マケインについて思うこと。第3回 まだまだ続けたいけどちょっと寄り道させてね 僕は友達が少ない編
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1 気分転換
前回はかなり自由気ままな考察(妄想)をくりひろげたので、今回は気分転換にマケインの参考となるラノベ「僕は友達が少ない(略称「はがない」)」についてごく簡単に考察してみる。
なお、超有名ラノベでアニメにもなっているし、めんどいのであらすじとかキャラ紹介とかかかない。こことか参考にしてみてね。https://dic.pixiv.net/a/%E5%83%95%E3%81%AF%E5%8F%8B%E9%81%94%E3%81%8C%E5%B0%91%E3%81%AA%E3%81%84
独自にあらすじとキャラ紹介をすると膨大な量になって、マケインの参考という範疇をこえてしまうのでごめんなさい。
したがって、はがない全巻を未読の方は以降の文章は読まないでね。ねんのため、また10行ほどとばします。
2 主人公が語り手その1(認識と実態との誤差)
マケインもそうだが(例外部分もあるが)、はがないも主人公の小鷹の視点から描かれる一人称小説だ。したがって、主人公がみたりきいたり想像したことが原則としてそのまま物語にでてくる。
これはどういうことか。たとえば、次々と登場する美少女たち(男もいるが無視)の外見や行動や性格など、本当にそうなのかはわからないということ。単に小鷹が「そう認識している」ということでしかない。
8巻のあとにでたCONNECTは小鷹以外の登場人物たち(全員ではないが)の視点による物語だが、特に夜空と理科は小鷹が認識していた人物像とは大いに違う。夜空は実際は自分より幼い子たちには優しく、暴力を振るう人ではない。だからこそ小鳩にも懐かれる。マリアへの暴力など実際にはそんなキャラではない事故なのに小鷹に「幼女に手をあげた」と認識されたのはつらかったろう。気の毒でならない。
理科については、家庭環境が深刻で孤独な少女であり、その暗さを(体型の貧弱さも)隠すこともあってか当初から小鷹のためになんというかおちゃらけ後輩演技を続けていたことが7巻で判明した。その理由は、部活で友達がほしかったという以上に小鷹が好きでそばにいたかったというのは明らかだ。この点はまたあとでふれたい。
なお、全員が全員小鷹が認識齟齬しているというわけではない。星奈や妹の小鳩はいい意味で裏表がないので問題ない。マリアはちょっと微妙だが幼女だし。
3 主人公が語り手その2(なぜ友達ができないか)
さて、そもそも小鷹はなんで友達ができないのだろう?
例のきたない金髪問題とか顔が怖いとか転校が多いとかもちろんみな理由ではあるのだろうが。
僕は、小鷹が友達というものを相互作用として考えていないからではないかと思う。
早い話が、友達というからには、ギブ&テイクが必要だ。一緒に鬼ごっこするでもよし空き地リサイタルに拍手させられるかわりにいざというとき守ってくれるでもよし、取引(というとみもふたもないが)というか関係性の形は多様だが双務性はなければならない。
小鷹は、そのところが、つまり自分が友達になにをしてあげられるのか、というところについて(してほしいことはあっても)意識がないと思う。あえていうとエゴイスト。
4 理科の気持ち、幸村の気持ち
8巻の終わりで小鷹と理科は友達になった。
これは正しかったのだろうか?
10巻から11巻にかけて、幸村の告白、そして小鷹は自分の理科への気持ちが友情ではなく恋であったことに気づく。そして、彼は失恋していたと認識する。
しかし、おかしくないだろうか。
9巻で温泉に入ったときの小鷹と理科のやりとり、あれは友人同士ではなく恋人同士のものだろう。そして理科は当初から小鷹が好きだった。なぜ恋人になってはいけないのだろうか?
そう、まさに幸村がいだいた疑問、いや怒りはそれなのだろう。
彼女は小鷹のことが好きだ。そして彼女は冷静に誰よりも小鷹という人物を把握している。実はただのヘタレで悪人ではないがエゴイストであることも。そういうどうしようもない面も含めて愛したのだ。それが恋というものだ。
彼女は理科が小鷹が好きなことはそもそも入部したときから知っている。だから友達にはなれない。それは理科の人間性が嫌いとかではない。恋のライバルだからだ。
だから理科にも正々堂々小鷹のことが好きといってもらって戦ってもらいたいのだ。それで小鷹が理科を選ぶのなら素直に諦め、祝福もできる。これが彼女の気持ちだろう。それが友達だから、あなたが彼女になってもかまわないでは立つ瀬がない。
では、理科の「僕達ずっと友達でいようね」はどこからくるのだろうか。
立ち止まって考えてみよう。
隣人部のうち、小鳩とマリアのぞいた全員が小鷹の恋人候補である。そして生徒会までいれれば候補はさらに増える。
理科は観察力が高いので、このままいけばエゴイスト同士の小鷹と星奈が順当かもしれないと考えたかもしれない。そして彼女は自己評価がきわめて低い。自分のように醜い女は小鷹にふさわしくないと思ったのかもしれない。しかしそれはおく。
注意したいのは、恋人、あるいは嫁候補はいても、友達になれる人間は一人もいないということだ。これは当然のことで、好きですといったら断られて「いい友達でいようね」と言われて実際に友達やってるという関係は世間でもまずない。
しかし、今後小鷹が成長していくにあたり、友人はいたほうがいい。理想は同性の友人だが、いないものはしかたない。
したがって、理科は小鷹の友人になることにした。それが彼女の愛する人への尽くす道と信じて。恋人は他の人に譲って。
5 結び
というわけで、はがないというのは、理科の自己犠牲というか、大きな愛の話なのではないかという考察でした。それがゲロとか一人称とか美少女とか幼女とかで隠されているので、8巻すぎてからの展開についていけなくなる人が多かったということですね。僕は上質な叙述トリックミステリ読むようで素晴らしい作品だと思います。
ただラノベ読者には色々抵抗感あるかなとは思います。
なお、この文章がマケインについての今後の考察に役に立つかは、書いてみないとわかりませんが、一人称が真実を述べているとは限らないということは前々から書いているのでその補強にはなるかなと。