大阪中之島美術館「決定版! 女性画家たちの大阪」展(-2024.2.25)
閲覧ありがとうございます。日本絵画一愛好家です。
新年の先日、大阪中之島美術館の「決定版! 女性画家たちの大阪」展を拝覧してまいりました。
弊方が note にて情報発信を始めさせて頂いてから、初めての開催中の展覧会/企画展になります。
前期展が1月21日まで、後期展が1月23日から2月25日までですので、弊方としては、投稿させて頂くとしても後期展も拝覧してからと考えておりましたが、何と言いましょうか、僭越ながら速報(?)的に拝覧の報告させて頂こうと思いました。
本展、大阪中之島美術館というたいへん著名で影響力の大きいと判断される美術館での開催であり、同館によるパブリックリレーションズも広く行われている模様で、実際、先達のみなさま方がすでに投稿されていらっしゃいますので、詳細はそちらにお譲りしたいと思います。
さて、本展に関して、ヲタクの日本絵画一愛好家としては、現時点では、速報的に次の激萌えポイントを僭越ながら挙げさせて頂きたいと思います。
[おっさん激萌えポイントその1]
偉大なる島成園先生の、あの大作の名作の展覧会冒頭での展示
・・・いや、スゴいですね。同館において、昨年2023年1月21日から4月2日まで開催されていた「大阪の日本画」展において、実質的なトリを務めていたあの名作をどアタマで展示されるとは、弊方、激萌えでした。
[おっさん激萌えポイントその2]
作品No. 13 「おんな(原題・黒髪の誇り)」の背景の濃厚な雲英(きら)
・・・本作品は、かの偉大なる故福富太郎先生のコレクションであり、作品そのものも著名だと思われますので、弊方何度か拝見していたはずでした。
比較的最近であれば、少なくとも、2021年11月20日から2022年1月16日まであべのハルカス美術館にて開催されておりました、「コレクター福富太郎の眼」展では確実に拝見しております(作品No. 43「おんな」)。
ところが、本展で拝見して弊方初めて気付いたことがありました。というか、これまで拝見したときには全く気が付いていなかったという方が適切かもしれません。
こうべを斜め前に傾げて定まらぬように見える眼差しで左手で黒髪を束ねるように掴み、右手で束ねから外れた黒髪を前側に梳る、あやしくもたおやかな女性の背景に、濃厚な雲英(きら)が入っておりました。
改めて図録の写真で拝見しても、雲英(きら)の存在感は全くありませんが、本展で本作品を拝見したときに、その照明の技なのでしょうか、くしけずる女性の背景がキラキラまたたいて、当該女性が、白く輝く背景から浮き上がるように感じましたので、弊方、照明による雲英(きら)の効果がさらに強調されないか、ドあつかましくも屈んで角度をいろいろ変えて本作品を拝見させて頂きました。
もし混み合っていれば、周りの方々にたいへん迷惑であったかもしれません。幸いにも空いていたのですが、まことに申し訳ございません。
このような背景を雲英(きら)でキラキラにする表現手法は、版画浮世絵では「雲英刷(きらずり)」という名称でよく知られている手法のようです。
この手法について、インターネットを安直に検索いたしましたところ、かの偉大なる株式会社ビクセンさまの「浮世絵」の解説が確認されましたので、下記にリンクを張らせて頂きます。「単眼鏡で広がる浮世絵鑑賞の世界」の次に「雲母摺と空摺」というステキ記事があります。
ちなみに、株式会社ビクセンさま、本社が埼玉県所沢市だったのですね。存じ上げませんでした。さすが偉大なる埼玉県!!! (春日部つくし先生に対する忖度です。)
弊方が、この雲英刷(きらずり)の手法をガッツリ堪能させて頂いた展覧会を一例として挙げさせて頂くとするならば、2022年4月9日から5月15日に愛知県岡崎市の岡崎市美術博物館で開催されておりました「名取春仙 役者を描く」展でした。
名取春仙先生は、明治から大正、昭和にかけて活躍された超絶激萌えにして偉大なる画人でいらっしゃいますので、その版画作品は「版画浮世絵」ではなく「新版画」に該当するものと思われますが、新版画が版画浮世絵の流れを汲むことはあきらかですので、「広義の浮世絵」と解釈させて頂きたいと思います。
本展(「決定版! 女性画家たちの大阪」展)は、後述いたします通り「第5章 新たな時代を拓く女性たち」が写真撮影可能でしたが、本展の写真は先達のみなさま方にお任せするとして、それでも写真が少なくて寂しいので、「名取春仙 役者を描く」展の入館券の半券と、同展図録と、オカザえもん先生による解説を、弊方の微妙なガラケー的なガラホで雑に撮影させて頂いたものを、僭越ながら掲載させて頂きます。
いやぁ、愛知県岡崎市といえば、徳川家康公とオカザえもん先生ですよね!!!
写真の画質が悪いので文字が読めないと思われますが、右上のコマでオカザえもん先生が、「春仙似顔集追加 十五代目市村羽左衛門 助六」を拝見されながら「多色摺版画のスゴワザにも注目でござる」と仰っており、その下のコマでは、オカザえもんJr.くんが、とうちゃんのオカザえもん先生に多色摺版画について質問し、オカザえもん先生がそれにお答えになり、最後のコマでは、「名取春仙 役者を描く」展で催されていた「かさねおしスタンプでプチ版画体験」の解説がなされ、オカザえもん先生が「どんな絵ができるのかドキドキでござる~」と仰られております。
さて、どんな絵ができたのでしょうか?! 完全に本展(「決定版! 女性画家たちの大阪」展)から外れてしまいますが、「名取春仙 役者を描く」展のチラシ(フライヤー)とともに、弊方の微妙なガラケー的なガラホで撮影させて頂いたものを、僭越ながら掲載させて頂きます。
オカザえもん先生、10周年おめでとうございます! ただし、2022年当時です。かさねおしスタンプによる多色摺りが若干ズレてて申し訳ございません。今年2024年は12周年になると思われますので、そうすると、オカザえもん先生、もしかして年男でいらっしゃるのでしょうか?!
・・・たいへん申し訳ございません。おっさん調子に乗りました。何卒ご容赦頂ければと思います。
閑話休題で本題に戻らせて頂きますと、岡崎市美術博物館の「名取春仙 役者を描く」展で展示されていた作品群は、展覧会/企画展の名称の通り、大正から昭和にかけて歌舞伎役者の方々や舞台俳優の方々を描いたものであり、次のような作品群であったと評価されております。
そうすると、春仙先生、並びに版元の渡邊庄三郎先生としては、近代的な役者絵であるとしても、伝統的な版画浮世絵と同様の動的(dynamic)な鑑賞を想定されていたのであろうと、妄想されます。
「名取春仙 役者を描く」展のチラシ(フライヤー)や同展図録表紙に採用されている「春仙似顔集追加 十五代目市村羽左衛門 助六」は全身像の作品ですが、大首絵の作品も多くあって、これら大首絵に雲英刷が採用されていたと記憶しております。
一方、島成園先生ですが、成園先生が江戸時代版画浮世絵に学んでいらっしゃったらしいことは、例えば、本展図録に収録されております、偉大なる北川久先生の論文「女性日本画家・島成園とその周辺 女四人と、成園・成香の帝展初入選などをめぐって」(同展図録第178-186ページ)の中で、「白水生」という方が島成園先生のお母さまに取材された記事「母親の観たる島成園」(同論文註3、同註12、『生活』第六巻第六号(大正七年六月刊))を次のように引用されていることからも明らかであると思われます。いわゆる「孫引き」になってしまいますが、僭越ながら引用させて頂きます。何卒ご容赦頂けますようお願いいたします。
「錦繪(錦絵)」とは、版画浮世絵のことを指すと思われます。そうすると、島成園先生が、版画浮世絵で用いられていた雲英刷(きらずり)をオマージュして、技法として、強く濃厚な雲英(きら)を背景とするように「おんな(原題・黒髪の誇り)」を作成された可能性があるのではないか、と弊方、妄想しております。
本展図録における「おんな(原題・黒髪の誇り)」の解説では、大阪中之島美術館研究副主幹で、おそらく島成園先生のご研究の第一人者でいらっしゃると思われる、偉大なる小川知子先生は、次のようにご指摘されております。僭越ながら引用させて頂きます。
これはヲタクのおっさんの安直な妄想ですが、島成園先生は、女性の「負の心情」をより一層強調すべく、版画浮世絵の雲英刷(きらずり)の手法を応用されたのかもしれません。少なくとも、弊方が、雲英(きら)によりキラキラする背景から浮き出るかのごとく、美しい黒髪をくしけずる虚ろな視線の女性を認めたときに、何とも言語化できませんが、この女性が何かを強く想われているようであることは妄想いたしました。
しかしながら、「おんな(原題・黒髪の誇り)」は、かなり大きな作品で、版画浮世絵のような手に取って動的(dynamic)に鑑賞できるような作品ではなく静的(static)な鑑賞が想定される作品のように弊方思いました。そうすると、島成園先生の意図はどのようなところにあったのか、いろいろと妄想が膨らみそうな感じです。
まぁヲタクのおっさんの妄想ですので、適当に流して頂ければと思うのですが、もし本展をこれから拝覧される方がご興味を持たれましたならば、周囲の方々に迷惑にならない範囲内で、きょときょとして頂きながら本作品を拝見されて、雲英の効果をご確認頂けると、弊方のヲタッキーな妄想に少しでも共感して頂けるかな?! と一方的に考えております。
なお、版画浮世絵ではない雲英の使用例として、弊方個人的に激萌え展覧会 /企画展がありました!!!
というか本投稿時点で絶賛開催中の展覧会/企画展ですが、京都工芸繊維大学美術工芸資料館にて、2024年1月6日から2月9日まで絶賛開催中の「よみがえる中世屏風ー京洛の祝祭、白砂青松の海ー」展です。僭越ながら、下記の通りリンクを張らせて頂きます。
この「よみがえる中世屏風」展では、石山寺蔵の「石山寺縁起絵巻」に登場する画中画「浜松図屏風」が、愛知県立芸術大学文化財保存修復研究所の研究者の先生方により復元されているのですが、この「浜松図屏風」とは、次のような作品であると想定されているそうです。僭越ながら引用させて頂きます。
この展覧会/企画展では、技法/技術的な観点から「雲英地」の復元作品「浜松図屏風」が展示されており、復元作品そのものもたいそう見応えのある激萌え作品でした。弊方、超絶おススメさせて頂きたいと思います。
なお、本作品に関しては、もう一つ、以前に拝見した折に全く気が付いていない点がありました。
それは、黒髪をくしけずる女性において、衣の裾からほんの少しはみ出ている右足のつま先のうち、小指と薬指のところに赤黒く見える彩色がなされていることです。
展覧会の図録で拝見すると影のようにも見えなくもないのですが、影にしては不自然かと思いました。弊方が実際の作品を拝見したときには、まるで血痕のようにも見えました。
島成園先生ですので、おそらく何か意図があるのではないか、と思った次第ですが、弊方にはそれが何かわかりませんでした。しかしながら、改めて本展図録の解説を確認すると、小川知子先生が次のようにご指摘されておりました。僭越ながら引用させて頂きます。
このご指摘は、『島成園と浪華の女性画家』(小川知子、産経新聞大阪本社編、東方出版(株)、2006年)でもなされておりました(第30ページ)が、弊方全く気付いておりませんでした。
もしかすると、この切り取られた盥(たらい)と右足つま先の血痕のような色乗せとの間には何か関連性があるのかもしれません。妄想です。
[おっさん激萌えポイント3]
近代大阪の南画/文人画の展示と解説(第3章 伝統的な絵画-南画、花鳥画など)
弊方、ニワカの南画/文人画愛好家(自称)なのですが、近世「大坂」または近代「大阪」における南画/文人画については、ヲタク情報量が非常に少ないのです。
言い換えれば、近世「大坂」または近代「大阪」における南画/文人画の展覧会は少ないんとちゃいますのんやろか?! という感じです。
そういう意味では、2022年3月23日から5月8日にかけて京都国立近代美術館(MoMAK)にて開催された、「サロン! 雅と俗 京の大家と知られざる大坂画壇」展は、近世大坂画壇を主題に国立ミュージアムが展覧会を開催したという点だけではなく、近世大坂の南画/文人画の世界にも着目したという点で、画期的で激萌えな展覧会であったかと、弊方は考えております。
本展では、女性画家に焦点を絞ったとはいっても、近代大阪の南画/文人画について作品展示と解説がありましたので、先行する「大阪の日本画」展の南画/文人画の展示とともに、弊方的には激萌えせざるを得ない展示でした。
実は、おっさん激萌えポイントとして、他にも、ポイント4・偉大なる生田花朝先生の特集や、ポイント5・著名な方から無名な方まで近代大阪の女性の日本画家を紹介される「第5章 新たな時代を拓く女性たち」、あるいは、ポイント6・偉大なる美術史家・北川久先生と小川知子先生との再びのコラボレーションなどを強く強く推したいのですが、速報(?)的な投稿とさせて頂く観点から、本記事では敢えて割愛させて頂きます。
・・・いや、何でしょうね、速報のはずなのに、ムダに長い記事になってしまいました。あきまへんですわ。申し訳ございません。
写真が少なくて寂しいので、見出し画像の垂れ幕を、会場から離れる際のエスカレータから撮影したものを僭越ながら掲載させて頂きます。
それでは、今回はここまでで終わらせて頂きたいと思います・・・、あっ! 忘れておりました!!
おっさん激萌えポイントその2の「おんな(原題・黒髪の誇り)」の他にも、キラキラ系作品がございました!!!
作品No. 54「芳澤あやめ」、偉大なる木谷千種先生の作品です。背景が恐らく金箔である上に、歌舞伎役者の初代芳澤あやめ先生のお顔やお手の輪郭線が恐らく金泥であると思われ、また、お召しになっている衣裳の輪郭線が銀泥であると思われ、これら輪郭線が、光の反射によって浮き上がったように見えました。
本作品も「大阪の日本画」展で作品No. 21で展示されており、弊方も拝見しているのですが、やはり、このような効果については全く気付いておりませんでした。
いやぁ、何と言うのでしょうか、ひとたび拝見しただけでは、なかなか分からないものですねぇ、という弊方のボケぶりを取り繕うかの締めで、今回の自称「速報(?)的報告」を終わらせて頂きたいと思います。
速報のつもりなのに、もぉムダに長くなって申し訳ございませんでした。