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scene0827

「優しさって、欲しい人から貰えないよね」

傷ついて泣いている私の横に座り、

彼女は私の顔を覗き込んで微笑む。

スローモーションのように柔らかく落ちる髪。

月明かりに照らされ、魔法のように光る艶。

滲んでぼやけて、景色が屈折する。

隣にいるのに。

美しくて、遠い。

当事者でないかのように振舞う彼女に私は、

「きみの話をしているんだよ」

と、口にする気にもなれなかった。

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