人から聞いた怖い話♯3 遺影

昔の話なので現在とは違う、通じない話ですが。


お葬式中の話らしいです。

地主のお爺さんが老衰にて亡くなられて
親族一同とご近所の方々でご葬儀をされてました。

お坊さんがお経を唱えている時に
親戚、家族、近所の方でちょっとした言い合いがあったそうです。
というのも、家族はお爺さんと離れて暮らし、親戚が通院や様子見をしていた。
またかなり親しくされていた近所の方もいて、身の回りの世話もしている人もいた。

そこで相続の話題になると、みんな自分の主張をしてしまう。

葬儀中にも関わらず、段々とみんな声が大きくなってしまう。

お坊さんも、ついにはお経を辞めてしまった。
「ご覧なさい。遺影が笑っているように見えませんか?」
確かに目尻が下がり、口角が上がっているように見える。

家族の一人が言いました。
「久しぶりに帰ってきてじいさんも喜んでいる。自分に多くの遺産を残せて嬉しいのだ。」

お坊さんが首を横に振ります。そして静かに続けます。
「遺影はあの世を写していると言います。そして、あの世は全てが“逆さ“になっているとも言います。裏拍手や左前の着物がその例です。
お爺さんは今、自分の葬式が本当に悲しく悔しいのでしょう。
そしてこれから浄土に行くかどうか判断される時に、現世に諍いを残したことを罰せられるかもしれません。」

みんな黙り込み、相続の話はまた後日ということになりました。

何月か経って、家族がお坊さんに相談しにきました。
お爺さんの幽霊の目撃談があった事と、遺影についてでした。

遺影が、言葉ではうまく言い表せない不気味な笑顔だと言います。般若のように見えると言う人もいたとか。

「これは困った。お葬式での出来事で悪霊になってしまったようだ。そして夜になると遺影から抜け出すのでしょう。」

遺影をお寺でお預かり頂く事になりました。
昼間はお経を上げて頂き、夜は鏡を遺影と向かい合わせるようにして安置されたとのことでした。


昔の人が遺影で、笑顔でない真面目な怒ったような顔をしている理由は、こういったこともあるのかもしれません。

ご清覧ありがとうございました。

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