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女性社会起業家が見るニューノーマル社会(第1回:Javara)

COVID-19によって激動している今、アジアで活躍する女性社会起業家たちは、ニューノーマル社会をどのように見ているのか。
アジアで約200人の女性社会起業家ネットワークを構築してきたAWSEN(Asian Women Social Entrepreneurs Network)と世界70ヵ国100都市に600人以上の現地在住日本人女性で構成されたライフスタイル・リサーチャー®を保有する株式会社TNCが共催オンラインセミナーをシリーズ開催していく。
7月18日開催の第1回目は、インドネシアを代表する女性社会起業家であるJavara IndonesiaのHelianti Hilman氏をゲストスピーカーにむかえ、現在のインドネシアの状況やマーケットの変化、自社としてコロナ禍をどのように乗り越えながら未来に向かっているのかについて話を聞いた。
そのセミナーでの様子を2回に分けて、ご紹介したい。

0. Javara創業者Helianti Hilman氏とJavaraについて

Javaraは、2008年にHelianti氏が創業している。

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インドネシアの国固有の食材を守っていくため、またこうした食材を育てている農家を守るため、彼女は弁護士という職を辞めて起業することを決意するのである。初めて彼女に会って、創業するときの話をした時に、目に涙を浮かべながら、彼女が助けたいと思った農家の人の話をしてくれたときのことは、忘れられない。「弁護士としてではなく、実業を創ることで直接彼ら(農家)を助けていきたいと思った」と彼女は教えてくれた。
その後、5万軒を超える農家と2000人以上の食品加工の職人たちと連携し、700を超える商品を生み出している。
インドネシアだけでなく、アジアを代表する社会起業家とも呼べるJavaraの創業者であるHelianti氏に、今回はJavaraについて、そしてCOVID-19禍においてJavaraがどのような対応をしてきているのだろうか。

【7月18日開催:AWSEN × TNC オンラインセミナー①】
女性社会起業家が見るニューノーマル社会 〜食・農業編 fromインドネシア〜(第1部)

1. Javaraについて

インドネシアを拠点にし、「食の生物多様性(food diversity)を目指す企業」。インドネシアの忘れられかけていたような固有の食や食材を守りながら、健康で栄養素が高かったり、市場と関係していたり、サプライチェーン全体にインパクトを生み出すような事業を行っている。
Javaraが生み出す価値は、市場に健康で栄養素が高く、美味しい商品を届けるというだけでなく、顧客だけでなく農業従事者にも同様に健康で栄養素の高い食事を届けることや、小規模農家と取引を行っていることから彼らをエンパワメントしていることにもつながっていたり、サプライチェーン全体にもインパクトを与えている。
Javaraでは非常に多くの食材を扱っているが、インドネシアは非常に豊かな食の生物多様性が存在している場所であるということが原点となっている。たくさんの食材が忘れられたり、市場から取り残されてしまうことは、非常に残念なことであることに加えて、健康的な食というグローバルなトレンドを考えると、こうした食材は非常に大切であると考えた。
こうしたことから、2008年に会社を立ち上げ、オーガニックで食の生物多様性を大切にする商品を、インドネシアの農村からグローバル市場に届ける事業をしている。現在、約700商品を取り扱っており、約300商品はアメリカ・欧州・日本のオーガニック認証を取得し、世界5大陸24カ国に商品を輸出している。(702商品、312商品がオーガニック認証取得、175商品がハラル認証を取得)

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2. COVID-19禍におけるJavaraの対応

COVID-19によるこの5ヶ月は、ジェットコースターのように感じている。自分たちの事業の持続性だけでなく、顧客や取引先などの事業の持続性ということも含めて考えながら、多くのことを再調整しなくてはならなかった。

COVID-19に対応するために、主に4つの対応をJavaraとしては考え対応してきている。
まず、絶対的に「安全性が第一」であること。従業員、お客様、取引先に対して、安全性を確保することを第一に考えた。次に「商品のイノベーション」である。コロナ禍の今は、より早くイノベーティブな対応や商品や求められているという非常に特異なタイミングでもあり、既にあった商品のマーケティング方法を再検討したり、ロックダウンの状況下ですぐに食べれたり料理できたりするように商品を用意したりした。そして「市場アウトリーチ」。コロナ禍の前に既にマーケットの最適化というのは考えていたが、オフラインでの販売が主軸であったこともあり、いつも計画よりも遅れていたりしていたのが実情だった。これは最後の「デジタル・マーケティング」にも関連するが、コロナ禍以前はデジタル・マーケティングの売上は1%にも満たない状況であった。しかし、この状況になり市場アウトリーチの最適化やデジタル・マーケティングは、待ったなしの状況となり、そこに企業として注力していくしかなかった。

企業として、安全性に関するプロトコルも作成し、社内にCOVID-19対応チームを設置し、従業員・顧客・取引先それぞれに対して、企業全体として取り組む基盤をつくった。この結果、現在陽性者は出てないし、今後もCOVID-19に対応するための厳しい条件のもとで企業経営をしていくことで、事業を続けていきたいと思っている。顧客に対してももちろん、居心地良く、店頭やデリバリーなどを利用してもらえる状況をつくっている。取引先に対しては、コロナ禍での安全性を守るためのトレーニングを実施するなどして、安全性を確保できるようにしている。
コロナ禍において、今まで以上に信頼性が重要になってきている。そのために、基準をつくって対応することは非常に重要だと考えている。

3. コロナ禍で生み出された新商品

コロナ禍でのイノベーティブな商品事例の1つとして、ココナッツオイルを紹介する。ココナッツオイルは、免疫力を高める効果があるということをコロナ禍で改めて伝えることによって、コロナ禍で弊社のNo.1の売上商品となった。弊社の約700ある商品のうち、年間で販売可能な状態であるのは約300商品ほどだが(他商品は季節限定商品として販売していたりする)、このうち上位50商品が弊社の売上の約80%を占めている。コロナ禍では、ココナッツオイルを始めとする、免疫力を高める効果のある商品が、弊社の売上のトップ10となった。
例えば、普段からココナッツオイルを摂取し続けていた人がコロナ陽性患者となったが回復が早かったなどの声が多く寄せられたことも大きかった。こうしたこともあり、ココナッツオイルが売上No.1となった。ココナッツオイルだけでなく、その他ジンジャーやウコンなどのスパイスも人気が出た。これは、私たちが顧客と商品だけでなく、商品を食べた後の結果も含めてコミュニケーションしていることが影響していると感じている。
こうしたことを受けて、免疫力アップの商品をセットにして商品割引をしたパッケージなども販売を始めた。約300の常時販売している商品のうち、約100商品が免疫力向上に効果があったり、健康に良い影響を与える商品であることがわかっている。コロナ禍において、マーケティングがいかに重要か実感しており、既にチームに居たグラフィックデザイナーやビデオ編集、フォトグラファー、シェフなどと共に新たな広報ツールをつくってソーシャルメディアで発信していった。
また、ココナッツオイルを無料で医療従事者に提供することも始めた。
3本購入して頂いたら、1本を医療従事者に寄付するというスキームで、会社だけでなく社会に貢献してくださっている医療従事者に貢献したいと考えたからである。
ココナッツオイルだけでなく、弊社はコロナ禍で食事などを病院に寄付してきているのが、その中でJAMU飲料の需要があることを知った。JAMUは、インドネシア固有のハーブの伝統的な飲料である。健康的で、これも免疫力アップに効果的である。ただ、JAMUはフレッシュな飲料で、非常に忙しい医療従事者にフレッシュな状態で届けて飲んでもらうのは難しいことであった。冷蔵庫に入れない場合3-4時間しか保たないが、病院で医療従事者のための冷蔵庫を準備することもできない状況で、私たちが考えたのはJAMUパウダーである。医療従事者が、自分たちでつくって飲めるようなものである。それでつくったのが、Do It Yourself(D.I.Y.)のJAMUパウダーボトルだ。そこに水をいれて混ぜれば、医療従事者がいつでも飲めるという商品である。
これまで弊社の顧客の中に、自己免疫疾患の方々がいるということは考えてもこなかったが、こうした方々はCOVID-19により感染しやすいなどの影響を受けていた。また、自己免疫疾患がある場合にどの商品であれば食べられるのか、効果があるのかということに問い合わせを受けるようになった。こうした問い合わせは、私たちに新たな気付きと知識を与えてくれたし、結果として商品のキュレーションやカスタマイズを行うようになった。

4. 250%増した売上、今後に向けた戦略

コロナ禍でインドネシアのロックダウンの状況であっても、スーパーマーケット等食品販売を行うお店は開いていたし、Javaraのお店も開けることができたが、店頭に来るお客様は大きく減少した。
驚くべきことに、コロナ禍で弊社の売上は250%増加した。これは、顧客が健康的な商品や免疫力アップの商品を求めているという理由だけでなく、Javaraがデジタル・マーケティングに力を入れた結果である。What's Appでのマーケティングだけでなく、様々なマーケット・プレイスでお店を持ち、展開するようになった。

現在、どのようにデジタル・プラットフォームを最適化していくのかということに注力している。デジタル・プラットフォームという意味において、マーケットプレイスやメディアだけでなく、デジタル・フランチャイズということも始めている。デジタル・フランチャイズは、携帯アプリを通じてデジタル・アウトレットを展開するモデルである。また、Javaraとしてもオンラインストアを始められるように準備中である。
こうしたことを実現するためには、これまでの販売とは異なるチームが必要となる。そのためコロナ禍以前はゼロだったデジタル・マーケティングチームだが、現在は5人の専門家からなるチームがつくられている。

インスタグラムは、1つの重要なソーシャルメディア・ツールである。インスタグラムを通じて、健康への効果や新たな商品の紹介など、頻繁に更新している。

5. 質疑応答

寄付を伴うような販売キャンペーンは、どれくらいインドネシア国内で効果があったか?社会貢献という文脈がどれくらい、インドネシア国内の顧客に響いたのか?

2つのキャンペーンを行った。
1つは、顧客が3本買ったら、Javaraが企業として医療従事者に1本寄付するというキャンペーン。これは顧客からすると支払い金額は変わらず、3本を通常通り購入することで、1本が寄付される仕組み。
もう1つは、他のパートナーと連携して顧客が完全に寄付として医療従事者に商品を購入してプレゼントするというキャンペーン。

この2つのキャンペーンは、どちらも非常に反応が良かった。
Social Solidalation(社会的連帯性)は非常に強く働き、Javaraの顧客は素晴らしかった。

COVID-19禍においてインドネシアの社会的連帯性は強まったと聞かれたら、「はい」と言える。Javaraは、沢山のセレブリティ・シェフからの連絡を受けて、Javaraの製品をプロモーションする手伝いを無料でしたいという申し出を受けたりした。
企業だけでなく、私たちは助け合わないとこの状態で生き残っていけないというのを実感したし、それが現れていたように思う。

デジタル・マーケティングで売上を伸ばしたという話があったが、それを推し進めるにあたって、どのようにチームをつくっていったのか?

Javaraには、元々マーケティング・チームは存在していた。しかし、このタイミングでチームを成長させ、対応できるようにしなくてはならないと思った。なぜなら、マーケティングとして顧客とのコミュニケーションの仕方やコミュニケーションする内容が変わったから。
COVID-19が拡大しロックダウンが決定した中で、すぐにデジタル・マーケティングやEコマースの専門家を雇った。
売上が250%増えたという話をしたが、オンライン販売だけで言うと、Javaraの販売は500%増えた。

今まで、オンラインのマーケティングがデジタル・マーケティングの最適化に十分に投資できていなかったが、コロナによって"やらなくてはならない"状況になり、チームを増やして実際に対応していったことにより、新たな機会を得た。
現在、組織全体をデジタル・トランフォームしていくために、専門のコンサルタントを雇って対応してようとしている。マーケティングだけでなく、組織全体のデジタル・トランスフォメーションが必要であるし、それに対応していこうとしている。

新しい商品のキャンペーンをしたり、商品の開発をしたり、デジタル・マーケティング強化をしていくなど、スピード感を持った意思決定を進められたのはなぜか?

実は、昨年の4月にJavaraのCEOをおりている。
Javaraにとって、今はスケールアップしていくタイミングだということを理解し、組織には様々なスタイルのリーダーシップがフェーズごとに存在しているということを認識した。こうしたことから、昨年ボードメンバーの再編成をして、組織構造の改革を行った。例えば、今のSales Director(営業部長)は元ユニリーバの人で、この業界で35年もの経験を持っていたりする人だったりする。
私自身の強みは、クリエイティブに新たな商品や事業を創ること。
組織の業務運営や財務、営業という面では、もっと強みや専門性を持っている人がいる。だから今の私の会社での役割は、Chief Creative and Branding Officerとして、新しいイニシアティブを立ち上げでリードしていくことにある。組織全体のスケールアップに関わることは、他の人がリードをしていく。
この1年間ですでにJavaraは会社として組織改編を終えていたこともあって、私は今自分が得意なイノベーティブなことや、クリエイティブに何かを生み出すことに集中できているということが、質問への答えでもある。
その一方で、財務状況をチェックして、投資すべきかどうかを見てくれている人たちがいる。

国別のオンライン販売の状況はどうか?

現在は、まだインドネシア国内でしかオンラインを実施していない。

JAMUを日本で販売する予定はあるか?

現在日本で販売しているのは、ココナッツオイルだったり他商品だが、JAMUを日本で販売する予定は今のところない。

デジタル・マーケティングは、ジャカルタだけか?それともインドネシア全土で販売しているのか?

インドネシア全土で行っている。
もちろん、多くの販売は都市であることが多い。


個人の想いから立ち上げ、組織のスケールアップのタイミングを創業者として見極めて組織改革をしたタイミングでのCOVID-19。
その中で、スピード感を持って新商品やキャンペーンを創り、これを機会にDXを進めているHeliの話は、非常にパワフルだし、私達が学べることは多い。

第2部では、インドネシア在住のTNCライフスタイル・リサーチャーと代表の小祝さんをお迎えしてのパネルディスカッションを実施した。
第2部は追ってnote記事としてご紹介する。

(書き手:AWSEN代表 渡邉さやか)

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