見出し画像

泣き虫な神様へ

21.11.13

Twitterへ投稿した、お話の全文です。読み直しながら加筆修正してありますので、当日乗せたものよりすこし読みやすいと思います。

===

宇宙のはずれの 半分になった月の上に
1柱の神様がおりました

その神様は、
多くの神様が暮らす
明るい華やかな宮殿から
遠く離れた 小さな月に腰掛けて
宙にかかる星の川を彩る仕事をしておりました。

流れる川が星を産み、指先で弾いては物語を紡ぎ
夜を過ごす愛し子が
怖がらないように歌を歌ってやるのです。

しかし、いつしか人々は夜の宙のその奥に 神様がいることを忘れてしまいました。
神様は悲しみました。

『1人寂しくとも、ボクはみんなを愛しているのに 誰もボクの話を聞いてくれない 夜はもう暗くなくなってしまった…』
自分を必要とする人は居ないと 涙する 神様の元に、
またひとり、半分の月を託された小さなホムンクルスが流れ着きました。


「どうして泣いているんですか?」
『……ボクは要らない神様なんだ』
「あなたが泣くから 川が溢れて流れ着いてしまいました 何とかしてください 」
『泣いてるボクをみて、君はそんな酷いことを言うのかい』
真っ赤な鼻を鳴らしながら、神様は仮面を外して言いました


『君が今日からボクの代わりに、夜の宙に星を紡いで、歌を歌い、愛し子たちを見守り、僕の悲しみを思い知るといい』
「そう言われても、私は待ち人がおります。それに、このリヴリーたちのお世話もあります。そんな私に、神様のかわりなんて出来っ子ありません」

ふるふると首を振り、断るホムンクルスに神様は仮面を押し付けて、雲の隙間をめくり
不貞腐れて眠ってしまいました。

「これからいったいどうしたら……」
絶望するホムとは裏腹に、いつもの3匹が呑気に遊び、歌って眠り。困った顔をするホムをみてわ ケラケラと笑い転げます。

「星の作り方なんて知らないよ…」
困った顔のホムをみてクリェッチェが言いました
(バカだな君は 手に持ってる仮面をはめて 指を弾いてみてご覧 さっきの神様がしてたでしょう?)
見様見真似にやってご覧
そう話してみせたクリェッチェ
渋々仮面を付けたホムが、小さく指を擦ります。パチパチとの小さな光が瞬きました。

おそるおそる、指を水面に沈めると、瞬く光がシャラシャラと
川を滑っていきました

あとはなんと言ったっけ?

(指を弾いて物語を作るんでしょう?いつも聞かせてくれる話を星にしてあげたらいいじゃん?)
サンテリッチェが頭によじのぼり、角をゴシゴシ ホムの頭に擦りつけます。
「いたい いたい サンテリッチェ わかった お話を考えるから ゴシゴシしないで〜」

ホムはいつのもお話に 可愛い神様を足ました
幸せな 優し話しになるように

ひとりが寂しいなら、お友達がいたらいい
バラでも本でも星でも良い。
泣き虫な神様が、寂しくない お話を


古びた手帳をパラパラめくり、物語を紡ぎました。悲しい話 辛い話が多いけど
ホムの書いたお話は とびきり甘い星々の喜びに満ちたものになりました

あとはなんと言ったっけ?

(……愛し子たちへ歌を送るのよ モンチェは静かな歌がいいわ)
そう言ってモンチェリがしっぽを揺らし
歌のリズムを決めました

いつもどこかで聞くような、優しいリズムで暖かい そんな歌が流れます。

半分の月のその下の流れる川のその先に、神様が見守る愛し子が 小さく寝息をたてました。


お仕事はおしまい。
ホムは甘いココアを作り、少しづつのみました。

「ああ、神様もきちんと休む時間が必要だったんだなぁ……」
腰掛ける月の端に、預かった仮面を置いてホムは神様の雲の天蓋をみやります。

規則正しく聞こえる寝息。
それは、揺れるモンチェリと同じリズムでした。


「ここにずっとはいられない 私たちは王子を探して、お手紙を出さないといけないから」
でも、そしたら神様はまた1人になってしまう
どうしようと悩んでいるとクリェッチェが川から1つ。星屑を拾い言いました。
(ここには小さな命がある 愛と抱擁の後に魂が宿る この子はきっと優しい子だろう どうするかは君に任せるさ )

小さなコヌから託された、命を優しく掌に
のせて眺めてホムは思いました。
どうか優しい子であるように 神様にもお友達が必要だ

ひとりぼっちだった神様に、雲をたばねて作った「小さないのち」の様なものを、ホムは瓶に詰めました。
ゆっくり休んだその後に、神様が寂しくないように。

ぼぅっと黄色く、優しく光るその子に名前はまだありません。
でも、きっと神様はこの子の事を気に入るでしょう。


「おやすみ、神様 お仕事は返すよ 私もやってみたけれど 真似っ子でしかないからさ」
ホムは小さな瓶と、預かった仮面を神様へかえして、自分の月に乗り込みます。
流れは緩やかになったけど、ひろがる宙のどこかにいる。
「 星の王子さま 」を見つけるのです。


↓加筆前のもの

https://twitter.com/liv_aya_b612/status/1459523472736993286?t=clgvylJc0Rz92yDgqj9EIw&s=19

いいなと思ったら応援しよう!