魅惑のハイキングからペナン風ラクサまで
今日は香港での休日の過ごし方について少し。
長野県に住んでいた時は産直市場で新鮮な野菜を買うのが週末のルーティーンだった。道中のドライブで移りゆく季節を感じながら、お気に入りのカフェや新しく見つけたレストランや食堂を試すのが楽しかった。体を動かそうと思ったら、無数の山に囲まれた信州だから、車で30分も走れば登山を始められる素晴らしい環境だった。
シカゴにいたときは、平らな土地と比較的整備されたサイクリングロード のおかげでサイクリングが楽しみの一つだった。特に季節や日によって色や表情の変わるミシガン湖のほとりを風を切りながら走るのが好きだった。
香港に移り住んでからは、ハイキングがほぼ毎週のルーティーンになっている。ハイキングといっても信州の登山ほど本格的なものはほとんどなく、一番高い山の標高だって1000メートルに届かない。高層ビルがそびえ立つ香港のイメージだけど、実は住宅街の裏山がハイキングコースなんてこともわりとあって1、2時間の軽いハイキングを楽しめるコースもたくさんある。
10月後半のある週末。秋晴れの空と爽やかな風に背中を押され、いつもと違うトレイルを試してみようと少し遠出をしてみた。
向かったのは新界にあるShing Mun Country Park。ここは巨大な貯水池に囲まれた自然公園。香港の地下鉄MTRの赤い路線の終点、Tsuen Wan駅からミニバスに乗って20分ほど揺られ終点でおりればトレイルのはじまり。
香港の人混みと喧騒を忘れてしまうくらい、穏やかで静かなトレイルが続く。貯水池の縁を沿うように走るその道は激しい昇り下りもなく、秋の柔らかな木漏れ日やいつもと少し違う植生の森を楽しみながら歩ける。
歩き始めて2時間弱、貯水池のほとりにピクニックができそうな空間が広がっているのが見えてすこし遅めのお昼休憩。静止した水面に歩いてきた森が広がっている。くっきりと映し出された森や空は、心地よい風が吹くたびに歪み移ろい、そしてもとに戻る。ミラーレイクならぬミラー貯水池の織りなす幻想的な世界に魅せられていたらあっという間に時が過ぎてしまった。
本当はこのまま見晴らしのいい本格的な登山道に突入する予定だったけど、景色に見とれて時間もなくなってきてしまったので、このまま貯水池を一周し、Tsuen Wanの街を探索して帰ることにした。
Tsuen Wanの外れにある工業団地。その中のひとつの古いビルがリノベーションによってアートシーンへと生まれ変わっていた。コーヒー好きの嗅覚に外れはなく、ロースターを兼ねたコーヒーショップ「KOKO」で極上の一杯をいただく。
夕暮れも迫りお腹もすいたところで、ご飯処を探しつつ馴染みのない路地を歩く。夕方五時。まだ夕飯には時間も早く、人もまばらな個人店の連なる一角に、一軒だけほぼ満席の食堂を発見。こういうこじんまりとした繁盛店を見つけると妙にドキドキしてしまうところがあって、迷わずここに決める。
どうやらマレーシア料理のお店のよう。常連らしいお客さんはそれぞれに肉骨茶やサテー、ラクサなど好きに頼んでいる。以前にマレーシアのペナン出身の同僚が「ペナンのラクサは違うよ。酸味が聞いてて魚の味がするの」と言っていた一言をふいに思い出し、ペナン風ラクサに即決。
酸味の聞いたスープの奥にはしっかりとした魚のだしからでた甘みが広がっていて、今まで香港で食べたラクサの中で一番だった。香港に来た当時はコシのないプチプチと切れるお米の麺はイマイチなんて思っていたけど、今ではサラリとした優しい米麺もすごくしっくりくる。
最後のスープまで美味しくいただき、ほのかに秋の匂いがする風を楽しみながら帰路についた。
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