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地域の自主性及び自立を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(第13次地方分権一括法)✨R5.3.6

(1)法律の背景


内閣府が所管する法律である。この法律案の名前でググると、H23年法律第105号が出てくる。この概要には、タイトルが略されていて「第二次一括法」とある。
 あらためて今回調査する「地域の自主性及び自立を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」とは、
第二次地方分権改革として2007年4月に発足した地方分権改革推進委員会の勧告に基づき、「あること」が定められた法律である。
 その「あること」とは、
 国から地方自治体への移譲する権限や、国が自治体に義務付けていた事務処理を廃止するための関連法がたくさんあり、これらを

ひとくくりにまとめて(一括して)改正することを定めた法律、別名 地方分権一括法 という。

第二次地方分権改革で定められた一括法なので、「第二次(地方分権)一括法」※と呼ばれている。
※つまり、第一次(地方分権)一括法がある。また、同じ「地方分権一括法」という言葉が、第一次地方分権改革で成立した
「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(平成11年法律第87号)を意味する場合もある、というからややこしい。

H23年の法律をもとに、法律の構造から説明し、整理しようと思う。

(2)法律の意味するところと構造


「法律」という言葉が入り乱れていて混乱しそうになるが、整理すると、
A : 法律類を一括して改正する法律
法律類、というのは、政令、省令、訓示など、国会審議を経る必要のない命令を含むからである。
a1~an:  一括されて改正される法律群

がある、ということだ。
表題の法律は、Aであり、
一括されて改正される法律a1~an が更新されるたびに、
その法律Aとして提出される。

つまり、AはH23年に制定された法律であるが、a1~anの中味を変えたものとして、今国会でAとして(一括して)提出されている、という意味になる。

今国会で審議される法律は、令和3年度令和4年度閣議決定された中から抽出された法律であり、今国会では以下のものが対象となった。

(3)第13次地方分権一括法案(閣議決定 R5.3.3)

内閣府HPにアップされた同法案のトップページはコチラを。

トップページにある、概要、はポンチ絵などを駆使し、文字だけの法案よりも分かり易く表現されているので、法律案を読みなれていない国民でもとっつき易くなっています。ご興味のある方は一度、見てみるのもよいかもしれません。

今回は7法案について、義務付け、枠づけの見直しがありました。
ここで、義務付けと枠づけの違い、ですが、論考にこのような説明がありました。

義務付けは「自治体に一定の活動を義務付ける規制」、枠付けは「自治体の活動について手続きや判断基準を枠付ける」という違いがある。

~改革論議を巡る通説の再考~  東京財団研究員兼政策プロデューサー 三原 岳   

7法案は以下のような変更がありました。

1 罹災証明書の交付に必要な被害認定調査において固定資産課税台帳等の利用を可能とする。(災害対策基本法)


  いままでは、住居に災害被害の認定に、住居の図面などの情報が必要で、それは固定資産課税台帳を見なければならなかった。しかしその台帳が秘密情報扱いだったため、罹災証明に時間がかかっていたのが、今回の法律改正により台帳が利用できるようになるのでスピードアップされる。

2 市町村交通安全計画等の作成に係る努力義務規定を「できる」規定に見直す。(交通安全対策基本法)


  
いままでは、市区町村に安全計画を(努力義務、とはいえ)作成しなければならず、また都道府県の計画と重複することもある。計画の必要ない市区町村には負担だった。今回の改正である「できる」規定、により、計画の要否を地域の実情に応じて判断「できる」ようになり、計画することではなく、交通安全対策そのものを充実させることが「できる」ようになる。

3 指定都市等における認定こども園※の認定等に係る都道府県への事前協議を見直す。(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律)


  
いままでは、指定都市(いわゆる政令市、および中核都市)が認定こども園※の認定のために、都道府県との事前協議に加えて、都道府県に申請書類を送付するという手続きの重複があったが、事前に通知するだけになる。
   ※認定こども園 とは 教育・保育を一体的に行う施設で、いわば幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持っている施設。以下の機能を備え、認定基準を満たす施設は、都道府県等から認定を受ける

4  不動産登記法、農地法、森林法、所有者不明土地法等に基づく事務について、住民基本台帳ネットワークシステムの利用を可能にする。(住民基本台帳法)


  
いままでは、所有者が不明の土地の所有者現住所などを特定するために、住民票の写し等を取るため、公用請求や申請書添付などが必要だったが、今回の改正で住基ネットが利用できるようになり、公用請求や住民票写し添付が不要で、事務手続きが効率化し、軽減する。

5 公立大学法人における年度計画等を廃止する。(地方独立行政法人法)


 いままでは、毎年の年度計画や年度評価が廃止になり、6年間ごとに2回評価になった。公立大学の事務負担が軽減され、本来の役割に注力できる。(国立大学ではすでに令和4年4月廃止)
 

6  戸籍証明書等の広域交付について、公用請求を行う市町村による利用を可能にする。(戸籍法)


(この法案だけが令和3年閣議決定p25 参照)
  いままでは、例えば空き家の所有者の特定をするとき、戸籍謄本を、本籍地の市町村へ公用請求していたが、郵送でやりとりするため一か月かかっていた。これが、戸籍情報連携システム(R5年度末稼働予定)利用による情報取得が可能になる。
 

7 建築主事の任用に必要な建築基準適合判定資格者検定の受験資格を見直す。(建築基準法)


 
いままでは、同検定の受験資格として、一級建築士試験に合格している、実務経験が2年、が必要だった。そのため、行政職員の建築関係事務の担い手不足などが生じていた。今回の改正により、実務経験がなくてもよい、二級でもよい、となり、建築関係事務の担い手が増え、建築主事※も早期に任命できるようになる。
※建築物の審査確認・検査などを行う公務員のこと

(4)個人の意見


  (3)を読むと、法律の改正により、すべてが、国から自治体へ権限(規制を施行したり、条例を制定したりする権限)を譲る話であること、文書がインターネットになる。手続きを廃止するなど簡便化することであり、規制緩和につながるので賛成ではある。
 しかし、もっと根本的な話として、一般国民が率直に思った心の声は、以下のようになる。
〇勿体ぶらずにさっさとやれないのかな?
〇いちいちちっちゃい?項目で「可能にする」とか、国はなんて偉そうなんだろう。
〇「これは可能、許す」というポジティブリストではなく、「これだけはダメ(あとは自由)」といった、ネガティブリストにできないのか。
〇国は規制の数も把握していないし、毎日一個規制が増えている状態なので、この権限移譲、規制緩和は、地方分権改革の名のもとに永遠に続くのではないかな。

以上のような感想ではあるが、それでも規制緩和される内容を読むと、今までできなかったことが少しずつできるようになっていることが感じられるのは嬉しいし、一般国民にも役に立つことがあるかもしれない。

 まさに私自身がつい先日、戸籍謄本を取ろうとしたとき、現在の住まいの自治体からリモートでは取れず、戸籍謄本を登録してある自治体まで出向いていかなければならなかった。マイナンバーも普及してきており、本人確認ができれば日本全国どこからでも取れそうなものなのに、と思った。もしかすると令和6年度あたりからはそれも可能になるのかもしれない。

(5)補足調査、説明

地方自治体で、権限がない、規制があって自治が困難を来たしている、などの場合に、内閣府の提案方式によって地方自治体から権限移譲や規制廃止の提案を受け付けるシステムになっている。

提案は、4月~6月に募集され、12月末までにどのような対応になるか、回答があるそうだ。
また、どのような提案が、いつ、どの自治体から、何件出て、それがどう処理されたかが、エクセルによって一覧表になっている。

所管省庁別に表がPDFになっているのはこちら。

権限移譲や規制廃止の提案は、この制度だけでなく、所管する省庁から提案されることも無くはないそうだ。
また、権限移譲された事務が都道府県で実施された場合に交付金があるかどうかは、各都道府県にきいてほしい、ということだった。

(6)もしも、自分が国会議員だったら質問してみたいこと

【質問①】地域主権戦略の一環として、第二次一括法案がH23年に制定され、25年までのロードマップが示されているが、その後の戦略目標は示されていない。法案名が示すように、権限移譲と規制の廃止により、地方が自主自立した自治体として発展することが地方分権改革の本来の主旨だが、具体的に今後何年までに、現在政府が所管している権限の約何%を地方自治体に移譲する、などのような具体的な数値目標があれば教えていただきたい。
【質問②】①と同様に、政府が所管する規制の約何%を廃止する、などの具体的な数値目標があれば教えていただきたい。(政府に、規制の総数を把握していないので、、、と言わせたい笑)
【質問③】地域主権戦略大綱(概要)によれば、地方税財源の充実確保が、戦略項目のひとつとなっている。地方分権のお手本であるアメリカでは各州州ごとに税制が決められる。税率の決定を地方自治体に任せることこそが地方分権改革の肝だと考えるが、政府の考えをお聞かせください。
【質問④】地域主権戦略大綱(概要)によれば、道州制についても検討事項に上がっていたようだが、行政制度であるもうひとつの、特別市についての記述が見当たらないのでお尋ねしたい。令和4年、神奈川県下の指定都市3市(横浜市、川崎市、相模原市)が特別市の法制化を目指す旨を報道発表している。特別市は一層制であり、これが実現すれば、県から市への権限移譲の負担が一掃され、地方分権がかなり進むと考えるが、政府として特別市の法制化についての見解をお伺いしたい。


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