救国シンクタンク第二回懸賞論文 小松田さん、仁科さん佳作2作品 ご紹介と感想 R5.5.11
減税の仲間が佳作に選ばれ、また、私の論文にも感想を送ってくださる方がいました。あらためて私もお二人の作品を読み込み、ご紹介を兼ねて僭越ながら概要としてまとめ、感想を残したいと思いました。これをきっかけに、多くの方に、本論文に触れていただければ幸いです。
救国シンクタンクの懸賞論文は、論文の形式であればもちろん言うことないのですが、けしてそのような形式になっていなくても書いてみる、出してみる、チャレンジ精神が発揮できる機会です。
今回のお題は、行政評価条例アイディア、でした。審査委員長は渡瀬裕哉研究員でした。誰も送って来ないんじゃないか?と思われたそうです笑 それで途中から上山信一著『行政評価の時代』感想文でもよい、ということになりました。
小松田泰載さん 「本物の行政評価で世界水準の地方自治体へ ~手続主義から顧客志向への転換~」
論文のPDFはこちらです。
小松田さんは、札幌減税会 @@sapporogenzei の中の人です。札幌市の600近くある事務事業評価シートを全部読んだ、というスゴイ人です。
上田信一著『行政評価の時代』を読み、構想がどんどん広がったそうです。
論文では、国内と札幌の実態を考察し、外国の事例を紹介、最後に自国にどう生かしていくか、という流れになっています。
札幌市の実態から
総務省の資料から、地方自治体の行政評価への取り組みは前向きなことが分かる、ということは明るい知らせでした。
しかし、札幌市の行政評価の課題はおそらく、どの自治体にもアルアルなことではないかと思います。
ひとつのシートに複数の事業が含まれている。
結果の事実を評価と勘違いしている。
成果が不明確なのにABC判定している。
これでは、評価を事業にフィードバックすることができない。
なので、評価することの意味をあらためて問わなければならなくなっています。それでも、分かり易い行政評価シートを試行錯誤して作り上げていくことは、住民にとっても必要な事です。
札幌市の「行政評価委員会」の研究
「自治体の外部評価―事業を見直すための行政評価の活用策」 (2010,学陽書房)の著者 小島卓弥氏が札幌市の「アクションプラン」について調査した結果と考察が面白かった。
つまるところ、行政の施策の遂行に行政評価が組み込まれていないし、コスト削減は、事業の廃止・削減につながることなのでやる気が無い。改革が必要と思っても、組合や議会からの突き上げを恐れ、人事異動までとりあえず過ごせればよい、といった考えになってしまう。役所の事なかれ主義がさく裂ですね笑
これでは評価が形骸化するのも無理はない。ただ、「行政評価委員会」を設けている、という点は一筋の光明です。
外国の事例から
上山信一氏の著書からの学びが紹介されています。
アメリカのGRPA法はスゴイ!ぜひ、論文で確認していただきたいです。
沿岸警備隊が旅客船の海難事故で死者数減率を目標値に設定する、といった、納税者にとって関心が高く、有益な指標を設定することが義務付けられている法律です。こんな法律なら大歓迎です!笑
やはり、行政評価によって情報が開示され、住民に伝わり、議会でも利用されることは成功の秘訣ですね。
そして特筆すべきは、
行政監視院(General Accounting Office :GAO)の存在 です。
日本の会計検査院は中立的、GAOは議会の下僕、という立ち位置の違いがあります。
GAOのような役割を、事務事業評価シートで担えれば、日本における地方自治体にもよい効果が得られそうですね!
イギリス、サッチャー政権での事例も書かれています。公務員の公務を縛る規制は大事ですね!笑
モデル条例提案と国民ができること
札幌市の条例として提案されています。
とても分かり易く、なるほど!というポイントばかりです。
後述する仁科さんの提案にも共通するところ多々あります。
やはり、必須項目、ということだと思います。
国民ができることは、まさに減税アクティビストとしてできることでした。すでに行動されている方々にはあらためて腑に落ち、また勇気が出ることと思います。ぜひ論文でご確認ください。
感想
パカさん(小松田さん)の「おわりに」には、渡瀬裕哉さんの著書を読んでから今日までの行動と心の変化、そして決意がしたためてあります。真面目な納税者が、行政に裏切られたような気持ちが、吐き気、という症状になったのでしょう。外部評価機関の必要性を強く感じ、実行に移す行動力はその本気を伝えています。わたしも、その気持ちがよく分かります。
素晴らしい論文をありがとうございました!
仁科英男さん「解決されない課題と共存しつつ、行政評価を前に進めるための提案 -住民と議会に期待して-」
論文のPDFはコチラです。
役所の評価疲れ
役所の評価疲れ、という言葉が印象的でした。
先行研究に、役所の行政評価について書かれたものがあるんですね!
京都大学と京都府立大学の調査結果を例として述べられています。
神奈川県大和市、もその事例のひとつでした。
大和市減税会さんにお伝えしなくちゃ!笑
評価疲れ、の理由の二つはこれです。
・やりがいが感じられなく、事務量ばかり多い評価作業には徒労感を感じる ・「評価疲れ」を低減するためには、「評価が利用されない」課題を解決することが重要
一瞬、甘ったれるんじゃないわよ!仕事でしょ?と言いたくなりましたが。。。笑
評価が利用されない、というのは有権者に突きつけられた課題、だとも思います。
このような「作業」によって埋められた評価、では、なんのために評価するのか分からなくなり、結果的に活用されることもない。。。という負の循環になってしまいます。
評価の囲い込み
これは、西出氏の先行研究(「政策はなぜ検証できないのか」 西出順郎 2020 ただし、国の政策評価を対象に行っている。)からの用語です。評価疲れから、「作為的評価行動」による、結果ありきの評価(「評価の囲い込み」)になってしまい、政策評価法の目的である、”評価を事業に反映する”に反した”評価の活用”が行われることと なってしまう、
ということなのです。これでは、いくら評価シートとして体裁を整えていても、行政評価の目的とは逆効果になってしまいます。
仁科氏の論文では、地方自治体でもこのような作為的評価行動が行われている可能性を仮定し、3都市(静岡市、豊橋市、大和市)の判定結果を考察しています。仁科氏の結論は、行われている、と断じています。
東京都はEBPMで政策評価しているそうですが、東京都事業から、2事例(スポーツ TOKYO インフォメーション、後発医薬品使用促進事業)によって、作為的評価が行われていることを論じています。
モデル条例への提案
以上の点をふまえて、仏作って魂入れず、ではなく、せめて良い仏をつくろうよ、という視点からの提案がなされています。
提案1 評価作業を評価することに専念する外部専門家委員会の設置
事業の良しあしではなく、評価ポイントを評価するというアイデア。
提案2 良い評価作業を行った部門・職員を評価する仕組みづくり
よい評価作業を行った職員、部門について、役所内の出世には関与できないが、表彰を外部団体でする。
提案3 事業の評価シート原案を議会に提示し、意見を聴取
「評価の囲い込み」を防ぐため、事業実施前に利害関係のない議員にアイデアを相談する
提案4 事業の対象となる住民から一定数を無作為抽出して、評価シート原案について意見を聴取
事業実施前に事業外部の住民の意見をきく。パブコメは外部からの意見がほとんど入らない。
そして、最後に、条例試案 として提案されています。
感想
行政評価の先行研究をみると、色んな用語があるんだなぁと思いました。そして、役所の職員は「人間」であり、税金で公的な仕事をする場合のモーチベーションが出世であり、事業を継続すること、増やすことであって、無くすことではないなら、政策評価を都合よく取り繕いたい気持ちになるのも無理はないと思います。
表彰することは、有権者でもできるなと思いました。茨城県那珂市の職員さんに感謝状を贈ったりしてもいいのかもしれませんね。
仁科さんのアイデアは、職員の気持ちをくみつつ、どうやったら実践的な評価になるのかを考えられたんだと思います。そして、やはり評価する団体を外部に作ることが提案されているな、と思いました。
素晴らしい論文、ありがとうございました。
さいごに
お二人の提案共通点として、特に印象に残ったこと。
それは、 外部評価機関が必要だ、ということと、頑張った職員を褒める、ということでした。行政も人間のすることですからね笑
そして、地元を愛する気持ち、税金を効果的に使ってほしい願い、
日本を良くしたい希望がひしひしと伝わりました。
他人は変えられない。変えられるのは自分だけ。
自分の意識を変え、言葉を変え、やり方を変えることで、他者も、社会も変わっていくのだと思います。
焦ることはありません。楽しくできることを淡々と続けていきましょう。
減税と規制改革、行政評価拡大の草の根運動はまだ始まったばかりなのですから。
減税あやさん💛
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