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フランスから、食関連ニュース 2020.02.18
フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。
1. 今週の一言
私立のグランゼコールESSECビジネススクール出身の友人が何人かいますが、大企業に勤めるというより、それぞれが独自のユニークなビジネスを生み出している人が多い。既存のアイディアから離れて、チャレンジする若者が多いと感じます。そんな中でも今注目の人はジャン・バティスト・マルティノンさん24歳。昨年Baba au runという会社を立ち上げています。在学中、友人たちと一緒に自家製の自転車のような乗り物を作り、アメリカ大陸を横断もした、心がもともとの冒険家。マラソンが趣味でお菓子が好き。たまたま友人の誕生日にパリの街を走ってお菓子を届けたという経験から、この2つを結びつけた事業ができないかと思い立ったそう。立ち上げたBaba au runは、パティスリーを、何とランニングでお届けするというもの。セバスチャン・ゴダールのババ・オ・ラム(ブリオッシュ生地にラム酒のシロップを浸したもの)をデリバリーする挑戦から始まったのと、初心を忘れない言葉遊びでBaba au runという名前に会社を命名したそうです。インスタグラムかフェイスブックからジャン・バティストさんに連絡を取って注文。金額には定額はなく、お客がその心持ちで支払いをする。簡便なデリバリーに対するマニフェストでもあり、パートナーシップを結ぶパリのブランジュリー・パティスリーも増え始めています。また、売れ残りに対するソリューションも提案。マラソンを愛する、Baba au runの「ランナー」になりたいという候補者をチームにして、提携しているお店の売れ残りを預かり、困っている人々にランニングをしながら配るというものです。こちらはBonne Action en Basket(スニーカーで社会奉仕)でBABAチームに。BABAランナーとしては、相手が誰であっても挨拶ができる人、自分の名前を名乗り、積極的に会話もできる、強制はせずに助けたいことを伝えて、お菓子を渡すことができる心のある人であることを求めるということ。
ランニングのプロですし、運んでいただけるお菓子はエクレアやババなどなので、崩れてしまうということはないそうですが、車などのデリバリーに比べると、時間がかかるのは必至。時間よりも人々のつながりを大切にしたいというジャン・バティストさんの心が、いろいろなことが簡便になりつつある世の中に響いているようです。流れとして当然ですが、パティスリーのオリジンをその足で遡るというアイディアにも発展。「パリ・ブレスト(リング状のシュークリーム)」を、ブレスト市役所にまで、何日もかけ、途中は町々の家に宿泊の無心しながら、自転車で届けるという挑戦も達成。インスタグラムなどでも発信もして、ネットワークを広げているという手段も今らしい試みだと思います。
私自身、渡仏したばかりのころ、地方の銘菓に興味を持って、たずね歩き、それが本になったことがありましたが、自分だけの経験として囲い込むのではなく、きちんとビジネスを成り立たせながら、人々をリアルに幸せにできることが、今の時代に求められていることではないかと、Baba au runのいく末はどこにあるのかと考えながら、そのあり方から学んでいます。
2. 今週のトピックス 【A】マルク・ヴェイラ氏、ミシュラン・ガイドへの訴訟を取り下げる。【B】ノーショー対応の予約ソリューションサイトの攻防。【C】ワイン専門店「ラヴィニア」、スピリッツ販売の新しい試み 【D】公正取引による「フランス産有機栽培農産物」ラベル開始。
2. 今週のトピックス
【A】マルク・ヴェイラ氏、ミシュラン・ガイドへの訴訟を取り下げる。
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美食大国フランスから。週刊食関連ニュース
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