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宝剣の呪い

 中学2年のある夏。もうすぐ夏休みも近づこうとしていた暑い日の事だった。タイミング悪く校舎の外壁工事の納期が延びて、校舎は緑のネットとビニールで覆われ、暑い夏なのに窓を開けることも出来ない。当時、小中学校の校舎にクーラーがないのなんて当たり前だったから、教室内は今にも熱中症を引き起こしそうな暑さになっていた。クラスのほぼ全員が、授業が終わるのを今か、今かと待ちわびていた。
「さて、今日はこの辺で授業を終わりにしよう。みんな暑いだろ。授業はもうとっくに教科書に追い付いてるから、今日はこの辺で授業を終わりにしよう。古墳にまつわる怖い話でもするか!」

 社会科の先生はそう言って、教科書を閉じた。それまで暑さと湿気の不快感でとろけそうになっていた私達は、先生のその一言で一気に元気を取り戻した。先生は、話始めた。

「これは、本当にあった話だ。結構怖いから、覚悟して聞いてくれよ。」

 ある男複数人が、古代の大王の墓に忍び込み、石室を掘り返して棺の中に納められていた宝剣を持ち出した。恐らくそれで、宝剣を盗み出して売って金銭を得ようと目論んだのだろう。盗みは成功し、男達は宝剣を手に入れた。
 本人達が、歴史上の遺産にどれくらい詳しいのかは定かではなかったが、盗掘をするのは恐らくこれが初めてだった。盗掘により金銭を得ることがどうやら出来るらしい、と噂で聞いての、わりと軽率な動機だった様だ。
 ひとまず、買い取ってもらう方法を考えねばならない。その日は盗み出した宝剣を売る手段を考えるだけで一日を終えた。宝剣は、その中の一人である男が預かる事になった。宝剣を預かった男は、やがて眠りに就いた。

「返せ~。返せ~。」
男が眠って居ると、どこからともなく地響きの様な唸り声が聞こえる。それは段々と、自分に迫ってくる様に思えた。
「か~え~せ~。か~え~せ~。」
どんどん声が大きくなり、男は息苦しくなって目を覚ました。
「誰だ!」
男は一人暮らしだ。もし誰かが居るとすれば侵入者の他に居ない。だが、辺りを見渡すも、誰もいる気配はなかった。
「なんだ、夢か。」
男はそのまま、再び眠りに就いた。翌朝目覚めると、やはり何も異変は起きていなかったので、男は特にそれ以上気にすることはなかった。

 この男達は、祟りや呪いなど、基本的には信じない性質だった様だ。だからこそ、大王の墓を掘り返し、宝剣を盗み出すなどどいう罰当たりな事が出来た訳だ。
 しかし、その次の日も、宝剣を預かった男が眠ると、同じ声が響いて来た。
「か~え~せ~。か~え~せ~。」
男はさすがに気味が悪くなり、共犯者達に打ち明けた。
「こいつをうちに置くようになってから、声がしてるんだよな。返せ、返せって。これ以上うちに置いておきたくないんだが。」
共犯者たちも気味悪がった。
「だったらとっととこいつを売っぱらっちまおうぜ!昨日、丁度良さそうな買取手を見っけたんだよ。」
男達は、宝剣を持ち出し、売り払うべく、車に乗って出かけた。買い手は少し距離のある所に居る為、高速道路を使う事となった。

 「○○高速道路にて、男性3名が乗った乗用車が横転、車は激しく損傷しています。乗っていた3名は救助されましたが、いずれも搬送先の病院で死亡が確認されました。」
そのニュースが速報として報じられたのは、その日の夜だった。宝剣を盗掘した男達は全員、交通事故で即死していたのだ。
 宝剣は車から遺留品として回収され、病院に集まったそれぞれの親族に渡された。しかし、宝剣だけは、誰の所有物か特定できなかった。

そこに居合わせたのが、今回の事件には関わっていない彼らの窃盗仲間の一人だった。
「これ、俺が預かりますよ。」
斯くして、宝剣は仲間の男の預かる所となった。

 その日からやはり、仲間の男にも同じ現象が起こるようになった。
「か~え~せ~。か~え~せ~。」
地響きの様な声が聞こえる。しかし、仲間の男はそれが宝剣だとは知るも、
よもや古墳から盗掘された物だとは知らなかった。
やがて、数日経過するとその声もしなくなった為、仲間の男は気にする事なく、気付けば一年が過ぎていた。
そして仲間の男はふと思った。
「返せって言ってるの、もしかしたらあいつなのかもな。そうだ、そろそろあいつが死んで一年だ。これをあいつの墓まで持って行きゃ気が済むだろう。」
そうして仲間の男は、宝剣を車に積んで死んだ男の墓へと向かった。

 その日の夜だった。速報として、交通事故のニュースがお茶の間に飛び込んで来たのは。
「○○高速道路にて、乗用車とトラックが衝突する事故がありました。乗用車を運転していた男性は既に死亡が確認されています。トラックを運転していた男性は軽傷を負い、病院で手当てを受けています」

その時、ニュースを報じる画面に、古墳時代の服装、髪型をした人物のようなものが映り込んだ。

「か~え~せ~。か~え~せ~!か~え~せ~!!」

#2000字のホラー #怖い話 #本当にあった #呪い #盗掘





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