見出し画像

イタリアのチョコレート風味パネットーネ@ルレ・デセールParis フランスの食関連ニュース 2021.09.15

今週のひとこと

パリはバカンスを終えて慌ただしい新学期を迎えています。外食産業業界では、クリスマスを見据えた広報活動が活発です。日々の山積みになった仕事などの合間を縫って、お世話になってきたお店やグループのプレス発表にもなんとか顔を出せたらと、毎日スケジュールを見ながらの駆け足の毎日。9月もあっという間に過ぎていきそうです。そんな中、アソシエーション「ルレ・デセール」のクリスマスのクリエーションを発表する会がブローニュの森のそばのホール「パヴィヨン・ドーフィンヌ」で開催されました。ルレ・デセール」は1981年に創設されて、今年で40年を迎えたという記念すべき年でもありました。フランス菓子の技術や情報を分かち合い、質の高いパティスリーを生み出していくことを目的にして立ち上げられ、今や19カ国83名が参加しています。会長はヴァンサン・ゲルレ(フレデリック・カッセルからゲルレに)、副会長はピエール・エルメとジェフ・オーべルヴァイス。会員にはジャン・ポール・エヴァン、ベルギーのヴィタメールなど、錚々たる重鎮の職人たちも名を連ねています。日本人も青木定治、寺井則彦など6名が会員。本来は、日本からも今回の発表会に参加されることも考えられたでしょうが、コロナ禍にて、ヨーロッパ勢のパティシエのみの参加に。それでも軽く60名以上は集まり、盛大な会となりました。

そんな中、パティシエさんの間でも評判の高かったのが、イタリアからやってきたルドルフ・リナルディーニのパネットーネ。パプア・ニューギニアとカリブ諸島、ウガンダ産3種のチョコレートをブレンドして練りこんだ、きめの細やかさ、しっとりとした質感、適度にねっとりとした口当たり、複雑な酸味、チョコレートとレーズンのマリアージュは、まさに一度味わったら忘れられない風味でした。ジャン・ポール・エヴァン曰く「あまりパネットーネはファンではないけれど、これは特別かも」。MOFパティシエのローラン・デュシェーヌも「フランス人には作り出せない。僕らが作るとどうあがいてもブリオッシュに近い味わいになってしまう。今年のクリスマスには取り寄せて、販売することに決めた」という絶賛振り。私もこっそり一切れ持ち帰ってきた、今までに味わったことのない上品な味わいでした。パネットーネというのは、はねっかえり娘のようなふくよかで弾けるような美味しさが魅力だと思っていたのですが、今回の彼の作るパネットーネは落ち着いて上質で上品。熟成された深みのある味わいで、古いヴィンテージの赤ワインとの相性も良いと思います。ネット販売、あるいは、デュシェーヌのお店でクリスマス期間に購入できることは確かですので、機会のある方は試されて欲しいと思いました。

ところで、この会では、それぞれのパティシエさんがクリエーションを発表されていますから、右から左まで味わい尽くすことは叶いませんでしたが、各人の個性が表れた、珠玉のクリスマスケーキばかりでした。そんな中、デュシェーヌの奥さまの京子さんと長話。そして、デュシェーヌがお店をオープンされて今年の11月で20周年になるということを知って、感慨ひとしきりでした。ルレ・デセールが40年なら、その半分の20年という節目。11月には何かしらのお祝い事をするというので、その時にまた、思うことを綴りたいと思うのですが、彼女が「偶然に導かれてここまできた」という言葉を、反芻しています。オープニングスタッフとして人手がおらず2人で開店。まさかデュシェーヌと結婚することになるかとは思わず、将来地元九州の鹿児島でお店を開くという夢から、デュシェーヌとともに店を経営するという人生を歩むことになった。今や2人で3つの店舗、工房を郊外に構えて、一歩一歩慎重に進んできた、お二人の地道なあゆみを、心から祝福したいと思います。11月にオープンしたあとの年明けに、取材にうかがった、お二人の姿を今でも覚えています。クリスマスの間は一睡もすることができなかった、怒涛のような毎日だった、と。華やかな世界の下には、血の滲むようような努力の積み重ねがある。一方、9月のプレス発表は華やかで、蝶のように舞う記者やブロガーたちの姿もある。職人とプレスの共存はもちろん大切ですが、職人さんとの会話から、視野を広げるための学ぶ機会にしたい、自身の鍛錬をも見直し、フィールドを広げるありがたい機会としたいと、思う今日この頃です。


今週のトピックスは今週のひとことのあとに掲載されています。どうぞご笑覧ください。【A】チョコレートメーカー「ヴァローナ」社の新製品、カカオ豆のフレッシュジュース。【B】イギリスでも人気のコンセプト、新しい料理番組、「Snack Masters」。【C】「Top Chef2021」の優勝者が期間限定でパラスホテル「La Reserve Paris」のシェフに。【D】ティエリー・マルクス、改めてサイエンス料理提供の挑戦。【E】第1回「Prix du Resto digital de l’année/デジタル・レストラン・イヤー」アワード、12月に発表。

ここから先は

2,992字
食関係者にとどまらない多くの方々の豊かな発想の源となるような、最新の食ニュースをフランスから抜粋してお届けします。

フランスを中心にした旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。有名シェフやホテル・レストラン・食品業界、流行のフードスタイル、フラ…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?