フォーサイト財団ビルは違法建築?
この記事を開いているということは、恐らくあなたはプロメアファンですね?
プロメアを「知っている」という方は、冒頭はサクッと飛ばしてください。
『プロメア』を今知った方へ
「今知った」という方が万が一いらしたら。
ぜひ一度ご覧になってください。
『プロメア』は2019年に公開された、単発のオリジナルアニメーション映画です。
2時間ほどでサクッと楽しめます。
アクションが爽快でメカのギミックが楽しいです。
配信もありますが、場所によってはまだ劇場でも復活上映しています。
三年噛んでてもまだ味がする作品です。
※※この記事は「プロメア」本編のネタバレを含むため、必ず本編をご覧になってからお読みください。なにとぞ。※※
記事執筆に至った経緯と前提
きっかけはシンプル。
フォロワーさんから質問を受けたから。
受けた質問を要約すると「フォーサイト財団ビルや司政官室を日本の建築基準法で考えたときに違法ですか?」というものでした。
できれば、建築関係の方の意見が知りたいとのことだったのですが、私自身は現在建築関係ではありません。
ですが過去に近い職業の経験があり、自宅にも資料がそこそこあります。
そのため、控えめながら挙手をしてみたというのが今回の経緯です。
つまり、この記事は建築の専門家によってまとめられた記事ではないです。
あくまでも、過去に少し近い職業の経験がある、というだけです。
そしてこの記事で基準とするのは日本の建築基準法です。
この2点についてはくれぐれもご留意ください。
なお余談として、アメリカにも建築基準法はあります。
しかし定めているのは州や市などの単位ですので、国全体に一律に適用されるものではありません。
『フォーサイト財団ビル』とは?
作中、プロメポリスの象徴のように何度も登場する建物であるフォーサイト財団ビル。
どんな形状の建物よ?っていうのはファンなら説明するまでもないでしょうが、参考までに私が過去に描いた絵を載せておきます。
なお、無断転載は厳禁です。
『司政官室』とは?
その名の通り、司政官の部屋です。
公式パンフレットでは『執務室』と記載されていますが、正直『でほぎゃらりーARTBOOK』などで記載されている『司政官室』の方が分かりやすいと思うので、この記事ではそのように呼称します。
作中シーンで言うとガロがクレイに勲章を返す際にいる場所がこの『司政官室』です。
フォーサイト財団ビルのほとんど最上階に近い場所に位置しており、空へ伸びている連なった細長の塔らしき建物から垂直に伸びている部分。
あの垂直に伸びてるアレが『司政官室』です。
残念ながら参考画像はこれまで描いてないので載せられないのですが、まあとにかく「あのあたりね」っていうのは、プロメアファンなら把握できたことかと思います。
結論とその理由
先にはっきり結論を書くと『合法寄りだと思うがわからない』です。
その理由を、以下の流れにそって解説していきます。
建築基準法
違法建築と建築基準法
不動産種別
フォーサイト財団ビルは違法か
フォーサイト財団ビルの不動産種別
パルナッソス号の不動産種別
自治共和国って?
自治共和国と経済特区
まとめ
しかしまあ、単に『わからない』とだけ書くのもつまらないので、以下へ私が知っている範囲で、できるだけ分かりやすく解説を記載していきたいと思います。
『違法建築』と『建築基準法』
まず『違法建築』について解説しておきたいと思います。
シンプルに言えば『建築基準法を守っていない状態』であることなのですが、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか?
身近な例としては、ブロック塀。
コンクリートブロックを積み上げて作られているアレです。
少なくとも日本に住んでいれば見たことがないという人はなかなかいないと思います。
ブロック塀種別参考:https://www.famitei.co.jp/BLOG/Finfo/blog.php/00025569
そんなブロック塀ひとつをとっても、もちろん建築基準法は存在します。
地盤からの高さ・塀自体の厚さ・基礎の深さ・定められた長さ以内に控え壁があるか・鉄筋が入っているか…など。
ブロック塀建築基準参考:https://iqrafudosan.com/channel/concrete-block-wall
つまり、地盤からの高さがありすぎたり、基礎が浅すぎたり、長い塀なのにそれを支える控え壁がなかったり…いずれかひとつでも欠ければ、そのブロック塀は『違法建築』です。
一例としてブロック塀を挙げましたが、建築基準法とはそのように、細かいことをたくさん定めている法律なのです。
今回の記事では「合法であるためにはどんな要素が必要なのか?」に主眼をおいて考察していこうと思います。
不動産種別
次に解説したいのは、不動産の分類です。
不動産の中でも関係がありそうな『工作物』『建物』『建築物』の解説をします。
『工作物』とは、土地に接着して設置された『建物』ではない人工物。
たとえば門や塀・塔から、道路・カーポート、ゴルフ場・ジェットコースターや、カーポートのようなものも含まれます。
『建物』とは、土地に定着した人工物のうち、屋根および柱や壁を有するもの。
要するにこれはビル本体や、住宅本体を指します。なおカーポートは壁がないため『工作物』でしたが、壁に囲まれたガレージは建物とされます。
『建築物』とは、『建物』に追加して『工作物』もついた状態であるもの。
つまり個人の家で言うと住宅本体は『建物』ですが、敷地内の庭やアプローチ・門などは『工作物』です。
そしてその個人の家であると言える庭と建物をあわせた全体が『建築物』です。
『工作物』『建築物』の定義参考:https://lab.iyell.jp/sales/builder/kousaku/
『フォーサイト財団ビル』の不動産種別
ここまでの流れを前提として『フォーサイト財団ビル』の不動産種別について考えてください。
敷地内にはビル本体たる『建物』もある。
そしてアプローチなどの『工作物』もついている。
つまり『建築物』だろうな、と予想できたかと思います。
そして『建築物』として『フォーサイト財団ビル』を見たとき、建物の基礎をしっかり打ち込んであれば概ね合法だとは思います。
基礎工事種別参考:https://www.sakurajimusyo.com/guide/28702/
では、どのくらいの規模の基礎工事が必要なのでしょうか?
すごくすごく粗くざっくりと計算しましょう。
クレイの身長を2m、肩幅を60cmと仮定します。
フォーサイト財団ビルで待ち構えているガロと、そこに戻ってくるクレイから考えると、あのフロアのエントランスの横幅はおおよそ8クレイ肩幅。
フォーサイト財団ビル遠景から、ブロックの横幅がおおよそ2.5エントランス。
ということはおそらく、ブロックの高さも2.5エントランス。
本編のフォーサイト財団ビルを観察すると、高さは20ブロック。
ここまでの情報から高さは240mと計算できます。
東京都庁の高さが243mですので、『フォーサイト財団ビル』の240mは意外と現実的なサイズをしていることが分かります。
もちろん高さだけでは基礎の計算はできませんが、とりあえず東京都庁レベルかそれ以上の基礎工事が行われていれば『合法』でしょう。
なお、もし『フォーサイト財団ビル』が鉄筋コンクリートでできていた場合。
鉄筋コンクリートを柱なしでのばせるのが10mまでです。
そして1ブロックが10mと計算できますので、もし鉄筋コンクリート造だったら『フォーサイト財団ビル』は違法です。
というより、そもそも物理的に作れないんじゃないかと思います。
なのでまあ、『フォーサイト財団ビル』はきっと鉄筋コンクリート造ではないのでしょう……。
たぶん。知らんけど。
『パルナッソス号』の不動産種別
先ほど『フォーサイト財団ビル』がおそらく『建築物』だろうという一時的な予想が出ました。
しかし、よく本編を思い出してください。
プロメポリスの『フォーサイト財団ビル』ですが、あれは仮の姿でしたよね。
その地下ではパルナッソス号が造船されており、なおかつ大型の研究設備もある。
そしてあの街の中心部自体の広範囲が、船の全体となっている。
つまり、地上から空高くまで伸びていた『フォーサイト財団ビル』はあくまでもパルナッソス号の一部でしかないのです。
はい。
ではここで『工作物』の定義をいま一度振り返ってみてください。
『工作物』とは、土地に接着して設置された『建物』ではない人工物です。
そして、パルナッソス号はざっくり言えば宇宙船です。
つまり、土地へ接してこそいても定着はしていませんから、少なくとも『建物』ではありません。
また、『建築物』とは、『建物』に追加して『工作物』もついた状態であるものを指します。
しかし、土地に接していても定着はしていないパルナッソス号は『建物』の定義から外れます。
その結果、パルナッソス号は『建築物』であるという条件を満たせません。
このことから分かったことをまとめましょう。
『フォーサイト財団ビル』だけで見ると建築物のように見えるが、実際には『フォーサイト財団ビル』がパルナッソス号の一部であるため、その実態は『工作物』である。
『工作物』は基本的に建築基準法の縛りを受けません。
ただし、その中でも『特定工作物』に該当する場合は、話が変わってきます。
簡単に説明すると『特定工作物』とは、周辺環境に大きく影響をおよぼすであろうことが予想される危険性があったり、大規模すぎるような工作物のことを言います。
『特定工作物』参考:https://xn--jprt71fvqncwk.com/kaihatsu/tokutei/
パルナッソス号はこの『特定工作物』の中でも『第一種特定工作物』に該当すると考えられます。
『第一種特定工作物』にもいくつか定義がありますが、そのうちのひとつに『危険物の貯蔵・処理用工作物』というものがあります。
フォーサイト財団ビルの地下、パルナッソス号内部にはバーニッシュの実験をするための大がかりな研究施設がありました。
また、増産されていた膨大な数のプロメテックエンジンについても、おそらく『危険物の貯蔵・処理用工作物』とみなせるでしょう。
まあ、バーニッシュが法律上で危険物かどうかは議論の余地がありますが。
話がそれるためこれは割愛します。
そして『特定工作物』は事前に開発許可を得ることが必要です。
建築基準法ではなく、特別な審査を通って初めて、作ることができるのです。
なので、この事前の開発許可を通していれば『合法』でしょう。
通してなければそもそも作れないと思います。
自治共和国って?
ここまでは、建築物の作り方自体が違法かどうかの話をしてきました。
次は、対象の立地が違法かどうかの解説に入ります。
まず、プロメポリスは自治共和国です。
これは『プロメア』公式サイトにも記載されています。
では、この『自治共和国』とはなんでしょうか?
簡単に言えば、本来なら自治体であるはずなのに特殊な権限を持つ『国家内国家』です。
自治共和国と経済特区
映画公開3周年を記念した配信イベント「PROMARE 3RD ANNIVERSARY ONLINE PARTY」での質問コーナーでは「プロメポリスは経済特区」というような発言が製作陣からありました。
もちろん、これについてはあくまでも本編外での発言ではあります。
ですが参考までに『経済特区』を検索してみます。
すごく簡単にざっくりまとめると『他の国に比べて超特別な措置や待遇が許されている国が、自治共和国プロメポリスである』ということになります。
ここから判断するに、そもそもプロメポリス自体が既存法の適用を受けない可能性が非常に高いです。
仮にあの世界で日本の建築基準法が標準となっていたとしても、プロメポリスだけは例外とされていた可能性があるということです。
この点からも、結局合法寄りなのかも、と考えられます。
まとめ
ここまでの話から、フォーサイト財団ビルは合法寄りである、ということが分かりました。
その上で、私が結論を『わからない』にした理由が以下です。
『プロメア』には架空の技術が存在します。
瞬間凍結弾、対火装甲はもちろんですが、バーニングレスキューやフリーズフォースの装備品からも架空の新素材や新技術が存在していると考えたほうが自然です。
なので、フォーサイト財団ビルも、架空の建材や新工法で作られている可能性が否定できないでしょう。
ちなみに、パルナッソス号は船ですから、本来は不動産ではなく動産。
でも大規模な動産は不動産扱いを受けるので……とかもあるんですが、今回の記事ではあえてそこは割愛しています。
以上となります。
短くない文章でしたが、お読みくださりありがとうございました!
お楽しみいただけたなら幸いです。
蛇足
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あともし、投げ銭したいなって稀有な方がいらしたら、ほしいものリストから適当な物でも送っていただければ……。
送らなくても全然いいです!
文章構成協力:旦那
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