絵本『じかん猫ワルクロ』
あるおうちに、ワルクロというおへそに時計がある不思議なねこがいます。
ワルクロには秘密があります。
ワルクロが、おへそにある時計の秒針をはやくしたり、おそくすると時間のすすむはやさがかわります。
誰にもおへその時計は見えません。
パパのツトムはほとんどおうちにいません。
おしごとにいくため朝ははやく、夜はおそくかえってきます。
ママのケイトは、3才のジョージという男の子と、うまれたばかりの赤ちゃんのサラを1人でそだてています。お買い物も、おそうじも、ごはんをつくるのも全部ケイトのおしごと。
ワルクロは、ジョージとあそぶのが大好き。
でも、ジョージはおひるの3時まで幼稚園に行っています。
たいくつなワルクロは、ケイトにあそんでもらおうとします。
「わたしはいそがしいの!ひとりであそんでなさい!」
ジョージがいなくてたいくつなワルクロは、秒針をはやくします。
チク!タク!チク!タク!
すると、ジョージが幼稚園のバスに乗って帰ってきました。
「え!もうこんな時間?」
ケイトはあわてて夜ご飯をつくります。
ワルクロはジョージとたくさん遊びたいから、秒針のはやさを元に戻します。
チクタクチクタク。
ワルクロとジョージはおうちのなかでおおはしゃぎ。
すると、寝ていたサラが起きて泣きだしました。
「もう!サラが起きたじゃないの!しずかにして!」
こわい顔をしたケイトがワルクロとジョージをしかります。
忙しいケイトは怒ってばかり。
怒ったワルクロは、ケイトを困らせようと秒針を早くします。
時間がはやくすすむとケイトはもっといそがしくなります。
そこに、パパのツトムが帰ってきてこういいました。
「なんでまだごはんができてないんだ!」
「ご、ごめんなさい。すごく時間がたつのがはやくて…」
ツトムに怒られたケイトは悲しい顔をしていました。
その顔を見てワルクロも気まずく、悲しい気持ちになりました。
ツトムと子どもたちが眠った後、ケイトはごはんの後片付けをしています。
「ケイトごめんね、ぼくが時間をはやくすすめたから」
「そんなことができるの?」
「うん、この時計見えるでしょ?」
「今まで見えてなかったけど、見えるわ」
「ぼくがこのことを伝えた人にだけ見えるようになるんだ、でもこのことを知られたらもうここにはいられなくなる…」
「ワルクロ!」
「忙しい忙しいって言ってふだんワルクロと話したり遊んだりできてなかったよね。ごめんね。」
ケイトはワルクロをギュッと抱きしめました。
「ケイト、秒針のはやさをゆっくりにするからもうちょっとこうしてほしいんだ」
チク・タク・チク・タク。
ワルクロはそのまま眠ってしまいました。
「ごはんできたわよー!」
次の朝、家族みんなで初めての朝ごはん。
「みんなで朝ごはんうれしいね」
みんな笑顔で、ニッコニコ。
朝ご飯を食べ終わった後、ツトムは仕事に、ジョージは幼稚園へ。
ママとサラはお昼寝のじかん。
そして、ワルクロは、
「じゃあね」と小さくつぶやき、
ひとり遠くのまちに旅立っていきました。
おしまい。
絵/まこらっち(makorattidesu)
ストーリー/ハル(harumizuki423)
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