脂肪腫を取った[後段]

無事、手術が終わり病棟へ戻ったあとは、ただひたすら回復を待つのみ。それが意外と時間がかかった。本来、月曜に手術して翌日経過観察、水曜に退院、というスケジュールを言われていたので、会社にも当然その予定で報告していたのだが、いざ蓋を開けると傷から漏れてくる液が止まらず、なかなかドレーンを抜けない。シフト制なのでほかのスタッフに迷惑をかけるが致し方なく…。はっきりいつ退院と言われず不安が募ったが、結局一日延びただけで済んだ。
手術室から戻った後はまだブロック注射の麻酔の影響もあり、ひたすら寝るのみ。たまに起きるのだが体がうまく動かず、だんだん動けるようになって手術した側の腕を左側の手で触ってみるのだが、そこには何もない感覚。もしかして腕が切られてしまっている?と思えるような感覚だった。
そして初めての経験が、おしっこの管というやつ。大きい方は前日から食事コントロールで出ないのかもだが、小さい方は出るだろう。私はそういう管が付いていることを認識しておらず、ナースコールで「したいんですけど…」と言って、それは大丈夫なのだと認識した。管は手術翌日の朝に取ってもらった。その後、最初のトイレを確認しますので出たら見せてくださいと言われていたのだが、その際近くにいたのが男性看護師しかおらず。そんなのもはやどうでもいいのだろうが、ちょっと恥ずかしい思いをしました。
その段階ではすでに腕の感覚も取り戻し、歩くこともできるようになり、あとは惰性で回復を待つのみ。お風呂は手術後は体を拭くのみで、シャワーはできなかった。
術後二日間はパズルの本で遊び、美味しく病院食をいただき、毎朝主治医が傷口を見に来てくれて、ついに木曜にドレーンを抜くことができ、そのままその日退院となった。ちなみにドレーンは体の皮膚から直接出てる状況で付いているわけなのだが、抜く時はぴゅっと引っ張って抜くだけである。そこそこ直径5〜7mmぐらいはある管なのにである。
傷として残るならドレーンの後の方が残るんじゃないだろうかと思ったほど、扱いが適当だ。

そうして私の脂肪腫摘出手術と入院生活は終わった。その後は医療用のテープを3ヶ月ほど貼って保護しつつ、3ヶ月後に一度主治医のチェックが行われてすべてが終了した。
一年以上経った今、手術痕はほとんど目立たなくなっているし、なんの後遺症もないと思っていた。のだが、先日手術箇所周りをカミソリで剃っていると、末梢神経なのか毛細血管なのか、いまだに感覚が少し麻痺している感じが残っているのに気付いた。人間の身体って本当に繊細なものなのだな。

脂肪腫を取った話はこれでおしまいなのだが、最後に人生の価値観が変わるような入院病棟の話をしたいと思う。入院しないと分からなかった。本当に知らない世界だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?