疑心暗鬼の連鎖:ウクライナでの戦争から
ウクライナでの戦争の情報に触れるにつれ、世界から戦争をなくすことの困難さを痛感します。とても残念ですが、ヒトは戦争をするようにプログラムされてしまっていると思えてなりません。
それは、ヒトは疑心暗鬼せざるを得ない生き物のようだからです。
私の知る限りですが、今回の戦争も、疑心暗鬼が背景にありそうです。以下は、私の想像です。
ロシア:
事実:(2004年、バルト三国がNATO加盟) 2007年 プーチン大統領が、NATO東方拡大を公式に批判
疑心暗鬼:西側は、ソ連崩壊時の約束を破った。西側は、今後もさらにNATOを東方拡大させることで、ロシアに圧力を加えようとしている
NATO:
事実:2008年 NATOは、ウクライナの将来加盟を支持
疑心暗鬼:いずれロシアは、さらなるNATO東方拡大を避けるため、ウクライナを取り込もうとするだろう。そうなれば、ロシアが西側に攻めてきやすくなる。そうなる前に、ウクライナを西側に近づけておこう(今はロシアを刺激したくなので、加盟させないが)
ウクライナ:
事実;2014年 ウクライナ政変 親ロシア政権崩壊
疑心暗鬼:親ロシア政権であれば、いずれソ連時代のようにロシアに支配されてしまう
ロシア:
事実:2014年 クリミア半島を武力で併合
疑心暗鬼:ウクライナはNATOに加盟したがっている。このままでは、貴重な不凍港にあるロシア海軍基地が、いずれNATOに脅かされるかもしれない
ここで自分に都合のいい楽観論も芽生えます。
楽観論:さほど本気で西側は怒っていない。アメリカは本気で介入する気はないだろう。アフガニスタンを見ろ。もう少し攻めても大丈夫そう。
えてして、疑心暗鬼と楽観論が重なり開戦となります。
NATO:
事実:2022年 ロシアがウクライナ侵略。NATOは軍事介入以外のあらゆる手段でウクライナを支援
疑心暗鬼:ここでロシアの武力による現状変更を許してしまえば、NATO圏内の旧東欧諸国にも攻め込んでくるかもしれない。さらには、中国にも前例を与えてはならない
プーチン大統領:
事実:停戦せず、戦い続ける
疑心暗鬼:もし、この戦争に勝てなければ、自分の身が危うい。たとえ大量破壊兵器を使ってでも・・・・。
フィンランド:
事実:NATOに加盟申請
疑心暗鬼:第二次世界大戦でも、ソ連に攻め込まれた。今のロシアなら、ウクライナの次にNATOに加盟していない自国に迄攻め込んでくるかも。中立政策では防ぎきれなさそう
ロシア:
疑心暗鬼:フィンランドまでNATOに加われば、ますますロシアの安全保障は脅かされる。何としても妨害せねば・・・・。
楽観論:中国が味方になってくれれば・・・。
中国:
事実:武力による現状変更には反対と表明。ただし、ロシアへの直接批判は抑える
疑心暗鬼:ロシアの武力による現状変更を認めれば、アメリカの台湾への介入も認めることになってしまう。アメリカはそれを狙っているだろう。しかし、プーチン政権が倒れるようなことがあれば、アメリカは次には中国に矛先を向けるだろう。ロシアを支援したいのだが・・。
アメリカ:
事実:軍事介入以外のあらゆる手段でウクライナを支援
疑心暗鬼:ロシアのウクライナ侵攻を許せば、中国も後に続く可能性がある。中国を封じこめるためにも、なんとしてもロシアには勝たせない
このように、ヒトは防衛本能からか、ある事実を見たときに、それは相手の悪意によるものだと解釈する性質を持っています。
少しずつであっても、双方がそう思い続けるうちに、どんどんエスカレートします。そして、それがある臨界点に到達したときに、ふと楽観論が芽生えます。希望的観測を正しいと判断し、自己合理化するからです。そうして開戦してしまう。かつての日本もそうでした。
また、意思決定者と国家(組織)の合理的判断が、異なってくる可能性があります。今のプーチン大統領とロシアがそうかもしれません。そうした場合、非民主主義国家では意思決定者の判断が優先されがちです。これもかつての日本がそうでした。
歴史は繰り返すのでしょうか?
ヒトは、信頼を基本にはできないいきものなのでしょうか?
人類の進歩とはなんだったのでしょうか?