食堂のおばちゃんを思わず応援した

いつものように早めに食堂に行ったときのこと。

今日のメニューは何かな。食事は日々の楽しみの一つ。ふむ、今日はハンバークか肉豆腐の二択か。ハンバーグはしょっちゅうメニューにある。肉豆腐は珍しい。よし決めた。今日は肉豆腐。

さて、この時間帯に行っているのは混む前だからだ。だから当然今日も空いているはず。こういう日常の積み重ねで世界は回っている。

のはずだったのに。そこは日常じゃなかった。列ができていたのだ。今まで来客とかで人が増えることがあった。でも人の出入りが減った今日、それは考えづらい。なによりそういう人だったら雰囲気でわかる。

ではなぜだ。並んでいてわかってきた。なぜか食事をよそうのに時間がかかっている。ここはケータリング方式だから時間はかからないはずなのに。何か異常が起こっているのか。不穏な雰囲気を感じた。とにかく列が進めば状況はわかるはずだ。お盆を持つ手に力が入った。

待つこと5分。ようやく番が回ってきた。相対するのはトングを持った食堂スタッフのおばちゃん。何が起こっているか見せてもらおうじゃないか。

おばちゃんがトングで豆腐をつかむ。ぷるん。豆腐がすり抜けた。取れていない。繰り返しつかもうとするおばちゃん。取れない。

何が起こっているのか。目を凝らす。これ、揚げ豆腐だ。

謎が解けた。揚げ豆腐の衣同士がくっついている! この食堂はケータリングなので事前に調理した食材が送られてくる。その過程で衣がくっついてしまっていたのだ。しかも引きはがそうとしているのは豆腐。つまり、力を入れると崩れてしまう。

引き続き豆腐と格闘するおばちゃん。種がわかるとおばちゃんが職人に見えてきた。時間がかかりながらも絶妙な手加減で崩さずに豆腐を引きはがすおばちゃん。気づいたら心のわだかまりはなくなり、心の中で応援していた。がんばれおばちゃん。

ようやく肉豆腐ができた。皿にのっているのは正方形の上げ豆腐二つ。崩れていないそのままの形だ。「お待たせしました」というおばちゃんの声が心なしか誇らしげに聞こえた。

肉豆腐はおいしかった。さて明日は何のメニューかな。

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