小さな冒険の物語(2024年度インターン生)
お風呂からあがったあと、
なんとなくスマホを開いていました。
ぼんやりとスクロール。
すると・・・
『地方×アート』という SMOUT の記事が、目に入ってきました!
旅しながら暮らし、表現したい。
それも自然のある場所で。
そう思っていて。
芸術というと、
都会に行かないと出来ないんだろうか。
いや、きっとできるんだ。 と感じていたわたし。
ないならつくればいい!と
地方で氣軽にアートに触れることができる。
地方にアーティストの居場所や仕事がある。
そんな取り組みをされている一般社団法人あわい さん。
あ、いいな とじんわり。
なんだかピンっときました!
一回落ち着こう、と深呼吸して、
なんでも時間のかかる性分で、毎日のちょっとしたことでもなかなか決めることができないわたしが、夜遅くに、その場で、
「応募する」のボタンを押したのでした。
フェリー
鹿児島中央駅で、新幹線を降りたあと、あわいの方が車で迎えに来てくださり、
いざ錦江町へ向かいます。
どのようにして行くのだろうと思っていると、
フェリーへ乗るよう!です!
車を降りるんだろうか?どんな立ち居振る舞いをするんだろう?と思っていると、
なんと車に乗ったまま、そのままフェリーの中へ。
車が止まっているところには、 トラックやごみ収集車のような車も。 フェリーの中には降りずに、ずっと車に乗ったまま、向こう岸へ着くまで過ごしている人もいます。
やっぱり本当に車ごと乗るんだ!
通勤で、 ちょっと鹿児島市内のほうへ遊びに。 わたしたちが日ごろ、 通勤や通学で電車やバスに乗るように、 こんなに身近に、 毎日の暮らしの中にフェリーがあるんだ!そんな そういう暮らしが、可能なんだ!ということに、驚きました。
さつまいも
いろんなことを、 敏感に感じる。 たくさんの人の中にしばらくいたら、 ひとりの時間がないとパンクしてしまう。 そういうタイプなわたし。 あたらしい、遠い場所に来て、 共同生活で。特に最初の日は、 ただそこにあることだけで精一杯。 お部屋にこもって、 ずっと床に座り込む。 ただ誰かがいることが氣になり、 シェアハウスの皆さんにどう思われているのだろう、あの行動はまずかっただろうか、 いろいろ心配になってしまう。 いっぱいいっぱいで、 自分の中がかき混ぜられているよう。 そんなとき、 シェアハウスの方から、 蒸かしたさつまいもをいただいた。 あたたかい空気感を纏ったきいろ。 小さなかわいらしいサイズで、 ほかほかした様子。そんなさつまいもに、ふっと力が抜けて、元気が出ました。
きんクラ
クラシック音楽に氣軽に触れられる場で、 若手音楽家の”演奏したい!”を叶えるコンサートです。
「協賛パネル」
イベントに向けて、 協賛パネル というものを作ることになった。
まず、協賛パネル、というものがどういうものなのかが、わからなかった。
リハーサルの演奏を聴いていると、おおきな木、 やわらかな太陽のひかり、木陰、 そこでちいさな蝶が舞っている、 そんな自然のエネルギーにあふれていて、 あたたかい情景が、 自分の中に広がっていくように感じました。
演奏してくださる皆さんが、創り出す世界観、空気があって。お客さんがいて。 「よろっで」 という場所があって。 そこにある机やいすやいろいろな小物。 協賛してくださる会社さん。 スタッフ。 思い。”きんクラ”という世界は、 そこにあるすべてが創っている、 そう思う。
だから、 その世界観の一部となるものを、 支えるようなものを、 あたたかい空気を持ったものを作りたいと思って、作りました。
「人を撮る、三脚を使う、聞いてみる」
いままで、 人を撮ったことがなかった。 誰かの日常の一瞬を切り取ってみたい。 ささやかな贈り物をするように、その写真や映像をその人に贈りたい。
けれどもこれまでは、 人を撮る機会を得てはいなくて、 どんな繫がりで出会っていくのだろうか、 とか、そういうときの立ち居振る舞いはどうしたらいいんだろうか、 とか、どんなふうにしたらこの活動ができるだろうか、 と思いを馳せていた。 今回のインターンで、 やってみたかった”人を撮る”という機会を受け取らせていただいた。
“きんクラ”の世界があり、その空気を感じて、その空間を創っている一部として、目の前にある世界を映していく。そのなかにとけているような。俯瞰して、観ているような。
演奏してくださる皆さんのリハーサルの様子や一緒にお話したときのことが思い浮かんできて。 ○〇さんは今どんな思いで演奏しているんだろう、 △△さんはどんなことを今感じているんだろう。それを映してみよう。
自分の心にあるものはどんなものだろう。 それも映像の中に、 映っていっているのだろう。そんなふうに、自分の意識が流れていく。
これはほんとうに、やりたかったことでした。
撮っているときは、 夢中で体を動かしていて。終わって氣づいたら、 腕にここちよい、 疲れを感じていました。
これを、 これから贈り物にする。 それも素敵です。 インターンの途中でパソコンが壊れて、まだ観られていない。まずは、小さな一歩。そこにどんな世界が映っているのか。 それを観たとき、わたしがどんなことを感じるのか。じっくりと味わってみようと思います。
体感してみることができたことが、 もうふたつ。 三脚を使って撮ること。 聞いてみること。
今まであまり三脚を使って撮影したことがなかった。自分の幅が広がるような氣がして、三脚を使ってみたい思いがあった。 既に三脚を使って撮影しているカメラが一台。 スペースもせまい。 自分も三脚を使う必要はないんじゃないか。 できないんじゃないか。 そう感じた。いままでのわたしなら、 できないんだなと、 後ろに下がっていただろうと思う。 思ったことを声に出してみよう。そう思って、一緒にインターンをしていた方に、話してみる。 「必要ないかなと思えばそれでいいし、 三脚使って撮ってもいいし、 どっちでもいいと思いますよ~」そうか。いけないってこと、ないんだな。勇気をもらって、今度はあわいの方に、伝えてみる。ここだったら、撮れるかも!と、言ってもらえて、三脚を使って撮影できることになった!
手を動かしてみて、三脚を立てて、カメラやスマホをセットしてみる。今度は、どんな角度から、 どんな構図で撮ったらいいかが分からない。 これまでであれば、 自分ひとりでなんとかしたい、なんとかしなければならない、 と我を張っていたと思う。自分も、自分にできることを精一杯やるし、 みんなで協力してやるんだ。 こうやって、学んでいくんだ。 カメラに詳しそうな人に、 聞いてみる。ここからならどうか。高さを低くしたらどうか。この台の上に載せたらどうか。一緒に試行錯誤することができて、撮影がスタートした。
協賛パネルを作ったときも。 会社の事務所のようにも使っていて、 図書館であるお部屋で、それぞれの準備作業をしていた。 ひとりの時間が必要で、 まわりに人がいると氣になってしまうわたしは、どうにも集中できなかった。自分の中が混乱して、焦る。これまでは、みんなここでやっているのだから、 自分もここでやらなければならない、 集中できないのは、 自分を直さなければいけないのだ、 と思っていた。 けれど、 それぞれに違うし、 違っていていいんだ。 自分を受け止めてあげて、自分に合った環境を、 自分で用意してあげよう。あわいのかたに、伝えた。あっさりと、こんな場所があるよと、案内してくださったことに、驚いた。いいんだな。声に出して、伝えることが大切なんだな。すっきりとした。
ほんとうにみなさんのおかげさまで、やってみること、学ぶことができました。
感謝です。
「奏でる」
みなさんの演奏、 本当に素敵だと思った。 人前で演奏するということに、 最初は誘いをお断りしようと思っていたけれど、 チャレンジしてみようと決めた方。 みなさん県外から、 遠くから、 初めての土地に来られていて。 台風で予定が前倒しになったりもして。 みなさんも挑戦しているんだな、 と思った。 いろんな想いをそれぞれに持って、 演奏して、 やってみて。
こうしてお客さんが来てくださって、 受け取ってくださって。 演奏の後、 会場のいろいろなところに輪ができていた。 様々な会話が、 そこにある。 あたたかいものが、 循環していた。そこでまた、いろいろな人たちが繋がっていく。
学校の授業以外で楽器を演奏したことはなかったけれど、これから何かやってみたいと思った。バイオリン、ヴィオラ、チェロ、フルート、ハープ、ライヤー、ハーピカ・・・わたしが奏でてみたいと感じる楽器はどんなだろうか、と思いを巡らせました。
「フラメンコ」
きんクラで、フラメンコの踊りにも触れることができた。
いままでフラメンコというと、 鮮やかで、 舞台の上で踊るもの、 というイメージを持っていた。 お話によると、日々の中のちょっとした生活感情を歌にして、踊りにして、お互いに消化しあっていく、ちいさな子どもから、 お年寄りまで、そういう源があるんだそうだ。日々の日常の中に、 自然とある。 難しく構えずとも、 生きていること、 毎日暮らしていることが、もうすでに、表現していること、そんな感じがした。そういう表現のあり方、いいなあ。そういう踊りを踊ってみたいと思いました。
「イベント 催しもの するということ」
表現するという位置でやっていきたいと思う。 けれども、 イベントや催し物を行うことにも興味がある。表現をすることで、誰かのあたたかい場所になれたらいいなと思う。
表現したものも、マルシェやアートキャンプ、コンサートをしたならば、 その空間も。 催し物そのものも、 表現のひとつのかたちとして。 大きなホールでもやってみたいけれど、 自然の中での催しや日常の中のささやかな空間、というかたちをやってみたい氣持ちが大きい。
今回のインターンで、催し物をする、地域で、 という体験ができて、 ほんとうにありがたかったと思う。 実際に裏方をやってみることで、 どんなふうに準備していくのか、 肌感覚で体感することができた。
台風でコンサートの日程が前倒しになり、 会場などいろいろなことが変更になった時。 指揮者の方が。 地域のスペースを柔軟にどう使っていくかが大切。 会場にお客さんを集めなくても、 お客さんのところへ一軒ずつ訪ねてもいい。 中世のボエームや旅芸人や楽隊は、 そのようにして街を練り歩いていた。 枠組みに縛られずに、 アドリブを柔軟に楽しもう。 そんなふうにおっしゃった。 あわいの方は、 もう時間がないから駄目だというよりも、 こんなのどうかなと思っていることを、ある時間のなかで精一杯やる、主役の奏者のみなさんが100%でやるのを、 100%でわたしたちも。 そうおっしゃっていた。 今目の前にあることを、柔軟に楽しむこと。 コンサートひとつとっても、 ほんとうに様々なかたちがあること。 そういうことを感じさせていただいた時間だった。
帰りの旅
9月11日で鹿児島の旅を終えて、和歌山へ帰ることに決めた。
さあ、帰りの旅へ!
ここからまた、なにかがはじまる!そんな氣がする。
今はもう大阪にいて 和歌山へ向かう電車の中
あんなにとおい鹿児島へ旅して 過ごしていたのに
鹿児島でフェリーに乗ってからここまであっという間だ。
まだ鹿児島での旅を、わたしは消化していない。
ひとつひとつのことが、どんな意味があったのか。
Google の検索欄に「鹿児島県」と打ち込むと、
鹿児島の地図と何枚かの写真が表示された。
ここに行ってきたんだなあ。ここにいたんだなあ。と不思議な感覚。
ワープのトンネルを抜けてきたような。
たくさんのシーンが、こころに浮かんでくる。鹿児島へ行って、自分の中が広がった。
これからのアイディアもたくさん浮かんでくる。
まだ書きたいことはたくさんあるけれど
このへんで。
ここで一度、鹿児島の冒険を、終えよう。
ひと区切りをつけて
つぎへと向かっていこう。
書き手
笹島みな泉
福井県出身。今は、和歌山県に住んでいます。