サソリの毒
強烈に心を揺さぶられるブランドがイタリアにある。「ABARTH」である。
FIAT500をベースとしているため、日本の軽ほどの大きさしかなく、非常に愛着のある外観である。アバルトが何をしたか。この可愛い車を怪物のごとく早い車に仕立て上げてしまった。罪である。重罪である。
なぜジャイアントキル考でアバルトを紹介するか、それは実際に彼らが「ジャイアントキラー」という異名を持つからである。
自動車にはカルロ・アバルトの誕生月の星座であるサソリのエンブレム(スコルピオーネ)が装着された。「アバルトマジック」とも呼ばれる高度の改造を施された自動車は多くの競技で活躍した。1950年から1960年代にかけて113の国際記録とレースにおいて7400以上の勝利を得、「ジャイアントキラー」「ピッコロモンスター」などの異名も得た。(Wikipedia)
現代にもその魂は生きている。いや、より生命力を増しているかもしれない。
アバルトが価格差5倍の誰もが知るポルシェさんを追い詰めるという狂った動画ではあるが、注目すべきはドライバーの奇声である。
これは間違いなくサソリの毒が回っている証拠だ。とても平常心とは言えない。
ものづくりの話になるが、走る・曲がる・止まるという性能極限まで突き詰める。それ以外はやらん。という戦略そのものがアバルトであると思う。
その潔さがポジショニングとブランディングの両方を高めたように感じる。
「アバルトに乗ると、平常心ではいられなくなる。そのような演出がアバルトにある」あるジャーナリストがこんなことを言っていた。つまりサソリの毒が回るということだ。
ものづくりのメーカーもジャイアントキラーであれば、ユーザーをもジャイアントキラーにしかねない、恐ろしく良い事例であると思う。