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ポルトガル語の nh [ɲ] 「有声硬口蓋鼻音」

ポルトガル語の nh [ɲ] について、簡単な解説をします。

nh [ɲ] 「有声・硬口蓋・鼻音」(ゆうせい・こうこうがい・びおん)

nh [ɲ] の名称です。
これは私がいつも使っているIPA(国際音声学会)が発明した発音記号とその名称です。
名称というか、「どこをどうすれば発音できるか」という調音点の解説ですね。

硬口蓋という、口の上側の硬いところに舌をつけて、
鼻の空気の通り道を開いて、鼻からも息を出して発音するというものです。

日本語と同じ

nh [ɲ]は、日本語の「ニャ行」と「ニ」と同じ音です。

日本語の「ナ」「ヌ」「ネ」「ノ」は、ポルトガル語のn+母音の[n]の音と同じです。

ということはつまり、ポルトガル語の "ni" と日本語の「ニ」は、別の発音になるということです。

ポルトガル語 ni [ni]
日本語 ニ [ɲi]

日本語と同じ要領でポルトガル語の"ni"の文字列を発音してはいけないのです。
「ナ行はn」と思っていましたが、厳密にいうと、実は違うんですね。

[n]と[ɲ]の違い

[ɲ]と[n]は、舌の場所が少し異なります。
[ɲ]は舌の真ん中あたり、[n]は舌の先を口の上に付けます。

[ɲ]ハンニャ
[n]アンナ

これで舌の当たり具合を調べられます。
ポルトガル語の"ni"を発音するためには、舌の先端のあたりを使って「ニ」と発音する必要があります。
試しに「ナ」と同じ舌(先端)を使いながら「ニ」と発音してみてください。
なんだか外国語の "ni" のような音になりませんか?
「何(なに)」と言ってみると分かりやすいかもしれません。

このように私たちは、日本語を知らぬ間に使い分けています。
ナ行のように、行の中の1文字が違う時もありますし、
前後の音によって変化する場合もあります。
「ン」もそうですよね。
ア行、サ行、ハ行、ヤ行、ワ行の後に来る「ン」は、ポルトガル語の鼻母音と同じ喉の状態になっています。

ポルトガル語と同じ、或いは違うと思って使っていた日本語が、
実は敵になったり味方になったりします。
音声学って、面白いんです。

二重音字

nhは二重音字(にじゅう・おんじ)です。
二重音字とは、特定の文字が並んだとき、それとは関係ない全く新しい別の音が生まれる文字列のことを言います。
nhは「ンハ」ではなく「ニャ」になりますよね。
lhも「ルハ」ではなく「リャ」です。
これらは子音の二重音字ですが、母音の二十音字もあります。
am, em, im, om, um
an, en, in, on, un
これらは全て鼻母音になり、mやnの音を発音してはいけません。
詳しくは二重音字の動画などで解説しています。

nh は「ン」の音はない

nがあるため「ン」と発音するのかと勘違いしそうですが、
nhは二重音字であり、nh 2文字で[ɲ]「ニャ」の音なので、
nの音は読んではいけません。

dinheiro [di ́ɲeiɾu]  「お金」
○ジニェイロ  ×ジンニェイロ

私は子供の頃「ジンニェイロ」に聞こえていました。
そして何の疑いもなく過ごしていましたが、
大人になって音声学の世界に入ってからよくよく見てみると
「ジニェイロ」だったことに気付きました。

歌では注意

nh の文字列で「ン」が入ってしまうと、1拍分多くなってしまうので、
ポルトガル語のリズムが崩れます。
会話ではそこまで問題にならないかもしれませんが、
歌を歌っている方などは注意しましょう。

──発音で、世界は変わる──
✼••┈ A sua professora ┈••✼
꧁愛マリアンジェラ꧂


著書
『日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

電子書籍 (すべてKindle Unlimited対応)
【ブログまとめ本】
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話』
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話2』
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話3』

【ボサノバ発音解説本】
『「イパネマの娘」発音・文法・歌い方解説』

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