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コロナ時代・新たなる始まり 第11話「青天の霹靂」

「2021年12月22日から『風の時代』になるよ」と西洋占星術好きな娘たちがよくそんな話をしていた。
なんでも、それまで200年続いていた「地の時代」から、大きく価値観が変わる200年になるのだとか。
ワタシは詳しくはわからないが、天体に影響され世の中の流れが変化するというのは、なんとなくあるのだろうと理解もできる。

200年前「地の時代」の始まりには産業革命があり、以後、目に見える物質や安定、経済や資本主義といったものに価値が置かれる時代が続いていたという。しかし「風の時代」の価値観は、情報やコミュニケーション、知性や個を生かすチカラといったものになるらしい。これまでの組織や団体といったものより、個と個の繋がりが重要視されると聞くと、いよいよ私たちの時代がやって来たのだと嬉しくなる。

そんな「風の時代」の始まりの日。2020年12月22日にワタシは髪の毛をピンク色に変えた。

昔からいつか髪の毛をピンク色にしたいと思っていた。でも髪の毛の色を派手に変えたら、社会生活に様々な支障があるかもしれないと、心のどこかで思っていた。しかし、新たな価値観に移り変わるという、その記念すべき日に思い切って変えるのも悪くない。そう思ってワタシは髪色を変えた。

長引くマスク生活。そして世の中全体が鬱鬱としている中で、髪の色を変えただけで、なんとも楽しくなるものだ。髪の毛の色を変えたら、周囲から「らしいね〜」とよく言われるようになった。確かにピンク色の髪の毛の方が、私らしく感じる。

そして、それまで持っていた自分のこだわりの様なものも不思議なほど無くなっていた。

正直なところ、ワタシの価値観や考え方、仕事の進め方や生き様も含めて、これまで長い間、なかなか一般的には理解してもらうのが難しかった。ワタシの名刺の肩書きは便宜上、作家・プロデューサーとしているが、自分自身では、天川 彩(てんかわあや)というのが職業だと思っている。

でも、髪色を変えたら、そんなことすらどうでも良くなってきた。ワタシはただワタシらしくあれば良いだけなのだ。

気持ちも新たに新たな年を迎え「ハミングバード」では初めてのバレンタインを迎える準備で忙しくなった。
何せ、チョコレート屋にとって、バレンタインは一年で一番のイベントだ。

まずは、お店の外も中もバレンタイン一色にした。

何をどれぐらい準備したら良いのか、未経験で検討もつかなかったが、ただ、自分だったら…どんなものを選ぶか、どんなラッピングだと嬉しいか、などなど考えながら、初バレンタインに挑んだ。



そして「天's SPACE」でも、この時だけは開いてチョコレートを販売していた。

そして、バレンタインが終わった後、いよいよこのスペースをどうするべきか話し合った。
さすがに、ここから先毎回、私たちが企画展をすることは時間的にもエネルギー的にも不可能だ。かと言って、実験的にしてみた「谷根千にゃんこ」も「インディアン雑貨店」もなんだか違う。もちろん、日本の伝承的なものを扱うブティックだって、今は時ではない。

かと言って撤退するには、床や壁の改装やテントを新たにつけたばかりで、既にここに数百万も使っている。

それなら、正式に「貸しギャラリースペース」として『天’s SPACE』の運営をしていこう。
ただ、普通の貸しギャラリーではなく、「世界の平和、人々の幸せに繋がるアート作品展示や販売等に使ってもらうスペース」として、その様な心持ちの人々に利用してもらおう,ということにした。

更に工事金額が加算されたが、壁の上部全面にピクチャーレールを取り付け、照明器具や折り畳みの簡易テーブル、椅子など、貸しギャラリーに必要と思えるものは全て購入し整えた。
更にシステムや料金表なども作り上げ、一ヶ月後には、ホームページも完成した。

完成した貸しギャラリーを近隣の方々にもお知らせしようと、チラシも1万枚刷り上げた。新聞折り込みとポスティング用に準備していたものが一足早く夕方事務所に少し届いたので、刷りたてホヤホヤのチラシをギャラリーのシャッターに貼り、これけら新たな始まりになるな、と思い家に帰った。

翌朝、不動産屋の社長からワタシの携帯に電話がきた。
直ぐに店まで来て欲しいという。
ワタシは何か店にあったのかと思い、慌てて自転車を走らせ天’sSPACEまで向かった。

既にシャッターの前に、不動産屋の社長が待っていたのだが、顔がこわばっている。社長から「シャッターに貸しギャラリーのチラシを貼ったようですが、大家さんから、それは困ると連絡がありました。貸しギャラリーだと、誰が使っているのかわからなく、騒がれたり色々問題が起こりかねない。今までの様にあなたが企画したもので使うか、何かの店舗にするかそれが出来なければ、残念ながら…」という。

まさに、それは青天の霹靂だった。


全てここまで整えたのに…という思いでいっぱいになったが、それよりマズイ!と思った。新聞折り込みは、翌日の予定だったが、ポスティングは、その日の午後にはポスティングセンターに届く手筈になっていた。
チラシが近隣に一万枚配られてしまう前に、全て止めなければ!

不動産屋の社長に、了解した旨と、改めて大家さんに事前に伝えていなかったことをワタシから謝りに行くことを伝え、


直ぐに事務所まで自転車を漕いだ。

そしてギリギリセーフでチラシは廃棄してもらえることになったが、ワタシはその日一日放心状態だった。

…続く。


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