最悪な寝相【短編小説】
「つまり、寝相がとても悪いからそれを治して欲しい… と」
白衣の男がカルテを片手にそう問うた。
「はい」
「しかし君ね、人間寝ている間多少は動くものなのですよ。寝返りが多いくらいの方が健康ってなもんですよ」
「いえ、寝返りとかそういう可愛い問題じゃあないのですよ。起きたら全く知らない場所にいる、というような事が度々あって……」
「ほう、では夢遊病というやつでしょうな」
「そういうわけでもないんですよ、だから敢えて寝相と表現しているわけで……」
結局医者には相手にしてもらえず、夢遊病の薬だけを処方されてトボトボと家路に着いた。駅から徒歩20分、二階建てのおんぼろアパートの一室。部屋に入るとどっと疲れが襲って来る。暫く寝ていないせいで瞼が重い。
一時間程度なら大丈夫だろう。
私は椅子に腰を下ろし、目を瞑った。
鳥の鳴き声で目を覚ます。
なんだか蒸し暑い。どうやらかなり眠ってしまったようだ。
周りを見回すと見たこともないような植物が生い茂っている。どこかジャングルの奥地らしい。最悪だ。
ここが何処だかもわからないし、帰るすべもない。
また帰れる距離の場所に行けるまで眠り続けるほかは……