和食材の楽しみ@美食の都パリ・フランス フランスの週刊フードニュース 2022.04.11
今週のひとこと
和のエスプリがフランスの料理界において、日々浸透していることを感じる今日この頃です。時には我々の既成概念を崩してくるような、驚くような発想や挑戦もある。ここ20年くらいの日仏の交流を振り返り、日本の技術や素材、あるいは食卓の楽しみとして、フランスのガストロミーのなくてはならない一部となっていることを見れば、感慨深いものです。
薬膳料理を通して、フランスのシェフの教育をしている友人で、「和洋」という道場を運営するEmilie Félixは、数年前からELOIRグループ(フランスを本拠地とするケータリングや給食サービスの受託を行う多国籍企業)の仕事を請け負っています。昨秋、子供たちの給食から病院食までを作成する料理人に向けた、内部観覧用の本「Voyage en Asie」が出版されましたが、Emilieはその本の監修人として、東洋の食に対するアプローチを伝えながら、レシピを提案しています。
フランス国民の健康を食や食産業から、ということは国もEGalim法などを通してあらゆる試みに取り組んでいますが、特に子供たちの給食の充実も、大切な1つだったかと思います。その給食のために、日本の薬膳にスポットライトが当たるというのも、日本の食文化に求められる局面が、だいぶ変化してきた、深まってきたとも読み取れるかと思います。
パリの食材店としてシェフからの絶大なる信頼を得ていた「ワークショップ・イセ」のオーナーでらした故黒田利朗さんが、国と国の交流は、まず「モノ」から。「モノ」が浸透するうちにマリアージュが発生して、深い心の交流へと到達する。時間はかかるけれど、まずは物販から始めるのだとおっしゃっていたのを思い出しました。
それを考えると、すでに「モノ」を行き来させるビジネスの段階から、四季や健康を意識した和食への、時代からの希求というものが追い風となって、深い繋がりを生むところまで、急速なスピードで進化しているのではないかと思わされます。
Emilieと一緒に仕事をし、レシピを実現する役割を担うのは日本人の料理人Naoさん。デュカスグループにも帰属するフレンチの料理人です。Emilieが春の宴にと「仔牛」のディナーを親しい友人を招いてディナーを開催し、Naoさんが料理を作りました。「テット・ドゥ・ヴォ(仔牛の頭)」のゼリー寄せにはマスタードを乗せて香味と、ネギを添え、また仔牛の尾は、昆布の出汁がほのかにきいたおでん仕立ての中に。抹茶のデザートは、抹茶風味のムースにイチゴのジュレ、さらにバジルの風味を隠していました。
日仏のエスプリと技術と、美味しさを追求する心、味わう人を楽しませたいと思う心とがちりばめられていて、素晴らしいひととき。繊細で絶妙な味わいに、フランス人の会食者も絶賛していました。
日本人の料理人が作る、フレンチの魅力にも、特別な意義があるのではないかと思いました。奇想天外な発想からではなく、地に足のついた素材の活かし方というものが、これからはフランスの方々にとってのサプライズにつながるのではないかと思います。
今週のトピックス
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