長閑浜のデネボラ 1の6 街へ

山城タクシー本社から、街の方までは片道45分くらいかかる。
しかし平日の通勤通学を考えると、1時間は見た方がいい。
日報を書き終えるとタクシーの鍵とドラレコのSDカードを受け取った。
社長と石田さんから「ご安全に」と送り出されてタクシーに乗り込む。
名札などを差し込み、お客さん用の座席などを最終チェックした。
ガスも満タンだ。エンジンをかけて山城タクシーを出た。

山城タクシーから東の方向に進む。おれのアパートに戻る方向だ。
途中に、まだ少し渋滞が残る橋を越えて、朝のコンビニの前を通る。通学する学生を多く見られる。
山城区には小中学校以外にも高校があり、近隣の子以外は単線鉄道を使うことが多く、コンビニは待ち合わせ場所にも利用されていた。
飛び出しはないではないが、ふざけてはしゃぐ学生達にヒヤリとした事があった。
車は急には止まれないんだよ、と念じながら目線を走らせる。
国道をさらに東へ進むと、大きくカーブして南へ向かう道になる。ここまで出ると歩行者はかなり見られなくなる。

街の方まで行く道は、バイパス道路/川の堤防沿い/県道の大まかに3ルートある。
バイパスや堤防沿いは大きく迂回する方向性だが、信号機や交通集中が少ない為に県道ルートと到着時間に大差なかった。
今日は県道ルートを選んだ。

上京前にはなかった2本目の東名高速道路が開通したことで、道路網も大きく変わっていた。
北に真っ直ぐだった道はカーブして他と合流したり、新たな子道も多くできた。
県外に出ている友人を乗せた時には、道の変わり様とチェーン店の進出に大きく驚いていた。
ただの畑だった所を、片側2車線の道路が横切り自動車ディーラーが立ち並ぶエリアまでできていた。
逆に、昔の主幹道路は廃れ、地元スーパーやパチンコ店は潰れて更地にされた後に住宅街になっていた。小さい頃から通った駄菓子やたこ焼きも。

毎日車で走ると風景変化に敏感になり思い出と混ざる事で、歴史絵巻を見る心地になる。大袈裟な言い方だが。
発展するものと衰退するもの、賑わう所と寂しい所、必ず移り変わっている。
更に、そこで生活を営む人の人生を思うと感傷に浸る時もある。
そこで商売をしていた場合には、“道一つ違えた”だけで結果が異なっただろうとも。逆に立ち退き料で喜んだ人もいたと聞く。

おれみたいな物流関係だと、周辺のイベントで混雑状況で結果が変わる。
以前、アメリカの大型倉庫形態のスーパーマーケットがオープンした際には、県道ではなく堤防沿いの方が早く着いただろうと後悔することがあった。
予定時間に遅れて怒らせてしまったことがある。
近々ショッピングモールができる噂も聞くので、アップデートはサボられそうにない。

#小説
#良くない

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