21.11.27
テーマ☆ 色、変身、知らない
テーマだけお借りしました。
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ホムが夜の海を渡っていると、ポストに1件の通知が届いた。それは以前知り合った別ホムンクルスからだった。
『前に、あなたのアイランドにお水を上げた時にいたツノリムルが可愛くて、私の島のリヴリーに変身してもらったの 良かったら見に来て!ツノリムルちゃんを連れて まってるね』
私の預かっているツノリムル、サンテリッチェが褒められて、嫌な気分がするはずも無い。
早速ホムは支度をはじめた。
(なんだか嫌にやる気だね、明日は星でも降るのかい?)
「お友達がサンテリッチェを褒めてくれたから、そのお礼に挨拶に行こうと思って」
(やれやれ、それなら僕は一休みさせてもらうよ、いつも君に付き合って散歩は僕ばっかりだ。たまにはサンテと一緒に水やりに回ったらいいさ)
そう言うとクリェッチェは長い耳をパタつかせてモチモチのクッションに体を投げた。
「戻ってきたらまたクリェッチェと水やりに行くもの」
(なぜ僕なんだい、そんなにこのうさぎ耳が好きなのなら、早いことコイツをコルヌレプスにしてやったらいいじゃないか…僕の負担が少しでもへるようにさ)
そう言って指さす先にはアーキタイプのベルがちょこちょことクリェッチェに近づいていた。ベルは星産の神様の元でクリェッチェと共に作った星屑からできた子だった。神様からの封書とともに来た時には大変驚いた。
そして、ベルは自分を拾い上げたクリェッチェを大層気に入ったらしく常に近くにいようと涙ぐましい懐きぶりでクリェッチェを慕っているのである。
(ボクのこと連れていってくれるっていってた!)
猛スピードで突進してきたサンテリッチェを抱きとめると、ホムのお腹に丸いふわふわの耳が重たく突き刺さる。
「ぐっ……さ、サンテリッチェ、角じゃなくても痛いのよ……」
(ボクの事!連れていってくれるの!!)
目を輝かせて抱っこをせがむのを無下には出来ず、後ろからしっかり抱き上げると、長いしっぽをぶんぶんさせて。ホムの視界は見事にふわふわの耳で覆われた。
「サンテリッチェ 前が舞えないからシャワーの時みたいに耳びょーんして」
(ん!わかった)
小さい爪を引っ掛けて視界を開いてもらうと、モンチェリは何も言わずしっぽをユラユラさせている。
「今度人形の島のこのところに遊びに行こうねモンチェリ」
(わるくないわ……早く帰ってらっしゃい。あと、お散歩に連れていくならモンチェのシャワーの後よ わかった)
「分かってるよ ブラッシングもしてあげるね 」
そう言うと優雅に踵を返し、暖かい陽だまりを見つけると、体を丸めてまたしっぽだけを揺らした。
着いた…。
友達のホムと話をして、サンテリッチェを下ろすと、黒いツノリムルに興味津々といった様子で毛が絡まるのも厭わずにお互い楽しそうにしている。
「色が違うだけでもだいぶ印象違うね 元々はブラドだった子だよね?」
「うん、ふわふわの毛足が長いのも新鮮で可愛くて! あなたはあまりリヴリーの変身 してないみたいね?どうして?」
「ん。なんでだろう。見なれてしまって 別の知らない子みたいになっちゃうのが怖いのかも……」
「んー。そうかな。中身は変わらないよ?うちのリヴリは世界にヒトリしかいないもの それがわかっていて 愛していれば充分よ 」
「…そうね」
カノジョはよく新しいリヴリが発表されると色々な子に変身して貰うらしい。その度にどんな変化があるのかを、研究するのが好きだと言っていた。リヴリー達も彼女のことが好きらしく、その変身に快く応じている。
「…平和だね」
「そうでしょう〜」
広い草原のようなアイランドで広々と遊んでいるリヴリを見て。私も一息つこうとしたその時
(ホム助けてー!絡まって取れないよぉ!!)
聞き馴染みすぎる泣きそうな声はサンテリッチェだ。どうやら体をこすって遊んでいたら、ツノリムルどうしで絡まって離れられなくなったらしい。
近くで見ていたモモスも悲しげにオロオロして、平和がいっぺん。大騒ぎだ。