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思い込みや反応の理由
私は、小さな子どもが苦手だった。
嫌いなのではない。
可愛いと感じている。
でも、どう扱ったらいいのか分からない。壊れ物注意、といった感覚がある。
友だちの赤ちゃんや、従兄弟の赤ちゃんを抱っこさせてもらう機会があった時。
いや、私から抱かせてと言ったわけではない。
座っている私の膝の上に、赤ちゃんを、ぽんと乗せられたのだ。
私は、どの位の力加減でどう抱っこしたらいいのか、全くわからなくてめちゃくちゃ緊張した。
そうしたら、赤ちゃんにその緊張がもろに伝わってしまったのか。
赤ちゃんは、私の腕の中で、漏れなく石像のようにカチンコチンに固まってしまった。
可愛い愛しいとは感じてるから、それもちゃんと伝わっているのだろう。
赤ちゃんは嫌がったり泣いたりはしない。
でも、カチーンと固まってしまう。
赤ちゃんとは、それほどすごい能力を持っている。
大人の心を察知して、それを習得してしまうのだ。
友だちも従兄弟も、石像になった赤ちゃんを、苦笑しながら私の腕から連れ戻した(笑)
大人になっても、自分が小さな頃に大人から習得してしまった、様々なものが残っていて、時に悪さをしてくるときがある。
ここまで書いて、友だちと従兄弟の赤ちゃんが、私の変な緊張を習得していない事を祈りまくる気持ちで一杯になっている。
私が赤ちゃんに対して、大きな緊張感を抱くのには、理由がある。
私の弟は、結構な未熟児で産まれた。
しかもその時、産院の保育器が満杯で、生き長らえないかもしれないと言われながら、子どもを6人育てたお祖母ちゃんが連れて帰って、細心の注意をはらいながら、なんとか普通の大きさになるまで世話をしたという経緯がある。
全く記憶にはないけれど、多分小さなお姉ちゃんは、産まれたばかりの弟を、長い間抱っこさせてもらえなかったのだろう。
周りの大人の話を聞きながら、
赤ちゃんは、生きるか死ぬかの脆い存在なんだと、その時、脳裏に刻み込まれたのかもしれない。
私の記憶にある弟の姿は、ハイハイするようになってからのものだ。
赤ちゃんを可愛らしく思うのに、何故こんなに緊張するのかずっと不思議だったけれど、
幼い頃聞いた大人の一言が、シュッと子どもの心に入ってしまうという法則を見つけてから、あっけなくこの謎が解けた。
そういう事は、このケース以外にもたくさん、本当にたくさんある。
多くは両親から。
そして、物心つく前に、幼稚園や学校の教育という場で、多くの大人の都合を叩き込まれる。
早食いによる胃もたれに悩んでいる人の多くは、
時間内に早く食べろ
と言われ続けた給食で、早食いが良いものだと叩き込まれてきたのかもしれない。
大人の、どの言葉が入ってくるのかは人によって違うから、同じクラスに居ても、早食いにはならない人も居る。
子どもの頃その子は、それでたくさん嫌な思いをしてきたかもしれないが、大人になって胃もたれに悩むことは無いかもしれない。
自分に、周りの大人たちのどんな言葉が入り込んでいて、どんな言葉は入らなかったのか。
自分ひとりで考えていてもサッパリなかなか分からないけれど、誰かと自分との違いを見つけたところから、そんな
自分の中に知らず知らずに入り込んでいた、周りの大人たちの言葉
が浮き彫りになることがある。
そんな時、すかさずそれを見つけて、丁寧に意識の上にすくい上げることが出来れば、
自分の不思議な反応や思い込みの原因が、紐解けることがあると思った。