はじめてのお酒
入学早々飲みに行く
寮の先輩、同室の織田さんが飲みに出るという。一緒に行こうと誘われた。しかし、こちらは未成年である。誘ってる先輩も1学年上なので、未成年のはずである。当時は飲酒に対して大らかだったので、まぁ気にしない事にしたし、だいいち興味が勝った。
途中でラーメン屋さんに寄って腹を満たした。居酒屋さんにも行ってみたかったが、予算が足りないらしかった。奢ってくれる先輩に従った。温泉街には歩いて行った。
湯田温泉は、ちょっと変わった繁華街である。観光客向けの飲食店ばかりでなく、地元のお客さんもこの温泉街を利用するのだ。同じ店で観光客と地元客が混在していた。
スナックデビュー
今から考えると、あれをスナックデビューと言っていいのかわからない。そこは「学生スナック」だったのだ。ママさんがいる店とはだいぶ違う。
場末の小さな雑居ビル、異常に急な狭い階段を上っていく。酔って転んだらひとたまりもないだろう。何年か後、友達が転がり落ちたのは、また別の話。
ドアを開けると、アルコールや香水が混ざった独特の匂いが鼻をついた。加えて、煙草の煙と匂いが充満していた。先輩に促されるまま、カウンター席に座った。学生アルバイトの男の子や女の子が楽しそうに働いている。お客さんは、とてもバラエティーに富んでいた。社会人らしき人、わたし達と同じ学生風の女の子に男の子、中年の男女、皆楽しそうに飲んでいた。
実は皆、先輩の知り合いだった
おもむろに、織田さんは皆に挨拶し始めた。驚いた。そこで飲んでいた様々な人達のほとんどは、皆顔見知りだったのだ。「常連客」という存在を初めて知った。実は、この時知り合った人達と現在も付き合いがある。
「織田」というプレートが掛けられたお酒が目の前に出された。ボトルキープというものらしい。初めてだらけで、目を白黒させながらキョロキョロしてたのを良く覚えている。その様が可愛らしく見えた様で、皆に大いに笑われた。
そして、この日を境に「常連客」に加わっていく。何しろそこは、ボトルキープさえあれば、ひとり500円という激安店だったのだ。