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価格至上主義とチップの関係 (155/365)
久しぶりに日本に帰国して感じることは、物の値段、特に飲食の価格が安いということ。アメリカとの経済状況の違い、円安の問題も要因としてはありますが、これだけのクオリティの物の値段としては安すぎると思います。
やはりよく言われるように、失われた30年で、
「値上げできないメンタリティ」
が形成されているのではないでしょうか。80年代バブルの時は、なんでも高ければよいというような価値観もあり、億ションだの、ヤンエグだの、景気のよい言葉が飛び交いました。それはそれで極端でしたが、成長性という意味ではよい面もあったと思います。
しかしバブルがはじけた反動で、国民の意識が抑制的、禁欲的になったことは間違いがありません。
価格破壊
清貧思想
がもてはやされ、今日まで30年続いていると思います。
しかし冷静になると、原料価格の高騰で商品価格を値上げするときに社長が謝罪する文化はやはり異常です。
同じものならより安い方を選んでしまうのは人情ですが、それが低賃金の労働者を搾取しているケースもあるでしょう。提供価値に見合った対価を喜んで払うという方が好ましいし、経済が回るとはそういうことだと思います。
牛丼の値段が10円上がったことにめくじらを立てる前に、自分の給料が上がらないことに疑問を持つべきでしょう。これは独立事象ではなく、間接的に深くつながっているのです。そこに気づくべきです。
最近農水省のCMを見ても違和感を感じた部分があります。全体のトーンは生産者を支えるというものなのでしょうが、
「コストがとても上がっていますから。」
「原材料価格とか人件費も。」
人件費をコストと見ていることがありあり伝わってしまいます。誰に対する人件費なのでしょうか?彼らも込みで生産を支えているのに、彼らに正当な対価を払うという意識はないのでしょうか?
おそらくそういう意図はないはずですが、ふとこういう言葉が出てくるとことに問題の根深さを感じます。
アメリカの飲食店では、15~20%程度のチップを払うのが普通です。チップは従業員の貴重な収入源になっています。よい接客の対価としてのチップですから、インセンティブにもなりますよね。
「ぼくはチップを払わない主義」
「チップを払いたくないから外食はせず、テイクアウトにする」
という日本人の方もいらっしゃいます。個人の主義はともかく、郷に入れば郷に従え、従業員の生活のことも考えたらいくばくかのチップは、テイクアウトであっても払う方がよいのになと思います。
ある投資家の方とお食事したとき、30%を超えるチップをはずんでらっしゃったので、
「太っ腹ですね!」
と言うと、
「いや、だって彼らコロナ禍でも頑張ってるでしょ。応援だよ。」
とおっしゃいました。とても、粋だし、これが経済を回すことなのかなと感銘を受けました。
それ以降、私もささやかながら少し多めのチップを気持ちよく払うことにしています。
お金って気持ちよく払うべきだし、そういう人に先々お金が流れ込んでくるように感じます。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。