松葉杖で楽しむコムローイ[2024]
2024年春、バンコクでソンクランに行ったら楽しかった。
その経験から、ただ海外旅行に行くのではなくイベントに参加してみるのもいいなと思って、日本では1番有名なタイのイベント通称「コムローイ」に参加することにした。現在ベトナムに住んでいるのでタイは近くて魅力的だ。
コムローイは空に上げるランタンの名前でイベントの名前はイーペンだが、インスタなどの拡散の猛威でコムローイの名前だけが広まっている。
ソンクランは無料で参加可能だったが、コムローイはクソ高い、参加するだけで2,3万とられる。
普通に日本語で検索するとHISやJTBのツアーが引っかかる。現地ツアーが大っ嫌いなのでなるべく個人で現地まで行ってランタンぶち上げてサクッと帰ってくる方法を探したが、一般の参加方法が見つからない。
仕方なく、現地ツアーに応募した。コムローイの半年前だった。
そこからたまにコムローイについて調べていた。
・ディズニー映画のラプンツェルがモデルにしてること
・火のついたランタンが落下する危険性などから縮小傾向なこと
・人気が高く現地人専用の会場と外人観光客用の会場と分けられたこと
・人気が高すぎて外国人観光客向けの会場は価格が高騰していること
・コロナで中止になり一度歴史が途絶えたこと
・コロナ後、”外国人会場のみ”復活したこと
ここまで調べると要するに、
過去にあった人気のイベントで映えを求めてやってくるアホな観光客向けインバウンド集金装置
というイメージになった。
現地民は基本参加しなくて、しかも住民から苦情が出て迷惑がられている。じゃあ何のためにタイに行くのか、タイのお祭りと言えるのか。
お金を払った後だったので、行くにはいくが、何だか急激に熱が冷めた。現地のタイ人と水鉄砲を撃ち合ったソンクランの体験はここにはないなとハッキリとわかった。
コムローイから3週間前にバイクで転けて膝蓋骨を真っ二つに叩き割った。
病院に運ばれて、緊急手術だった。
松葉杖を使わなければ歩けない。松葉杖を使う手が痛すぎて1ブロック隣の敷地にも汗だくになっていく状態だった。
11月の一週目にバンコクからラオスに行こうと計画してた、まさに航空券を買う寸前での事故だった。ラオスは中止した。しかし、すでに買ってるチェンマイの航空券とコムローイの現地ツアー。勿体無い。それに、大っ嫌いなおんぶに抱っこの現地ツアーも今の自分にはちょうどいいかもしれないと思い、中止にはしなかった。
膝が曲がらないのに飛行機の座席に乗り続けるのはなかなかに辛い。
固定されていて膝は曲げられないし、足首も動かせない。LCCではほとんど座席に収まってない。お尻の下に上着や荷物を入れて股関節から足先までの角度を調節する。離陸させすれば降りろとは言われない。
離陸後は、今時は反社でもそこまでやらんぞってくらい通路に足を投げ出す。機内食はないくせに免税品を売るために通路をカートが通る。投げ出した足が邪魔だと!?買う気もないのに都度立ち上がる。お通りください🙇。
途中、煩わしくて補助具を取っ払う。少しだけ足が曲げれるちょっと楽、しかし無防備。寝ぼけてトイレに立つ乗客が足を蹴飛ばすかもしれない。でも不思議と蹴られない自信があった。
結局、夜間のフライトだが一睡もできずに着陸した。
幸いなことにチェンマイのホテルは非常にいいホテルだった。
景色がいいわけでも、広いわけでもないが行き届いていてゆっくりホテルの中で過ごす事ができた。
金曜の夕方、コムローイ当日。現地ツアーの待ち合わせ場所へ行く。
何となくHISとJTBの現地ツアーは避けたのに、結局その2社も同じ場所で待ち合わせ、というか複数社で共同でこのツアーを成立させているようだった。
集合場所からバンに乗り込み会場へ行く、松葉杖を見てよしなに足が伸ばせる席を準備してくれた。痛み入る。。
会場「ロイヤルチェンマイゴルフリゾート」に到着する。参加チケットを探した時、現地ツアーしか見当たらなかった理由がわかった。旅行会社が複数社共同でお金を出し合い会場を押さえてイベントが成り立っているのだ。会場自体を旅行会社が持っているなら現地ツアーに参加するしかないというわけだ。
もちろん探せば旅行会社が主催してない会場もあったかもしれない。そこまで探すは気力がなかった。
チェンマイのインバウンド集金システムだと思ってたが、コロナ明けの旅行需要冷え込みのための日本旅行会社の集金システムだったことが明確になった。
会場は、常に日本語のアナウンスと日本語の歌が流れていて客の9割が日本人だった。ランタン飛ばすまではバイキング形式でご飯を食べながら準備された体験イベントやら楽器演奏を見て過ごす。地方の市民団体レベルのクオリティ。自分も小学生の時に地域の祭りで国道を歩きながら太鼓叩いたなって思い出した。”海外のイベントをもっと体験したい”という当初の考えからは真逆の死ぬほど日本のイベントに一周回って笑えてきた。
地域の祭りのようなものだと思ったら、ムエタイの演舞も見てて楽しくなって、いつの間にかランタンを上げる時間になった。
アナウンスでランタンと飛ばし方の説明が始まる。途中で何度も
「まだランタンに触らないでください。」
「会場全員で一斉にランタンを飛ばします」
と英語と日本語で説明が入る。しかし、待ちきれない一部の欧米人が説明の途中で「あとはわかった」と言わんばかりにランタンを飛ばし始める。協調性0。だがそれは一部、「日本人が9割じゃなきゃこのイベント成り立たないかもしれないぞ、日本人で集まってむしろ正解なのでは🤔」という気がしてくる。
全ての説明が終わったあと、アナウンスに従ってランタンの準備をする。
・袋から取り出す
・ランタンを広げる
・火をつける
ただそれだけの事。そしてカウントダウンがあり一斉にランタンを手放す。
ゆっくりと上昇していくランタンを視力と集中力の限界まで見送った。
あまり感じた事ない感情が湧き上がる。よくわからんけどすっげーよかった。
半年間のコムローイへの訝しみや不満が全て吹き飛び早く次のランタンを打ち上げたくなる。
来て良かった。膝を真っ二つにしてても参加する自分でよかった。
帰りのバンに乗り込む。
景色を見ながら機動戦士ガンダムでエンジニアがシャアと話すシーンを思い出す。
もし、足が治らなくても次の景色を見に行けそうだ!