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夏空にうち上がる6つの花火。『衣食住音 vol13』

外出しようとドアを開けると、じとーっとした気温が肌に絡みついてくる。セミの声こそ聞こえないが、季節はすでに『夏』だ。熱中症になってしまうような、くらくらする暑さ。そんな暑さを更に増幅させるような6組のアーティストが7月11日(月)、渋谷CRAWLに集結した。『衣食住音』と名をうたれたこのイベントは、今回で13回目を迎える。ネクストブレイクを期待されるニューカマーが集まり、新時代の幕開けをここから作っていくのだ。この日も次世代を引率してくれるような面々が顔をそろえた。

この日トップバッターを飾ったのは、東京を中心に活動する4ピースのオルタナティブバンド“APRIL MONET”だ。小林(Vo.&Gt.)の掛け声で、ショータイムはスタート。アンサンブルを大切にした演奏は『日傘の渦、私の夏』から冴えわたる。しっとりとしたイントロとパワフルなメロの対比が色濃い『バースデイ』では、某テーマパークのパレードを見ているようなわくわく感を届け、続く『room』では変拍子とスペーシーなエフェクターによって会場の聴衆を異空間へいざなった。「新曲を持ってきました。」というMCに導かれ始まったのは『ねぇ シェイトラム』だ。どこかけだるげでアンニュイな雰囲気を放つポップ・ロックの効果により、会場は“APRIL MONET”カラーと化す。ラストソングを飾ったのは、“プールと銃口”と作成したスプリット音源にも収録されている『幻煙る、そして』。ギターの艶っぽいソロとキーボードの可愛らしさの対比が眩しい曲で、迫力いっぱいのアウトロをかき鳴らし場内の空気を暖めた。MCで小林は「ワクワクをモットーに活動しています。」と話していたが、その世界観は初々しいながらもしっかりとライブに反映されていた。

深いブレスにより瞬く間に空気を作り上げたのは府中を中心に活動する“kobore”である。吐息をたくさん含んだ声で、しっとり聴かせるのかと思えば、いきなりの盛り上がりでその場の空気を一瞬で変える。彼らを一言で表すなら【エモい】に尽きるだろう。「kobore始めます。」と佐藤(Gt&Vo.)が宣言するころには一人残らず彼らの引力に引きつけられていた。サビの盛り上がりで力強く畳み掛ける『声』、ベードラの安定感が心地よい『幸せ』へと続いていく。「こんな夜には、あんたに会いてえな。」と告げ始まったのは『おやすみ』。せつなさの中に激しさが見え隠れする曲で、クールにかっこよくいたいけど、そうはいられない泥臭い生身の少年の姿がそこにはあった。『涙のあと』には女の子が思わずトキメイテしまいそうなセリフが満載で、レスポールとセミアコの掛け合いも誘惑するかのように色っぽく響く。〆の1曲となったのが『当たり前の日々に』。彼らのコボレた思いに呼応するかのようにフロアからは自然と手が上がり、箱全体が一体となった。コボレ落ちる感情を隠すことなく伝えてくれる彼らの今後がより一層楽しみになるステージングとなった。

横浜の“Althea”はテクニカルなギターソロで封を切った。堂々としたステージングは、さすが“未確認フェス3次予選進出”アーティストなだけある。『裏表』でハイトーンボイスを存分に響かせ、『三角形』では激しいプレイを魅せつける。呼吸をするようにステージを暴れまわる彼らだが、グルーブは決して狂うことはない。そのクオリティは高く、正規ドラマー加入後、今回が初のステージになることを誰も想像していないだろう。勢いはとどまらず、ベースの低音にギターの速弾きが映える『君へ』、ムーディーでジャジーな『Never knows Beat』と進んでいく。色気満載のパフォーマンスで、その大人っぽさから彼らが未成年であることを忘れてしまう。ラストソングは“Althea”のかっこよさをギュッと詰め込んだ『花と水滴』。楽器だけでのアンサンブルもクールに決まり、腹の底から声をだし必死に伝えようとする姿には、胸の奥を強くつかまれたような気がした。8月3日にE.Pの発売も決定している“Althea”。このクオリティで高3?と信じがたい実力とセンスを持った彼らから、今後も目が離せないこと間違いなしだ。

楽しい時が過ぎるのは早く、あっという間の後半戦だ。楽器隊を引き連れず、マイク片手に登場したのは埼玉のレゲエDJ“ROCK RIVER”。バンドばかりのイベントに1人佇む姿は、それだけでもどこか異質である。彼は「ジャンルの壁があっても、乗り越えるのは簡単だ。」と発し、その言葉に恥じないステージングを披露した。切ないラブ・ストーリーを歌った『Where you』、学生生活の情景が面前に浮かぶ『クラスルーム』と丁寧に歌い上げる。パフォーマンスはとても堂々としていて、ステージが狭く見えるほどだ。さすが18歳、『Inna de Dancehall』を踊り歌うステップも軽やかである。「これは、リリックを聴いてください。」との紹介で始まったのは『Time』。「もうすぐ放り出される社会人」などの歌詞があり、現役高校3年生ならではのリアルが色濃く表現された1曲だ。かっこつけすぎることもない、ナチュラルな彼の空気感に会場中が魅了されたことだろう。次世代のレゲエスターの誘導により、会場全体で手を左右に振り、大団円のままステージは幕を下ろしたのだ。

幻想的なBGMに先導されて登場したのは東京の“パイロットフィッシュ”である。音のピースを一人また一人と重ねることにより、1曲目の『ミッドナイトダイバー』から躁鬱的かつポップな独自の空気感を作り出す。妖艶な熱視線を振りまくヨシタカ(key&Vo.)に、フロアは一人残らず射抜かれてしまいそうな勢いだ。流れるように曲は繋がり、歌声で始まったのは『波をうつ』。気持ちの波が一気に押し寄せる感情的な曲で、ヨシタカのねっとりとして麻薬的な声がとても引き立つ。そして驚かされたのが、MCとのギャップである。ステージングは冷静で大人な4人なのに、MCになった途端に一気に空気が緩くなるのだ。ダンサブルかつセクシーな『セカンドカミング』、星の輝きを凝縮したような『キャドル』、センチメンタルさにメンヘラを含む『246号線』と曲は続いていく。ラストを飾ったのは1st E.Pのリード曲でもある『ロードムービー』。彼ら自身が人生を謳歌していることが、この曲を聴けば一目瞭然だ。「忘れないでね、生きてるってことを。」と告げ、アラカルトロック集団は闇に消えていった。

この日のラストを飾ったのは“まぜたらうまい”。「そいやっ!それ!よいしょっ!どしたっ!」の掛け声でショータイムは始まった。『天下統一目前にて辻斬りに遭ふ』は、桐原(Gt.&Vo.)の中世的な声が映えるお祭りソングで、ステージは早くも化学反応。観客を置いて行ってしまいそうな怒涛の勢いである。続く『日常に巣喰う妖怪』は、サイケデリックなアップチューンになっており、激動の音楽を涼しい顔でプレイする彼らの姿に戸惑いさえ覚える始末。リレーソロなど見せ場の多い『イヤニシミル』、しっとり繊細かつ抒情的な『星とプリズム』と全力の演奏をする。「俺らカッコいい!」とわかっているかのようなステージングは、自信に満ち溢れ恍惚の吐息が漏れるほどだ。桐原が笑顔でクラップを誘ったのはラストソングの『溺れる魚』。まさしく正統派ロックともいえるこの曲でも、4人の運動量は落ちることがない。消費カロリーが間違いなく本日1番ともいえるパフォーマンスは、彼ら1人1人の魅力が相乗効果を生み出し、まさしく“まぜたらうまい”ものだった。全国15ヶ所のステージも経験し、より成長した彼らの今後から目が離せない。

ジャンルの垣根を越え生み出されたスペシャルナイトは、6つの大きな花火を打ち上げ、大成功のうちに幕を下ろした。彼らが夏の暑さにも負けない熱風を、音楽シーンに吹かせてくれる日も近いだろう。その時はぜひ、ラムネで乾杯したいものである。

photo by中磯ヨシオ
text by さかいあやか

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衣食住音 vol.14 開催決定!

9月12日(月)渋谷CRAWL
Althea
/QoN/CANATA  and more…

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参照
APRIL MONET
 HP
kobore
 twitter
Althea
 twitter
ROCK RIVER
 Eggs
パイロットフィッシュ
 HP
まぜたらうまい
 twitter

衣食住音 vol12 ライブレポート

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