関西大学での講演内容全文【第6話/世界史より日本史より自分史】
【これまでのあらすじ】
2019年9月19日の16時53分に届いたある1通のメール。送信主は、関西大学の総合情報学部の久保田教授でした。
(メールの内容)
私が秋学期に担当する「コミュニケーションと行為」という授業でご講演願えないかと思い、ご連絡した次第です。
先日の「世界史より日本史、日本史より自分史」という言葉に惹かれました。そこで水樹さまに自分史を語っていただくことにより、自分づくりが将来に重要であることをお話しいただければと思っています。
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▼事の発端は下の記事をご覧ください(連載第1回)
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ついにこの日がやってきました。
2019年11月13日、関西大学での講演の当日です。
写真:JR高槻駅にて
午前10時に無事に久保田教授とJR高槻駅で合流し、車で関大高槻キャンパスへ。(送迎までしていただき恐縮です)
今回は、実際に講演で使ったスライドを使いながら講演内容を紹介します。
定刻(10:40〜)に、講演がスタート
みなさん、はじめまして。
水樹ハルといいます。
今はこういう黒ハットに黒服という感じなので「この人は一体何者なんだ?」と思っている方もいるかもしれません(笑)
こう見えてぼくは以前、奈良県庁というところで公務員として働いていました。
公務員を退職し、まずスライドの右側にある「グッバイ公務員」という本を出版しました。その出版を機に、書店やセミナーなどで講演活動をおこなうようにもなります。
メインの仕事は、左下の画像のように、夢や目標に向かって挑戦する人の密着取材をおこなって、記事や動画にすることです。なので、執筆・講演・取材活動という3つのテーマで活動しています。
ここで、みなさんに質問です。幸せになりたい人?(挙手)
そうですよね? 幸せになりたくないっていう人はいないと思います。
今、「正解」が無くなったことで、「幸せ」の形が多様化しています。
今まで多くの人が「これが正解だ、幸せなんだ」と思っていたことは…
こんな感じですね。この流れ。良い家を買った後は、定年を目指して働き、老後を迎えるという感じです。これも「幸せ」の形としてOKだとは思います。ただし、、、
みんながこの形を取れなくなりました。
なぜこの正解がなくなったのか?
会社が「ある大きなこと」を保証してくれなくなったからです。
なぜだと思いますか?(質問)
それは・・・これです。
終身雇用がなくなったからですね。
続いて、企業の平均寿命について!
10〜20年だと思う人?(まばら)
20〜30年だと思う人?(多くの方が挙手)
30年以上だと思う人(まばら)
さすがですね!
答えはこちらです。
1つの会社に就職して、その会社で定年を迎えるは難しい時代です。
「じゃあ、公務員ならどうなの?」ってよく聞かれます。残念ながら、公務員であっても安泰とはいえません。なぜなら人口が減っていくからです。人口ゼロだと職員もいらなくなります。
これからの時代の公務員は大きく2つに分かれます。
大阪市とか京都市とか人口が多い自治体の公務員はなかなかクビにはなりにくい。でも一方、山間部の田舎の町村の公務員は定年まで働くのは難しいです。「その町を存続していくためにがんばる!」っていう人は、そもそも安定・安泰とかではなく、挑戦する気持ちがある人じゃないと務まらないですね。ここは大事なポイントなので、公務員志望の人は覚えておいてください。
この状況をみなさん、どう思いますか?
ぼくは逆にチャンスだと思います。
絶対的に安泰な会社、役所はない時代なら、自分らしく生きたり、好きなことに挑戦しやすくないですか?
ぼくはこれまで取材活動やカウンセリングをしてきて、気づいたことがあります。「自分らしく生きるために必要なこと」です。3つあります。
それは、、、
この3つです。
まず、1つ目。
武器・強みを作りましょう。
1つの会社で働き続ける時代はもう終わりです。なら、転職しても大丈夫な自分の武器・強みを作りましょう。そうすることによって、会社と上下関係ではなく、フラットに関わることができます。
次に、自分の価値観を理解すること。
これができれば、世間の常識に引っ張られずに生きることがしやすくなります。
こういう世間の常識です。「やりたい」と「やらなきゃ」は言葉は似てるけど、全然違いますね。
これ、どちらの方が大事ですか?
こうですよね?
自分の価値観を大事にして生きる。
これが2つ目です。
そして、3つ目。
人間関係の質を上げよう!
量じゃありません。質です。
簡単にいうと、「あなたが一緒にいたい人がどんな人なのかを理解し、その人との付き合いを大事にしていこう!」っていうことです。「仲良くしなきゃ」じゃないですよ。仲良くしたいかどうか、です。
この3つ!この3つをおさえれば、自分らしく生きることができます。
とはいえ、みなさんこう思ってませんか??
自分ってどんな強みがあるんだろう?
自分の価値観って?
誰といたいのかな?
即答するのって、めっちゃ難しいと思います。
即答できる人は、普段から自分と向き合っている人です。
わからない!
という人は!
ここに答えがあります!
ゼロ歳から今までの人生経験が記された、自分史に答えがあります!
ここで、遅くなったんですけど自己紹介します。
こちらがぼくの自分史です。
自分の強みは、「14年間公務員をしていた」ということですね。自分の中では当たり前だったんですけど、「公務員を辞めてから本を出してる人ってどれくらいいるんだろう?」って思って調べてみたらゼロでした。
ぼくが公務員になろうと試験勉強している時ってインターネットが家庭に入り始めたばかりで情報が全然なかったんですけどね、、、「18年経ってもいまだに公務員の業界ってブラックボックスなんだな」って思って、「じゃあ書こう!」って思ったのがキッカケです。
母の自殺もネガティブな内容なんですけど、同じように肉親を亡くした人の話ってぼくは聴くことができるし、自分史の制作中や、インタビュー取材中も、結構悲惨だった時の話もスッと聴くことができるんですね。マイナスだと思っていた人生経験がプラス(武器)になったりするんです。
自分史を作ることで、自分は今までどんな人生経験をしてきたのかがわかるし、それをこれからの人生でどう活かすかを考えることができるんです。
「これはすごい!」と思って、セルフで自分史制作ができる「自分史の教科書」っていうnoteマガジンも制作しました。
この自分史を振り返ってみて、人生が楽しくなかった時期がこの水色の「主体性なし」っていうところの時期です。赤のところはやりたいことを夢中でやっていて悩みもあまりなかったんですけど、水色の期間はダメです。世間の常識に引っ張られまくり。
人間は「やりたいこと」を我慢させられるのって本当にしんどい生き物なんです。
自分らしく生きるために必要なことであり、自分史でチェックする大切なテーマの1つ目が「主体性」です。
あなたにとって、好きなこと、したいこと、好きな人との時間は?
これをもっと大切にして、「自己表現していこうよ」っていうことです。
とはいえ、こう言ってもなかなか急には難しいですよね?
自己表現をする前に整えるというか、取り戻すべきものがあります。
それは、、、
自尊心です。
この自尊心が低下すると、自分を傷つけたり、人を責めたりします。
ありのままの自分、過去の自分を認められていない今の状態では、未来に向かって何をしていくかとか、なりたい自分に近づくためのアクションは取りにくいわけです。
だから、まず自尊心を取り戻すことが大事です。
そこで、どうやって取り戻すのかというと、、、
これです!今までの人生経験を受け入れる!
全部は無理でも、マイナスをプラスにとらえ直すことができたら、「今の自分、結構いいかも」と思えてきて、「これから何がんばろうかな!」とアクティブになれます。
自分史を振り返ると、めっちゃピンチだった時のことも思い出します。
人生の谷底やどん底から回復する時って、自分自身がめっちゃ努力していたか、誰かの助けがあって浮き上がれているかのどちらかです。タイミングによっては両方がかけ算になって思いっきり山になることもありますが。
「この時、自分がんばってたなぁ」
「あの時、あの人に救われたなぁ」
そういう感情が湧いてきます。
大げさだと思うかもしれませんが、本日の目標はここです。
人は生まれただけでOKな理由をまた後で説明します。
長くなりましたが、ここからみなさんに自分史を作っていただきます。
大事なポイントなんですが、2人1組で自分史を制作してください。
インタビューする人にグラフを制作してもらいます。インタビューを受ける人は、人生を振り返りながら話せばOKです。
潜在意識と顕在意識の比率を知っている人?
顕在意識はたった3%!
人は、質問されないと、考えません。脳の消耗を避けたい、サボりたいから。だから、顕在意識に働きかけるために質問をしてあげてください。思い出しやすくなりますから。
初対面の人もいると思うので、いきなり自分の人生を話す前に、少しリラックスしてもらうために、ここでアイスブレイクを入れます。
AとBどちらを作ってもらうと嬉しいですか?
なぜそう思ったのかを、隣のペアの人と3分間話しあってください。
(出た意見)
・Aの方が嬉しい。香川出身でうどんが好きだから。→(ハル)なるほど!(笑)
・Bの方が手が込んでいる。→(ハル)もしかしたらうどんを打つところからやってるかも?
でき上がった料理をみただけで良い悪いを判断していませんか?
スーパーに買い物にいってる姿やレシピを考えている姿はイメージできましたか?
「なんでこれを作ってくれたんだろう?」って思えている人、背景を理解しようとしている人はコミュニケーションをする姿勢がありますね。
でも、人によってこれまでいろんな経験をしてきているので、価値観・思い込みは様々です。
大事なことなので、この図を覚えてください。
価値観(思い込み)は過去の経験からできあがる!
「カウンセラーになりたい」という人がいるとします、「なんで?」と聴くと、「肉親や友達を自殺で亡くしたから」という経験をしていたとしましょう。納得しませんか?「あぁ、だからか!」と。
人生の軸や、価値観に、正解とか不正解はありません。「この人は〇〇な経験をしてきたから、〇〇って思うんだな」と違いを理解していくことができたら、コミュニケーション能力はものすごくアップします。
自分史のインタビューでも、「なんでそれをしたんですか?」と背景を理解するようにしてあげてください。
さて、ここからついに、みなさんに自分史グラフを制作してもらいます。
今みなさんの手元にA4用紙3枚がありますね?
これを横向きにして、最初に、0という数字を左側に書き、その右側、用紙の真ん中にスーッと線を引いてください。
プラスの出来事・経験の場合は、真ん中に引いた線よりも上に点がきます。逆にマイナスの出来事、経験の場合は、真ん中に引いた線よりも下に点がきます。
インタビューする側のルールはこの3点です。
では、インタビューを始めてください!
・
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(略)
10分経ちました!
交代してください!
・
・
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・
(略)
10分経ちました!そこまでです!
おつかれさまでした!
みなさんのグラフを見ていましたけど、人生経験、、、谷底の人もいましたね。そこからものすごい勢いで巻き返している人も。浮き沈みが多い・少ないはあるにしても、いろんな経験をしてきていると思います。
下のグラフを見てください。
実は、みなさんの自分史グラフを「経験値」と「時間」で作り直すと、こういうグラフになります。常に経験値はアップしているということ。生まれてオギャーと泣いたら経験値1、オギャーとまた泣いたら経験値2、ハイハイで100とか、そんな感じですね。
現時点がマイナスなんてことはなく、生まれてから常に経験を重ねてきていることがわかりますよね?
さて、続いて、人生で大切にしている価値観トップ3を明らかにする時間を取りたいと思います。
みなさんが先ほど作った自分史グラフを参考にして、価値観を整理してみてください。
何をしている時が楽しいですか?
どんな人と一緒にいたら楽しかったですか?
水樹ハルの価値観はこの3つです。
自分の意思・判断で責任を持って生きていない時期は楽しくなかったので、「主体的に生きる」ということを大事にしています。
あと、取材や自分史制作をするときに、相手の価値観を否定したくない。背景まで知っていきたいので「相手のストーリーを理解する」というのが2つ目。
3つ目は、公務員時代はジェネラリストが多かったんですね。スペシャリスト集団で分業してプロジェクトをするチームを作って、その中でポジションを持ちたいと思って、オンラインコミュニティのHACという活動もしています。
HACは、多様な生き方・働き方を図鑑のようにまとめているサイトです。あなたが興味を持っている職業で生きている人を参考にのぞいてみてください。
特に、価値観として、「指図されるのが嫌だ!自己責任でやりたい!」という人は、大企業や役所とはマッチングしないですね。そういう人は、自営業の方が向いてますよね? ビジネス・経営の勉強をして力をつけていく方がマッチします。
逆に、「自己責任でやるのは怖い」という人は、会社勤めの方が価値観としてはマッチします。
マンツーマンで1対1で向き合うのが好きな人もいれば、1対大勢で何かをするのが好きな人もいます。特に、仕事や人間関係について自分の価値観を掘り下げてみてください。
先ほどのペアの人と一緒に考えてみてください。インタビューをする人は客観的に質問をしてみてください。2人で相談する形でやると出てきやすいと思います。それでは、スタートです!
これまでの自分を少し受け入れた上で、あらためてこれからやりたいことはなんですか?次の誕生日が明日とか、近い人は、その次の誕生日まででもOKのをなので、「ついつい先延ばしにしてたなぁ」っていうもの、、、「海外に行く!」でもいいし、「〇〇の強みを磨く!」でもいいです。
これは相談せずに1人で考えてみてください。
それでは、どうぞ!
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あと、最後にこの質問に答えさせてください。
一番引っかかるところだと思います。
特に、なりたい自分と、今の自分とのギャップに悩んだり、凹んだりしますよね?
ここを埋めるには、いかに「緊急ではないけど重要なこと」の時間を確保して注げるかが重要になります。
緊急なことといえば、「テスト勉強」とか「就活」がそうですよね?
「強み」は時間をかけて磨いていく必要があるので、④のように「なんとなくエンタメ系のYouTubeみてオモロイー」っていう時間も減らさないとっていうことになります。(でも、YouTuberを目指す人は、これが②になります)
一気に5段飛び越えるって無理ですよね?
ゴールに向かって1段ずつ、ゆっくりといきましょう。
みなさんの経験値は増え続けています。
決して今の状態がマイナスではありません。
映画の「アクション」っていうかけ声ってめっちゃいいなって思うんです。
あれをきっかけに演者が動いて、ストーリーができあがっていくでしょ?
結局、あなたがアクションを起こすから、現実が変わっていく、ストーリーができあがっていって、自分史に新しい点が増えるんです。
人生は何が起こるかわかりません。
ぼくは18年前、現役受験である大学に落ちました。一浪しても落ちました。でも、今、その大学で講演をしています。
今日はありがとうございました。
次回予告
久保田教授から講演を終えたハルに、大学生が記載した自由記載のアンケートが手渡された。。。果たしてその結果は?大学生の満足は得られたのか?
次回につづく。(第7話)
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