コロナ時代・新たなる始まり 第4話「ロゴマーク誕生」
✴︎第1話〜6話までは2020年に書いたものを2022年に編集し直しています✴︎
神様はいつも意味あって縁を繋いでいく。ホントにそう思う。昔、青森の「森のイスキア」を主宰していた佐藤初女先生と一緒に食事をしていた時「天川さん、ヒトとヒトの出会いって、凄い時間を経て突然変化していくことがあるの。だから、面白いし大切に育まなきゃいけないのよ」と話してくれたことがある。今でも、ふと初女先生の優しい笑顔と共に、その言葉を思い出すことがある。
お店はこれまでの人間関係、そして新たに結ばれた人間関係で出来上がっている。
二つの物件を契約した5月。そして、6月、オープンを決めた7月まで、ほとんど記憶が飛んでしまうほど忙しかったが、新たな出会いが広がっていくのは楽しくもあった。
チョコレート屋は準備することが山ほどあった。まずは商品のラインナップを考え、オーガニックチョコレート会社を片っ端から調べててみた。取引先に選んだ会社は、どこか私たちの会社と共通の理念を持っているところばかり、人間味を感じ担当者と親しくなれそうなところをばかりを選んだ。
珈琲に関しては、これまで付き合いがあるスペシャルティ珈琲の商社はもちろんのこと、海外の珈琲農園に連絡を取ってみたりもしてみた。調べてみたり、キリがないほど調べることやコンタクトを取ることが沢山あった。
更に契約した物件は、かなりの手直しの必要があり、当初の予算より大幅にオーバーしていた。
またお店のシンボルマークとなるハミングバードのロゴも制作する必要があった。友人知人の中に何人かグラフィックデザイナーはいるのが、このハミングバードのロゴを生み出してくれる人は、これまで会ったことが無い人だと直感的に思っていた。
ワタシはFacebookに投稿する人の中で、グラフィックデザイナーにタグ付けして投稿している人に目星をつけ、片っ端から探して見てみた。そして海野陽子さんという方を見つけ出し、連絡を取ることにした。
提示されたロゴマーク代は、私たちにすると決して安い金額ではなかった。が「この金額は、この店に対する覚悟の金額です。でもこのロゴにして良かったと思っていただけるものを作り出します」という言葉を聞いて、海野さんに任せたら間違いない、とも思った。
その直感は大当りだった。想像もしていなかった素晴らしいロゴマークを生み出してくださったのだ。
可愛らしいハミングバードの中に、コーヒー豆とカカオ、そして生産者であるおじさんが手を振っている。
ワタシは生産者の思いまで繋ぎたい、そう思っていたので、このロゴマークを見て素直に感動した。
海野さんからそのデータを受け取った翌日。更に生かす為にも、新しいMacを購入する様言われ、翌日には買いに走った。
5月中旬、店舗の契約をしたとはいえ自粛期間中。日常の買い物すらままならない中で普通に店づくりなどできるはずもなく…当然だがほとんどワタシは家の中で過ごしていた。ただ、家の中であってもひたすらスマホの画面と向き合っていた。早朝から深夜まで、考える→調べる→考える→連絡する→考える→調べる→考える…。と、こんな調子で、多分一日17〜18時間以上はスマホを触っていただろうか。
夫は、なぜノートパソコンを使わないのか不思議がっていた。せめてiPadを使うなど、もう少し大きな画面で仕事をしたらいいのに、と何度も言われたが、ダメなのだ。確かにワタシ自身でも偏屈なところだと自覚しているのだか、使う脳に合わせて選んでいるとでも言えば良いのだろうか。ワタシは、小説などを執筆する時には必ず「ノートパソコン」で書く。外部との接触を遮断して、好きな場所で(概ねカフェだが)でノートパソコンを開き、集中して書かというスタイルだ。20年近く続けている毎週金曜日夜に配信のメルマガを書く時には「会社のパソコン」で書かないと文章が浮かんでこない。
そして、それ以外のほとんどの仕事の連絡や調べもの、発注なども、概ねほとんど「スマホ」で行っている。
要するにコロナ自粛期間中、家族と過ごす時間以外の大多数の時間、スマホを握りしめ2つの店づくりに没頭していたのだ。
早朝から深夜まで、調べては問い合わせ、購入をきめてカード決済をする。半分頭から湯気が出ていたような状態だったが、見た目は壁にもたれかかり、スマホを長時間触って暇つぶしをしている様にも見える姿だが、実際には過酷なほど、店舗作りに集中していたし、ワタシの右手の人差し指は、スマホの触り過ぎで一時期水膨れも出来て痛かった。それほど納得のいく店舗づくりをしたかった。
資金面についても同じだった。せっかく新たに作る店だ。思い切って素敵なものにしたい。
あれこれ計算すると、3月末に融資を受けたお金やコロナによる国や都の経営者補填のお金だけでは到底無理だ。
納得する店舗をつくるには、相当な資金を早急に新たに集めなければならなかった。私は覚悟を決め、信用金庫に設備投資と運転資金の追加融資を申し込んだ。
地元の信用金庫は、事務所を開いた時から長年に渡りワタシの事務所を応援し続けてくれている有り難い存在だ。しかし政策公庫からまとまった融資を受けたばかり。どのような返答が来るかドキドキしていたが、信用金庫の担当者から「応援しましょう」というありがたい回答をもらった。ただし、国の融資の他に、区が金利負担をしてくれる方法もあるので直ぐに区役所に書類申請に行くよう助言を受けた。更に家族や友人からも支援があり、お金のことで心が揺れることはなくなった。
そんな中、私は一つの結論に至った。まずは既に名前が決まっている『ハミングバード』のオープンに意識を集中させよう。その後、ギャラリー店舗のことを考えるで良いではないか。
そう思った途端、気持ちがスーッと楽になった。
ハミングバードで取り扱うもの、システムを含め準備することは、どんどん進んでいったが、いわゆる建物の内装や外装であるハード面は一ヶ月近く一向に進まず…だった。
建物そのものは綺麗なのだが、最も問題だったのが『床』。前にも書いたがオーナーさんのご自宅一階部分の大型ランドクルーザー駐車場だった場所を店舗貸しとした為、床にかなりの傾斜がある。契約前、大家さんからこの傾斜があるので一ヶ月の家賃をサービスするという回答があり、立地も良く建物も綺麗。家賃もサービスしてもらえるならば借りない手はない。そう思って契約したのだが、この傾斜だけはやはり手直ししなければ、平衡感覚がおかしくなり、誰もが居心地の悪い店になってしまうだろう。
床の傾きも、内装も店構えも整えたい。そんな全てを任せることが出来るエキスパートを早急に探さなければ…。
しかしコロナ自粛期間中ということで、業者さんを訪ねて話をすることも出来ず、メールでやりとりしても、何かが通じない。どうにか要望を聞いてもらい見積もりを出してもらっても、目が飛び出るかと思うほど高額だったり、ネット上で何日かけて探してみても、やはりロゴマーク作りの時の海野さんとのような、ピン!とくる業者さんと出会いはなかった。
そんな時、ふと頭に浮かんだのが、すぐ近くに住む木工職人の磯部さんだった。
磯部さんとの出会いは、ホピショップを始めた頃、偶然店の看板を見て立ち寄ってくださったというご縁から始まり、縄文という共通の話題もあり、ご近所の親しい友人なのだ。
彼が木工職人ということは知っている。しかしその仕事ぶりを見たこともなければ、そもそも床の傾斜を直す様な仕事が彼の仕事なのかもわからない。しかし彼の存在が頭に浮かんだということは、何かしらのところで磯部さんは店づくりに関わってくれる人なのではないかと思った。
磯部さんに相談してみると、彼のお姉様である佳世子さんを紹介された。佳世子さんはアンティーク家具の会社と内装の会社を経営されている方だった。
ワタシは佳世子さんの会社を通じて、ハミングバード、そしてギャラリーも内装外装を全面的にお願いすることにした。
実際に工事に取り掛かかってもらったのは、6月中旬に入ってからだった。
問題だった床の工事は、梅雨時期で予定より大幅に時間が伸びてしまった。オープンは7月末と決めていたので少し焦ってしまったが、焦っても仕方がない。完全に乾くまで指折り数えて待った。
その間、佳世子さんとも綿密な打ち合わせを繰り返した。
床が上がったことで、既存のドアが使えなくなり新たなドアが作られることになった。佳世子さんから「理想だと思うドアの写真があれば、探して送って」と言われ、ワタシは絶対に無理だろう…と思いながら、ヨーロッパの街角にあるような可愛いお店の写真をいくつか送ってみた。すると、理想以上に素敵なデザインの店舗図が直ぐに送られてきた。
何とディスプレイスペースまで準備されていた。ワタシが「ドアはチョコレートみたいな細工があると嬉しい」とリクエストすると、それまでちゃんと叶えてくれるというのだ。
それから2週間ほど経って…その店舗図が立体となって目の前に現れてきた。
ワタシは磯部さん姉弟は魔法使いなのではないかとすら思った。
続く…。
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