終わり良ければ全て良し
「なぁ…もう見てるのが辛いんだ……」
目の前で暗い顔をしている彼女に優しく語りかける。
『でも…忘れようとしても…忘れられないのっ…』
彼女は唇をギュッと噛みながらそう応えた
俺は今彼女の相談に乗っている状態
彼氏が昔と違い、自分に冷たく……
更には自分への暴言、軽い暴力もあったみたいだ。
そんな奴じゃなかったのに…
この状況を俺はどうにかしてあげたい
自分に利益もないのになんでそんな事をするのか?
そんなの決まってるだろう
俺は…彼女の事が________
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「なぁ、史緒里。あいつと付き合ったんだって?」
『うんっ!私の方から告白したんだ!』
史緒里は笑顔で俺に報告する
その後も嬉しそうに近況を教えてくれてさ…
こっちの気も知らずに。
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俺達はいつも4人で行動していた
大学の授業や休みの日などもずっと一緒
メンツは
俺と△△という男友達。
それに史緒里とあともう1人は美月という女の子
ずっといる度に段々俺は史緒里の事が……
でも
史緒里が選んだのは俺じゃなく△△だった
もちろん今の関係を崩したくない俺は
自分の想いを口に出せるはずもなく…
このまま彼女への思いを
未練がましくズルズルと引きずると思っていたら
△△と史緒里が喧嘩をしたという話を聞いた
それで今相談に乗っているというわけ
もしかしたら…という淡い期待をもって。
「俺これ以上史緒里の辛い姿を見てられないよ…」
『○○…』
「俺だったら史緒里の事を幸せにできる自信がある
なぁ…史緒里…もし良かったら俺と…」
『待って…そこから先は…まだ聞けないや…』
史緒里が席を立とうとする
「ご、ごめっ…そんなつもりじゃ…!」
『私は…昔の△△に戻ってくれるって…まだ信じてるから』
史緒里は悲しそうな顔をしながらそこからいなくなった
俺は間違いを犯してしまったのか?
好きな女を心配する事はいけない事だったのか?
どこにも吐き出せないモヤモヤだけが心の中に残った
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『ねぇ…私の事助けて…!』
「ごめん、今そんな気分じゃなくて…」
『本気で困ってるの!お願い!!』
「美月…まだ可能性の段階でしかないんだろ?」
『そ、そうだけどさ…』
俺は史緒里と別れたあと美月に呼び出された。
美月は今ストーカー被害を受けてるらしい
姿は見ていないが…気配を感じると言っている
史緒里にフラれたも同然の俺は
美月の言葉を真剣に考えることが出来ず…
「俺今夜用事あるから…ごめんな」
『嘘でしょ…!? 私の事見捨てるのっ!?』
「また予定がない時は付き添いするから…
今夜は俺から△△にお願いしておくよ」
『…私○○の事が好きで頼ったのに!!
○○のバカっ!もう知らない!』
今日だけで2人の女の子を失望させてしまった
本当に俺はダメな人間だ…
美月は俺の事を好きと言ってくれたのに
史緒里の事ばかり考えてしまって……
とりあえず何も考えず用事を済ませよう
きっとこの苦しさも…すぐに"消えるはず"だから。
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『もうっ!本当に○○信じられない!
こんなに困ってるのに見捨てるなんてっ!!』
「まぁまぁ…一応あいつ俺に連絡くれたじゃん?」
『そうだけど!!
…○○の事好きだったから頼ったのに無視って!』
「はは…今日は用事があったからダメみたいだし
明日からはしっかり○○が守ってくれるでしょ」
『そうだったらいいんだけどね……』
私は○○への愚痴を言いながら△△と夜道を帰っていた
今日は△△もいるし何事もなく帰れるかと思ったが…
『ね…ねぇ…△△。 わかる…?』
「あぁ…見られてるな。確実に。」
後ろからいつもの視線を感じた
やはり…私のストーカーはちゃんといたんだ…
ハッキリと自覚すると…
今までの恐怖に体の震えが止まらない
「美月…大丈夫だから安心しろ…」
△△は私の手を引っ張り走ってくれたが……
段々と追いつけなくなってきて
とうとうストーカーの足音が近くまで近づいてきた。
「くそっ…やるしかないか…! 美月は俺の後ろに!」
△△は私の事を考えて
ストーカーを迎え撃つという選択肢をとる
真っ黒なパーカーを着ていて
顔は…何かを被っているみたいで見えない。
△△も震えているのに…私の為に体を張って…
『む、無茶しないで…私のせいで△△が傷ついたら…』
「大丈夫…美月は何も心配しないでいい。
惚れた女に…かっこいい所見せたいんだ」
『えっ…?』
史緒里がいるのに…?
そんな考えが頭によぎったが
今は△△の事しか考えられなかった。
『頑張れ…△△っ…!!』
数分間の揉め合いになり
ストーカーはこれ以上大事にしたくないみたいで
この場から走り去っていった
……あの姿どこかで見た事あるような?
まぁそんなわけないよね…とりあえず…
『うう゛っ…△△…良かった……』
「ははっ…あんな奴に負けるほどヤワじゃないよ
とりあえず美月が無事でよかった。」
私は少しの間△△に抱きつきながら涙を流していた
・・・・・・・・・・
『ねぇ…さっき言ってた事って本当…?』
「……本当だよ。」
普段見ない△△の真面目な表情。
決して冗談をいってるようには見えなかった
『…まだ一人じゃ怖いの…一緒に私の部屋来てよ…』
「うん、今日は美月と一緒にいるよ」
史緒里…ごめん…
頭の中でそう呟きながら彼にキスをした。
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数日後
「史緒里…話良いかな…?」
『私も相談したいことあったんだ…○○に…』
史緒里の表情はとても辛そう
前まで見せていた太陽のような明るい笑顔はない
きっと最近ほぼご飯を食べていないだろうな…
数日前よりかなり痩せている。
辛そうな史緒里に肩を貸し自分の家まで連れていった
・・・・・・・・
「史緒里…俺もまさかあんな事になるなんて…」
『ぐすっ…なんで…なんで私の事を…』
史緒里が今泣いている理由は
急に大学内で騒がれている
"美月と△△の関係"だ。
出処は分からないが、なぜか2人がキスしている写真が
大学内で回り俺たちの所にも入ってきた。
『私…ずっと△△を想ってたのに…』
史緒里が泣く姿を見て…俺も胸が痛くなる
「史緒里…あんな奴の事考えなくていいよ…
史緒里には…俺がいるからっ…!!」
彼女をぎゅっと抱きしめ自分の思いを吐き出す。
『○○…私の中から△△の事消して…』
「俺の事だけしか考えられないようにするよ…」
2人はお互い求め合いながらベッドへと向かった。
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その後、俺らは4人で集まる事はなくなった。
△△は美月と
俺は史緒里といる事が当たり前になり…
でもそれでいいんだ。
それで皆が幸せだから……
"なぁ…そっちは順調か?"
"あぁ…お前のおかげで助かったよ。"
"じゃあお互い幸せになろーな!
また飲みにでもいって近況報告しようぜ!"
"おう、じゃあまた予定たてるか"
『ねぇ…○○!私とのデート中なのに携帯見すぎ!』
「あぁ…ごめんごめん…じゃあデート楽しもうか」
ここまで色々あったが…
まぁ"終わり良ければ全て良し"だよな…?
END