッツ要素がでかいかな、って。
――じゃぁ、曲作りはエミリーが中心にやってるの?
エミ:はい。歌とコードを作ってきて、右手のストロークの感じにドラムが合わせてくれて、楽器隊が音とってくれて、弾く。みたいな。
きゅ:(エミリーンゴが)作って、(他のメンバーに)投げて、(エミリーンゴに)返すみたいな。
エミ:あとは、その場で作ったり。スタジオの雰囲気かな。
きゅ:セッションじゃないっすけど。
エミ:楽器隊が「こんな感じで」って言った時に曲がふぁーってできて、うちが適当に歌をつくって「じゃぁ、こんな感じでいこう。」みたいな。この時は、こういう感じでコード弾いて、このコード進行でこうしよう。みたいな。先に曲だけできて、その後に歌がどんどん変わっていく、みたいなのが結構多いですね。
――歌詞の世界観もすごい独特じゃない?それって何に感銘をうけてるの?パッて降ってくるの?
エミ:本当に、ただの自分の気持ちっていうか。例えば『ボウフラになりたい』とかだったら「ボウフラになりたいなー」って実際に思ったし(笑)カレーの曲だと、うちのバイト先のまかないがカレーとシチューが異様に多いのがきっかけで。元々最初は、「おらはこの町がすきだ」みたいな感じの曲だったんです。最初は「ぼくはきみが、すきさ」とか「僕は、この町が」みたいな感じだったんですよ。バイト前にその曲を作ってたんですけど、その日のまかないがシチューで。うち福神漬けめっちゃ好きなんですよね。それで、「福神漬けとカレーがいちゃいちゃしてんのに、シチューがもし福神漬けのことすきだったら、どうするんだろうな」って。「僕は同じ皿に乗る夢をみた」っていう歌詞があって、それはシチューの上に福神漬けがのってるっていう想像の夢の中で、1番のAメロに「カレーライスと僕の違いは見た目味そんなんじゃなくて、そう君をいかに引き立たせられるかっていうのが僕らの違いなんだよ」みたいな。あえて味のことについては触れないで、どれだけ福神漬けを際立たせられるか。それで、2番の「同じ皿に乗る夢をみた」と同じところに「同じ墓にはいる夢をみた」っていう。その墓の部分はその三角コーナーみたいなイメージなんですよ。
――なるほどね。基本的に、恋の歌が多い気がしてるのは私の気のせい?
さや:あー、多いかも。事実だと思います。逆に恋じゃない曲って、『Rambler』ぐらいしかない。
エミ:『Rambler』も恋だよ。たしかに、そうかもしれない。カレーもそうなんですけど、三角関係が多いかも。三角関係までいっちゃうとあれなんですけど、恋の中の悲しい部分が結構多いかなっていう。
――悲恋が好き?
エミ:悲恋が多い。
――好きではないんだ?
エミ:好きではない(笑)好きな人いないじゃないですか、まず。悲しい恋とか。
―じゃぁ、好きな曲を好きな歌詞で作ると、恋の歌になるんだ?
エミ:みたいですねー。病むことが恋愛以外で少ないっていうか。家族とケンカしたとか、バンドでちょっとうまくいかないとか、そういうのはあるけど、ぐっとメンタルの奥底まで踏み込まれるのが、やっぱり恋人だったり、ずっと一緒にいる人とか、そういうのが多いから。
――大人のお姉さんとかお兄さんにはわからないような”イマ”の女子大生の恋愛の価値観が、すごい落とし込まれてるのかな?
さや:結構それぞれ恋愛の感じ違うよね。
エミ:たしかにね。高校時代、恋愛でかなり病んだんですよ。ちょうど雨音くんだ時期で、その時の感情で作ったのが『SUPIKA』なんです。最後の転調サビとかは「愛していたの今の今まで。自分ごまかそうかどうしようか。愛することをやめたあなたの愛は儚くも消えてしまうのです。」とか。「もう消えてしまった心のアルバム、もう埋まってしまった心のスペース、君の入るところはどこにもないよ。もう埋まってしまった心のスペース。私の入るところはどこにもないね。」っていうのは、まあ、そういうことですよね。
――やっぱり思い入れが相当違うんだ?
エミ:すごい深いですね。サビとかは、本当に王道コードなんですよ。それに合わせてハミングしてたら自然と歌が出てて、それをそのまんま歌詞にしててって感じです。だから、サビ以外のところに自分の気持ちをいれて、AメロとかBメロで隠してます。汚いような気がしちゃって、サビで自分の気持ち全部だしきっちゃうと。それがいいって言う人も、よくないっていう人もいると思うけど。でもうちは、サビよりAメロとかBメロに自分の気持ちがすごく入ってて。だから、カレーとかもすごい歌詞とか「すきすきすき」ってずっと言ってるけどAメロとBメロのところに、その情景とかが入ってたりして。
――サビを聴くと素のエミリーがいて、それを隠そうとするエミリーがAメロとかBメロにいる感じなんだ。
エミ:そう!そうです。『夜光虫』っていう曲もサビは「愛というか恋というかラブというかなんというか、そんな幻想信じてない」みたいな、メンヘラな感じなんですけど、最後の歌詞が「本当は君とずっといっしょ。そんな馬鹿なこと言っちゃってんの。」みたいな感じで、けっこう葛藤してるんですよね、自分のなかでも。やっぱり。
―世界観が面白いね。今回だしたアルバムも、そういうエミリーの世界観をもとに曲を作った感じ?
エミ:今まで自分たちがやってきた曲とか周りが知ってくれている曲。主にこれをやってる!っていう曲をいれてます。
――どっちかっていうと”1年間の雨音つめこみました”っていうよりも、”リスタートのための1枚”なんだ?
エミ:どっちもあるよね。1年間つめこんで、なおかつリスタートするためのアルバム。
――じゃぁ、分岐点になるためのアルバムと。
エミ:6月3日(金)、超大切なんです。
煌めく1等星たちのこれから。
――最後に、これからの抱負でも聞いて締めにしようかな。
きゅ:レコ初の日に体重を公開してダイエットします。
サン:二重にします。
エミ:じゃぁ、6月3日(金)に誰かからお題をもらって、1曲ちゃんとトラックでつくってくる。バンドでやらないでちゃんとトラックで、EDMの曲調でつくってくる!で、8月19日に30枚限定で100円で売る。
さや:私どうしよ…。
きゅ:あ、あれは?地獄のメカニカルトレーニング弾く、みたいな。
エミ:じゃぁ、それの1番レベル高いやつを弾く。
さや:うそおおおおお!いじめ?!それだったらまだ、ポールの方がよかった。
――じゃぁ、それがファイナルまでの目標だね。バンドの目標としては?
きゅ:リリースツアー帰ってくるまでにCD 200枚をソールドアウトさせる!
インタビューしている間も笑いが絶えなかった雨音コンプレックス。音楽にまっすぐに向き合い、タバコやお酒などの不良要素と決別した彼女たちは清純派ガールズバンドの代名詞となっていくだろう。6月3日(金)から、第2章が始まる彼女達から、今後も目が離せない。
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