
今さらコロナ体験記
クリスマスが近づく金曜日の夜。今年も残り少なくなったタスクを見て、ふと思った。
これなら、クリスマスの週を休んでも何とかなるな。
このときは、本当に休むことになるとは思ってもみなかった。
発端
金曜日の夜。土曜の予定が突然ぽしゃった。
直前のキャンセルに下を向く。身体が重くなった。
こういうときの対処法は知っている。だいたいのことは、身体を動かせばどうでも良くなるはず! 人間の仕組みは単純なのだ。
ということで深夜に1時間ランニングした。キロ5分で走っていると、すぎゆく景色とともに悩み事が飛び立っていった。冷たい風も、今の気持ちを代弁してくれているようで心地よい。芯まで冷えたけれど。
さあ穏やかに土日をすごそう。
異変(0日目)
土曜日。喉が痛い。おとなしく買い物以外は家ですごした。
日曜日。喉が痛い。だるい。寒気がする。
体温を測ると37.8℃あった。流行っているインフルにしては体温が低い。久々に風邪をひいてしまったか。
まあ何とかなるでしょう。最近、風邪をひいても1日で治る。だから今日しっかり休めば全部解決だ。
となると、今考えるべきことは一つだ。きついけど起きているときにどうやって時間をつぶすか。
幸い、今日はM1がある。作り置きの鍋を食べながらM1を見て、ここ最近で一番笑った。伝説を目にした。令和ロマンかっこいい。
笑いは免疫に効果があるという。これで完全に快復するフリができあがった。
あとは寝るだけだ。
発覚(1日目)
朝起きた。
喉が痛い。咳が出る。寒気もある。
うん、変わってない。会社に休みの連絡を入れ、医者に行くことにした。
体調のせいで、コートを羽織っても外は寒い。歩いて10分のかかりつけ医に行く。外で待っていると、鼻に入れる検査キットを手に医者が現れた。
身体が固まった。これ、10年ぐらい前にされたことあるけどめっちゃ痛かったやつ……。ただ、実際に刺されてみると全然痛くなかった。コロナ禍の検査ラッシュで、医者の腕は格段に上がっていた。
「15分後に結果出ますねー」と言った医者が5分後に現れた。
「コロナですね」
あー、そうきたか。
家族で最後までコロナになっていなかったのに、今さらなってしまった。しかもインフルが流行っている中なので、謎の置いてけぼり感。
会社に連絡する文章を考えながら会計した。
感染のリスクがあるので、薬局での薬も外で手渡しだ。
「弱毒化しても感染力だけは相変わらずなんですよねー」
と苦笑いしながら渡してくれた。
家に帰って葛根湯を飲む。
突然『我が家のお稲荷さま。』が頭に浮かんだ。受験のときに心の支えになっていたライトノベルだ。作品内の「コウ」という巫女さんが大好きだったんだっけ。
コウが風邪の人に葛根湯をやたら推していたシーンがあったんだっけ。懐かしい。看病されたい。今度実家から本を持ってこようかな。
時間をつぶすために何かないかなと調べると、ちょうど『武装少女マキャヴェリズム』というマンガがキンドルで安売りしていた。ぽちり。
バトルものハーレムものと普段読まないジャンルが逆に新鮮で回らない頭に心地よい。
お色気シーンが多いのに体調のせいで完全にフラットな視線で読めるのが新境地だった。
これが煩悩を乗り越えた人が見る風景ですか。
のどが痛い。ちょっとでも水を飲むのをさぼると咳が出る。
夜に昨日の鍋の残りを食べた。ポン酢の酸っぱさが身体にしみていく。なんで体調悪いと酸味がほしくなるんだろう。
夜、前からやりたかったことをしよう。それは、「クリスマスの時期に『東京ゴッドファーザーズ』を見る」ことだ。
この作品、クリスマスを舞台に繰り広げられるドタバタほんわかコメディ映画で、見終わったあとにどこか頑張ろうと前向きになれるのだ。作品内の時間軸と同じタイミングで見ると何を感じるのだろう。
再生して10分で異変に気づいた。
メインの登場人物に、ホームレスのおじさんおばさんがいる。そういえば、彼らの働いていない境遇って、今の自分と同じだ。となると、もしこの体調が続いたら今に同じようになってしまうのかな。将来への不安がもわもわ。
まさかの、気弱になっていて物語に入り込めず。正直、予想もしてなかった。
一応完走したけど、また今度見直そう。
カロナールを飲んで早めにベッドに入った。
相変わらず(2日目)
夜中に寝汗がひどくて着替えた。これ、風邪が治るときになるやつじゃんと期待しながら再びベッドへ。咳が出るので水を飲む。
朝、熱を測ると変わらずの37℃台だった。さすがコロナ、普通の風邪のようにはいかんか。喉の痛みは相変わらずだ。唾を飲み込みたくないような痛さだけど、まあ我慢は普通にできるぐらい。咳はちょっと強くなってきた。
マキャヴェリズムを読み終わった。キャラはかわいかったのに心は最後までフラットだった。帰ってこい煩悩。
時間はまだ朝だ。次はアニメでも見ますか。たくさん探した結果、話数が多くて履修できていなかった「バンドリ」を見ることにした。
あれ? 思ったよりも面白いぞこれ。今どき見ないようなレベルの元気っ子に典型的なツンデレと、わかりやすい個性のキャラクターたちがバンドを組んで成長していく王道なストーリー。クラシカルな良さがある。
答えを見つけた。体調を崩している人は、バンドリを見るのが正解です。
夜、作り置きで残っていたデミライスを食べた。油っぽいのがちょっときつい。いつも一食でお米を一合食べるのだが、さすがに2/3合しかいけなかった。
ただ、お腹は空くし食欲は相変わらずそれなりにある。胃腸だけは元気でたのもしい。
食後にバンドリ1期の残りを見た。涙で目をこすりながら見ることになった。あっという間だったが、これでもまだ2期3期と残っているのがありがたい。
ちょっと良くなる(3日目)
夜、再び寝汗で着替えた。
朝、昨日よりもちょっと身体に力が入った。気力が回復してきたのを感じる。ただし、咳と微熱は相変わらずだ。今日もしっかり休みましょう。
バンドリの続きを見てすごす。2期の前半は説明も少ないままに登場するバンドが増え、アプリをやっている人向けなシーンが多かった。きっと後半に面白くなることに期待だ。逆に、こういうときに一気に見てしまえるのはちょうど良かったかも。
ちょっと動けるようになったので、夜久々にキッチンに立った。冷蔵庫に残った野菜を全部取り出し、鍋にぶち込んでいく。昔実家からもらった鍋のもとを入れてできあがりだ。
まったく外に出ていないのにちゃんと食事ができている状態に、自分の生活力が上がったんだなとしみじみした。買いだめも料理も明らかに前よりうまくやりくりできるようになっている。
一人暮らし初めたばかりのときに感染しなくて良かった。
夜はSASUKEを見てすごす。漆原さんがずっと第一線で戦う体力を維持し続けているのすごすぎる。サスケくんに並ぶ新たな強者が久々に現れて、次回が楽しみになる大会だった。
僕もSASUKEの人ぐらい元気になりますようにと思いながらベッドに入った。
熱が下がった(4日目)
夜中に起きて着替えた。
夜中に起きて着替えた。
夜中に起きて着替えた。
朝起きると、ベッドの横には服の山ができていた。寝汗、かきすぎ。
ちょっと身体が軽い。熱を測ると36.7℃。ようやく平熱になった。
ということで今日からテレワークだ。
椅子に座る。ふと下を見ると、机の下に毛が大量に落ちていてうわあ……って声が出た。ようやくそれに気づけるだけの余裕ができた。
ちなみに、喉の痛みもちょっとだけましになってきた。ただ、水を飲まないと咳が止まらなくなるのは相変わらずだ。
洗濯をする。
仕事はあまり捗らなかったが、それはしゃあなし。
夜はまたまた自炊をした。以前より冷凍していた鶏もも半分を取り出し、残った玉ねぎと期限の切れてしまった卵を用意する。鶏ももと玉ねぎを炒めて卵を入れて、親子丼のできあがりだ。
ちゃんとうまい。ただ、やっぱり動いてないので一合はいけなかった。残ったお米と具でミニ親子丼ができた。明日の朝食べましょう。
だいぶ治ってきた(5日目)
夜中に起きて着替えた。
夜中に起きて着替えた。
夜中に起きて着替えた。
夜中に起きて着替えた。
朝起きると、ベッドの横に昨日洗濯したはずの服が山になっていた。
今日も洗わないとだ。
金曜日、テレワークを続ける。
会議があって久々に声を出した。いつもよりガラガラした声で自分の様子が万全でないのを改めて認識する。
人と話すと少し元気になっている自分がいて、人間は社会的な生き物であることを身をもって体感する。
だいぶのどの調子も良くなってきた。あとは咳だ。
夜にバンドリの2期を見終わった。
後半は大きな山場があって1期と同じように楽しむことができた。みんな別の道に行ってバラバラになってしまうことってよくあることだけど悲しいよね……ってちょっとしんみり。それだけに彼女たちがまぶしい。
久々の外出(6日目)
今回は寝汗が1ラウンドですんだ。
のどもほぼ痛くなくなった。
そして、外出自粛の推奨期間が終わりです。頭の中でファンファーレが鳴り響いた。
そういえば、昨日がいちおう仕事納めだった。
つまり、今日から連休の始まりだ。
……こんな盛り上がらない連休ってあっていいのか。どうしよう。すでに休みまくっているから、今の自分にとって日常の延長線上でしかない。
気を取り直して家を出る。スーパーで補充だ。
そういえば今日何作るか考えてなかった。うろうろ回っていると、一つの場所で足が止まった。
100グラムあたり1000円のサーロイン肉と目が合った。しかも、上には半額シールが貼られている。
コロナで頑張ったし、これぐらいしてもいいよね。迷わずかごに入れた。
夜、「バズレシピ」の動画を見ながらキッチンに立った。作るのは「至高のステーキ」だ。
肉の筋を切って焼いてアルミホイルで包んで保温してできあがり!
家で眠っていたナイフとフォークを取り出す。左からナイフを入れて肉を噛みしめる。
「うぉぉ」っと声がもれた。これのためなら、だいたいのことは頑張れるぞ。そう思える味だった。
自然とがっつく、がうまくいかない。いつも食べるとき、「切る->ナイフを置く->フォークを持つ->米をフォークですくう」という手順で動いている。
しかし、今はそのスピードがもどかしい。
その結果、自然とナイフを使ってフォークの背にお米を食べるやり方になった。
この食べ方、格好つけているのかと思っていたけど合理的だったのね。きっとがっつきたい人がこれを始めたのだろう。
あれからさらに4日間がたち、今では寝汗がなくなり咳もほぼ治った。今日はランニングも再開できた。
ようやく元に戻れた。
今回体験して、伝えたいことは一つだ。
体調が悪いときは、バンドリのアニメがオススメです。