平場って…。
ちょっと読みにくい文章ではあるな。
何がって?リズムが…
センテンスの長さ、改行、心象描写、たとえ、所作等々
自分の持っているリズム感ではない。
つまり、するするとはいかない。どこか突っかかる。
所作に関しては自分で書かれている事をやってみたりする。
然しながら、なんだか跡をひくんです。
まず、平場。
まぁ普通使いませんよ。この言葉。
頻繁に出てくるんですこのお話には。
うーん、庶民、世間、長屋的、一般ピープル的な。
で、この主人公たちには、これがしっくり来る。
なんせ、青砥と須藤が呼び名のカップルなんですからね。
バツイチしょぼくれ中年同士、巷間に満ち溢れている面白味も何もない人達。
この人達が感動の物語を紡ぐ。
同じ冴えない中高年の私の心に刺さります。
須藤はかなり癖があり、自分なら好きにならないだろうなと思いつつ、じゃあ、青砥は自分と重なるのかと言われたら、
男なんて幾つになっても、グズグズとあーでもない、こーでもないと頭で考え勝手に自己完結。なんて所は同じだわ。と思ったりします。
で、多分、青砥が須藤を好きになったのは姿。
もうこれは理性でも論理でもなく、感性。
小さく、細く、前髪ぱっつん、黒目がよく動く、小動物のようないでたち、冴えた人を寄せつけないような「太さ」が好きか…。
それなら分かるか。ウエットよりドライな女好きになるよな。中途半端なジジィだと。
でお定まりの癌、必殺の癌。
悲恋に超加速。
然し、上手いんだ構成が最後まで読んで始めに返る。
そして辻褄が合う。
もうこれは妙手です。リズム感もわざと崩されてたのかとさえ思う。見事…。
じわじわと浸透。
なんと健気な須藤。太い須藤。青砥の事本当に好きだったんだね。大人だね。
最後まで須藤を貫いてました。
平場が輝くのは月の明かり。
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